元K-1ファイター・角田信朗が格闘界に提言「どこを目指しているの?」

【インタビュー後編】劇画「空手バカ一代」の多大なる影響を受けた元K-1ファイター・角田信朗(59)。格闘人生の中で忘れられない闘いの1つが、引退直前の“燃える闘魂”アントニオ猪木と闘った公開スパーリングだ。会場入り後、猪木氏の控室を訪ねた際の秘話とは……。さらに、現在の格闘技界に対する複雑な思いを激白。「格闘技はどこを目指しているの?」と問題提起した。

マッチョボディーを維持する角田信朗【写真:ENCOUNT編集部】
マッチョボディーを維持する角田信朗【写真:ENCOUNT編集部】

度肝を抜かれた猪木とのエキビション

【インタビュー後編】劇画「空手バカ一代」の多大なる影響を受けた元K-1ファイター・角田信朗(59)。格闘人生の中で忘れられない闘いの1つが、引退直前の“燃える闘魂”アントニオ猪木と闘った公開スパーリングだ。会場入り後、猪木氏の控室を訪ねた際の秘話とは……。さらに、現在の格闘技界に対する複雑な思いを激白。「格闘技はどこを目指しているの?」と問題提起した。

――角田さんの印象深いリング上の話でもう1つ、アントニオ猪木とのエキシビションマッチ(1998年3月、愛知県体育館)の話を聞かせてください。

角田 いや、あれは公開スパーリングですね。

――あ、エキシじゃなかったのか。

角田 ええ。あの時は、石井(和義)館長から連絡があって、「猪木さんが引退前の公開スパーリングをやるみたいだけど、対戦相手にお前を指名してきたみたいだよ」って言われて。「え、館長!? 僕、プロレスとかやったことないんですけど……」「何言ってんの。みんなお前が来るのを待っとるでー」って。「あの、正道会館の立場でそんなプロレスのリングに上がるのなんて…」って答えたら館長が「いや、今後のお前の人生を考えたら、やっといたほうがいいんじゃないかな」って。

――それ、試合のどのくらい前の話なんですか?

角田 1週間くらい前でしたね。だから(総合格闘家の)平直行と本間聡を呼んで、一応、練習っていうか準備をしていたら、平ちゃんが「猪木さんはニッコリ笑って人を切る人だから、角田さんがスパーリングのつもりで行ったら、いきなり絞め落とされますよ」と。

――確かに。

角田 「そんなことになったらK-1の恥ですよ」って言われてプレッシャーをかけるなーって思いながら、僕は当時、猪木さんと面識がなかったので、どういう方なのか分からないわけですよ。で、当日、会場に入って猪木さんにあいさつしに控室に行ったら、猪木さんがレスリングシューズの紐を結びながら、(猪木のモノマネで)「はい、どうも」って。

――らしいですね。

角田 しばらくして、新日本プロレス側の担当の方から「どうしましょうか」っていう話になったら、猪木さんが(猪木のモノマネで)「なんでもいいですよ。横蹴りですか?」って言われて、「ローキック、ミドルキック、ハイキック、後回し蹴り。そんな感じだと思います」って答えたら、(猪木のモノマネで)「寝技できますか?」って聞かれて、「前田日明さんのリングスで2年間お世話になりましたから、防御の基礎はできると思います」って答えたら、(猪木のモノマネで)「はい。それならそれでいいですよ」って。

――凄い会話ですね!!

角田 それだけなんですよ、打ち合せは。

――さすがだ!

角田 で、控室に入って「どうすんねん」って話しながら、とりあえずレガースを着けていたら、「ただいまよりアントニオ猪木、特別公開スパーリングを行います。青コーナーより、正道会館、角田信朗入場!」って。

――「そろそろ行きます」みたいなアテンドもなく?

角田 なかったんですよ(笑)。だから慌てて出て入場したんですよ。それでリングに上がって会場を見渡したら、「新日本プロレス○○シリーズの下に、それの倍くらいの大きさで、アントニオ猪木VS角田信朗、公開スパーリング」って書いてあったんですね(嬉しそうに)。

――凄い!!

角田 それを観た瞬間に、「凄えなー、これ」と思ってたら、今度は「イノキボンバイエ」の曲がかかって、猪木さんが赤いタオルを巻いて入場して来るんですよ。

――来ますよねえ。

角田 リングの上からそれを眺めているんですけど、それを眺めている違う自分がいるんですよ。「これは幸せな光景やなー。アントニオ猪木の入場シーンをリングから見られるなんて。誰と戦うんやろう? 俺かあ!」って。

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