元市役所職員がフェラーリ乗り続け40年 愛車がつないだ出会い「オーナーだったら参加していいって」

群馬県の井野民主さんの愛車は1989年式フェラーリ328GTSだ。元国鉄運転士という乗り物好きの経歴を持ち、これが8台目のフェラーリ。愛車を通じて思いもよらない大物と出会うことができたという。詳しい話を聞いた。

1989年式フェラーリ328GTS【写真:ENCOUNT編集部】
1989年式フェラーリ328GTS【写真:ENCOUNT編集部】

仕事で電車の運転士、プライベートでフェラーリオーナーの乗り物遍歴

 群馬県の井野民主さんの愛車は1989年式フェラーリ328GTSだ。元国鉄運転士という乗り物好きの経歴を持ち、これが8台目のフェラーリ。愛車を通じて思いもよらない大物と出会うことができたという。詳しい話を聞いた。

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 井野さんは「子どもの頃から乗り物好きでね。私は今でいうJR、当時は国鉄と言ったんだけど、国鉄の電車の運転手してたんですよ。仕事も運転するような仕事してたから、車で運転するのも大好きで。国鉄で22年、その後前橋市役所で23年、合計45年働いたんだけど、その間もコツコツ小銭を貯めちゃ車買いに行って。車のために働いていたようなものだった」と笑みを浮かべた。

 無類の乗り物好きで、運転士に。

「今はJRになったからないと思うけど、国立に中央鉄道学園というのがあってね。そこで電車運転士科という科があって、卒業すると自動的に運転士になれた。学んだ期間は6か月ですかね」

 高崎鉄道管理局管内に配属され、高崎線、上越線、両毛線、信越線の各路線で電車を運転してきた。

 一方、プライベートでは車に熱をあげた。もともとマツダ・コスモスポーツに乗り、オーナーズクラブの群馬県の支部長も務めるほどだった。

 フェラーリとの出会いは30代の半ばの時。

「やっぱりほら、いきなりこういう高級な車は乗れないので、コスモスポーツを乗り出して、全国のオーナーズクラブに入って、私が群馬支部の第1の支部長なんですよ。で、コスモいいなと思ってたんだけど、ある時たまたま職場の後輩から『友達がフェラーリ売るって話があるけど、どうだい、コスモじゃなくてフェラーリ買わないか?』と言われて。買ったのが308GT4という車で、それからずっとフェラーリに乗り続けてきている」

 実際にハンドルを握ると、井野さんは衝撃を受けた。

「乗った時は異次元の世界ですよね。びっくりしたのは、その頃、私みたいな若造でガキにこんな高級なスピード出る車は乗れないだろうと思っていたら、意外と乗りやすかった。フェラーリもタイプがいろいろあるからエンジンのでかいフェラーリもあるし、3000ccのコンパクトなのもある。たまたまコンパクトのせいだったんだろうね。なんだフェラーリって私でも乗れるじゃないかと思った。とんでもないレーシングカーみたいな車のイメージがあったけど、決してそんなことなくて、それでどっぷりはまっちゃった」

 フェラーリデビューに308GT4を選んだのは理由があった。

「なぜ買ったかと言うと、この車は名前の通り4シーターなんです。後ろにいすがあるんですよ。子どもが2人いたから、車買うのに2人乗りじゃ反対されるじゃない。それなんで、GT4だったらいいだろうと。そういうゆえんがあって最初に飛びついた」

 だんだんと2シーターに興味が生まれ、乗り換えていくようになる。気づけば8台を重ねていた。

 そしてフェラーリオーナーとなり、忘れらない思い出がある。

リアショットも美しい【写真:ENCOUNT編集部】
リアショットも美しい【写真:ENCOUNT編集部】

「フェラーリオーナー」が条件のパーティーに参加 後藤久美子の愛車を聞くと…

「一つだけいいもの見せますよ」と見せてくれたのは、フランスの元F1レーサー、ジャン・アレジとの2ショットだ。

「ジャン・アレジがある時、F1レースが終わって群馬県の沼田に来たんですよ。ジャン・アレジを囲んでパーティーがあって行ったんです」

 F1ドライバーとしての活躍、後藤久美子との交際発覚で、当時のアレジは“時の人”。参加にはある条件があった。

「フェラーリのオーナーだったら参加していいって言うんですよ」

 井野さんは愛車が縁で、憧れのアレジと対面することができた。

「私はちょっとだけイタリア語がしゃべれるんですよ。こういう車が好きだから、NHKのイタリア語講座で勉強していて」

 マネジャーのマリオ宮川氏を通じて「サインが欲しい」とねだった。車にあったのはフェラーリのミニカーと純正の車検証入れ。急いで会場に戻り、直筆のサインを入れてもらった。

「マリオ、悪いけど、私と一緒にアレジと写真撮ってくれよ。そうじゃないと証拠にならないから」

 撮影を終えると、気になっていた質問をアレジにぶつけた。

「マリオに、『ジャンに奥さんの後藤久美子が何乗ってるか聞いてくれる?』と聞いたら、ジャンは『僕が結婚した時に、久美子にはフェラーリディーノをプレゼントしたんだ』と言ったんだよ。だからディーノを持っている。今は分からないけどね(笑い)」

 宮川氏の父が前橋出身ということもあり、話は弾んだ。「こんな近くで会えるとは思ってなかった」という夢のような時間を過ごすことができた。

このハンドルが人生を変えた【写真:ENCOUNT編集部】
このハンドルが人生を変えた【写真:ENCOUNT編集部】

浮気は一度だけ 知人の言葉に迷いが生じるも…「やっぱりフェラーリがいい」

 フェラーリに乗り続けて40年の井野さんだが、一度だけ浮気をしたことがある。

「ある時、仲間に『フェラーリ乗ってる人は皆さん最後は必ずランボルギーニ欲しがるよ』と言われて、それが呪文のように効いてね。本当にそうなっちゃったんですよ」

 ランボルギーニ・ディアブロを購入して乗っていたが、フェラーリが恋しくなった。

「フェラーリに乗ってみると分かるけど、やっぱりフェラーリがいいですよ」

 10年ほど前に880万円で328GTSを入手した。

 現在75歳。人生の半分以上をフェラーリと駆け抜けてきたが、これが最後の1台と決めている。

「少なくとも80までは乗っていたいね」。残された時間を愛車とともに目いっぱい楽しむつもりだ。

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