脳性麻痺の無名ヒロインが演じる世界絶賛の「37セカンズ」が東京初上映
今年2月の第69回ベルリン国際映画祭で観客賞・CICAE賞をダブル受賞した「37セカンズ」(HIKARI監督、来年2月公開)が第32回東京国際映画祭Japan Now部門で上映され、主演の佳山明(かやま・めい、25)、神野三鈴(53)、大東駿介(33)、HIKARI監督が登壇した。
第32回東京国際映画祭Japan Now部門で上映
今年2月の第69回ベルリン国際映画祭で観客賞・CICAE賞をダブル受賞した「37セカンズ」(HIKARI監督、来年2月公開)が第32回東京国際映画祭Japan Now部門で上映され、主演の佳山明(かやま・めい、25)、神野三鈴(53)、大東駿介(33)、HIKARI監督が登壇した。
脳性麻痺のため、車いす生活を送りながら、漫画家のゴーストライターを務めるヒロイン(佳山)がアダルトコミックを描くために、夜の繁華街に飛び出し、やがて成長していく姿を描く。既に海外での高い評価を受けているが、これが都内での初お披露目。雨が降る平日の午前での上映だったが、客席は満席近く埋まる盛況ぶりだった。
大阪出身で米ロサンゼルスを拠点に活動するHIKARI監督は「5年前に障害者と性の問題に興味を持ちました。もともとは事故で車いすになったヒロインが主人公でしたが、女優さんが車いすに乗っているのでは意味がない、実際に障害を持たれている方が演じる必要があると思って、1000くらいのグループにオーディションを告知したら、佳山明ちゃんが(告知を)見つけてくれた」と明かした。
演技未経験で実際に脳性麻痺の障害を持つ佳山は「何か見えてくるものがあったらいいと思って、オーディションを受けました。監督はパッションと温かさを持っている方でした」と、愛らしくコメント。ヒロインを愛するがあまり過保護になるシングルマザー役の神野は「監督の要望と私の意見が一致して、(撮影前に)一緒に暮らせる時間を作ってもらったのがよかった。それとは関係なく、すっかり意気投合もしました。明ちゃんは賢くてチャーミング。けんかに近い言い合いもしたし、女優論を戦わせたこともあって、まるで親子のような関係が築けた」と振り返った。
ヒロインに寄り添う介護士役の大東は「子供の頃、家の近くに障害者センターがあったので、障害者の方に親近感があった。目に見える障害も大変ですが、いじめや差別といった見えない障害は恐ろしいと思っていて、それをいつか作品で確かめたいと思っていた。そんなところにオファーを受けたので、自分の中では運命だと思っていた」と話した。
15年前から日本映画を観ているという外国人の映画ファンからは「一番素晴らしい作品だった」との絶賛の声も。質疑応答で「同じく大阪出身のロンドンで映画を学び、ドキュメンタリー映画『愛と法』で高く評価された女性監督、戸田ひかる氏との共通点があるのでは?」と聞かれると、HIKARI監督は「日本は素晴らしい国ですが、重要なことなのにニュースにならなかったり、一瞬で消えてしまうこともある。海外にいると、そんなことを思うことがありますね」と話すと、大阪出身の大東も「大阪人には国境はあんまり関係ないですよ」と語った。
東京国際映画祭は11月5日まで開催。