元K-1ファイター・角田信朗が格闘界に提言「どこを目指しているの?」
手に汗握る試合展開 弓を引いた猪木
――確かに、まさかの話ですもんね。
角田 それでゴングが鳴ったら、いきなり猪木さんがロープに飛んだんですよ。
――おお!
角田 そしたら、今度はいきなり浴びせ蹴りですよ!
――そうでしたね!
角田 それをすんでのところでかわして。猪木さんがローキックを打ってきたから、こっちも打ち返して。安易に近づいて後に回られたら絞め落とされると思ったから、不用意に近づかないようにして。それでも寝技の体勢になって、ロープにもつれた時に、猪木さんが頭突きをしてきて。これが“熊殺し”ウイリー・ウイリアムスもグラッと来た頭突きかー! ならば俺はヒジ打ちを返すみたいな感じで。そこからちょっとだけエキサイトしたんですけど、そこは冷静になりながら、「プロレスってどうすればいいんだろう……」って分からないなりに楽しんだ空間でしたね。
――結局、3分とか5分くらいのスパーリングでした。
角田 どのくらいやるとかそういった打ち合せもなかったけど、猪木さんが上になったところで、上から拳を打ち下ろそうとしたら、実況の辻よしなりさんが「おーっと、猪木が弓を引いた!」って。
――弓を引くストレートの構えを見せたと。
角田 ええ。その次の瞬間、猪木さんが「ヨシャッ!」て両手を広げて。
――そこで終わったと。
角田 終わりましたね。僕は猪木VSウイリー戦(1980年2月、蔵前国技館)を高校3年生の時にテレビの前で正座して見ていたんですけど、その後、ウイリーとも闘って(1992年3月、代々木第二体育館)、猪木さんともリングで闘うことができて。
――そうですね!
角田 幸せな人生やなーって。
――それは幸せですねえ!!
角田 だから僕、空手と出会って、石井館長と出会って、気付いたらK-1のリングに上がって、そこからいろんなお仕事に発展して行って。「角田さんの夢は?」って聞かれても、「いや、僕は人生の夢は全部実現したので、夢はないですね。あとはここまで育てていただいたので、それを持って、どこまで世の中のお役に立てるかですね」って答えるんですよ。