「他人の手に渡るのなら、私が」 車庫で眠っていた国産旧車、悩む祖父に…22歳孫娘「そのまま維持」

二十歳のお祝い、祖父に「おねだり」したのは、車庫で眠っていた懐かしの1台だった。1972年式の三菱 ミニカ スーパーデラックス。定年退職した祖父が手間暇かけて再び整備したものを、孫娘が受け継いだ。一家でクルマ好きで、レトロな当時を「そのまま維持で走らせる」がモットー。22歳女性オーナーは、さらなる大きな夢を膨らませている。

祖父から譲り受けた三菱ミニカ【写真:ENCOUNT編集部】
祖父から譲り受けた三菱ミニカ【写真:ENCOUNT編集部】

いざ公道復帰させるも「このクルマ、どうしようかな」 悩んでいた祖父

 二十歳のお祝い、祖父に「おねだり」したのは、車庫で眠っていた懐かしの1台だった。1972年式の三菱 ミニカ スーパーデラックス。定年退職した祖父が手間暇かけて再び整備したものを、孫娘が受け継いだ。一家でクルマ好きで、レトロな当時を「そのまま維持で走らせる」がモットー。22歳女性オーナーは、さらなる大きな夢を膨らませている。(取材・文=吉原知也)

 クリーム色のボディーカラーで、かわいらしいフォルム。ナンバー、内装、シート、塗装、フロアマット、すべて当時の状態を維持している。もちろん現役バリバリで走っている。

 新潟に住むオーナーのらんさん。18歳で免許を取り、最初に運転したのが、このミニカだった。「最初に動かした時の感動、楽しさは忘れられません。『このミニカに乗る!』と決めました」。

 78歳の祖父。このミニカはもともと10年落ちで購入し、約20年、車庫に置いておいた期間があった。定年後にコツコツと直して、きっちりレストア。公道復帰させた経緯がある。

 一方で、製造から約50年の旧車だ。「このクルマ、どうしようかな」。処分するべきか、売った方がいいのか。祖父は頭を悩ませるようになったという。

「もし他人の手に渡ってしまうのなら、私がこのクルマに乗りたい」。孫のらんさんは、祖父の思い出の愛車に乗っていく決意を伝えた。祖父は大喜びで、譲渡が決まった。とびっきりの二十歳のプレゼントになった。

 旧車を良好にキープするために大変なことは多い。「クーラーがないので夏は暑くて乗れないですし、冬はサビ防止のためリフトアップして保管しています。雨の日も乗りません。大丈夫そうな日はミニカに乗ってスーパーに買い物に行っていますよ」。お出かけしていると時折、「ミニカだ、これは懐かしいね」と声をかけられるという。大きな故障・トラブルはなく、大事な愛車を労りながらカーライフを楽しんでいる。

 ボディー横には大きなへこみがある。何があったのだろうか。ここには深い物語が。「中越地震の時、大きな揺れでボディーにへこみができてしまったそうです。この傷も残していきます」。この旧車は、歴史の証人でもある。

 自慢の愛車は、今月22〜23日にかけてパシフィコ横浜で行われた日本最大級のクラシックカーイベント「第16回 Nostalgic 2days(ノスタルジック2デイズ)」で、オーナー車両の展示会「選ばれし10台」に見事に選出された。“当時のまま”へのこだわり。「このクルマは、『私の好き』がすでに完成しています。しっかり維持していくのが、自分なりの一番のこのクルマの愛し方なんだなって。そう思っています」と実感を込める。

 実はらんさんは、1歳9か月の女児を育てるママさんだ。ミニカを譲り受けた後に出産。「日々の時間のやりくりが大変です」と育児に奮闘している。祖父から受け継いだ家族のクルマ。こんな夢を抱いている。

「私の娘が将来、免許を取って、このクルマに乗ってくれたら、うれしいですね。家族4代で同じクルマに乗る。あまり聞いたことがないですし、実現できたらいいなと思っています。これが祖父と私の夢です」と目を輝かせた。

次のページへ (2/2) 【写真】「これは懐かしいね」と声をかけられる旧車…実際の姿
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