角田信朗が振り返る激闘史 VS極真空手は「戦争」 曙は「人を超えていましたね」

極真空手に参戦 大山倍達総裁の反応に感無量

――さっき話に出た「角田信朗のなんやかんや」の中に極真空手の(1990年6月のウエイト制)オープントーナメントに参戦した、いわゆる他流試合の話がありました。

角田 極真の大山倍達総裁が、1990年に「流派を越えて大同団結」という号令を出されて、正道会館の出場も決まったんです。僕は元々、極真空手の大会に出たくて空手を始めた人間だから、「ついにこの日が来たか!」ってな感じでいたんです。

――劇画「空手バカ一代」の「超人追求」に影響を受けた角田さんとしては待ってましたと!

角田 ええ。だけど当日、会場に行ったら、総裁ご自身も苦い顔をされているわけですよ。

――「大同団結」と言われながらも。

角田 そうなんですね。会場の片隅にいらっしゃる、極真の黄色いブレザーを着ていらっしゃる方々の半分以上、いや、3分の2、いや、5分の4くらいは「なんで正道会館が出てきとんねん」っていう話ですもんね。僕、正道会館では一番年上やったから選手団団長で、審判団のところにあいさつに行って、「押忍! 今日はよろしくお願いします!」って頭を下げたんですけど、まともに目を合わせてくれない。

――「よう来たなあ」みたいな感じですよね(苦笑)。

角田 そんな感じです。だから頭を下げつつチラッと見ながら、「これは試合とちゃうなー。これはもう戦争やなー」って。そう思いながらニコッと笑って「失礼します」って正道のみんなが陣取っている場所に戻ってきて、「これは今までとはわけが違うぞ。戦争や。相手を倒さな(判定では)勝たれへんで」って僕が口にしたことで、みんなガチガチに力が入っちゃうんですよ(苦笑)。

――力が入り過ぎてしまったと。

角田 ええ。まず試合前の入場式で全員が整列する時に、全員が総裁の前を通るんですけど、そこで全員が「押忍」って十字を切るんですね。

――総裁に対して。

角田 ええ。そうすると総裁が軽く「うん」っていう感じなんですけど、僕が通った時には、十字を切ったら、他の選手に対して以上に「うーん」ってひと際大きいリアクションをされるわけですよ。だから僕は総裁が(大山総裁のマネしながら)「いや、キミねえ。どのくらい強いのか、見せてみい!」って言ってらっしゃるんだろうなと思って。だから感慨無量でね(嬉しそうに)。

――ところが正道会館勢は、参加した12人のうち、ほとんどが早い段階で敗れてしまったと。いつもの良さが出せなかったわけですか?

角田 それもあったんですけど、まあ、勝たせてもらえないんですよ(苦笑)。

――勝たせてもらえない?

角田 僕と、正道のエースだった柳澤聡行君だけが最後まで残ったんです。でも、例えば普通なら「つかみ、注意1」っていう場面でも、審判が「ウラーッ!」って正道の選手の胸ぐらをつかんで「注意1!」ってやるもんだから、もういちいち納得がいかないんです。だけど、それが他流試合だと思っていたので。

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