【東京女子】次に大けがをしたら辞めようかと…その思いを覆した長期欠場中にハイパーミサヲが感じたこと

来年デビュー10周年を迎える東京女子プロレスの愛と平和を守るニューヒーロー・ハイパーミサヲ。彼女はこの10年弱の間に二度の長期欠場を経験しているが、二度目は今年起こったもので、つい先日11月22日の新宿大会で復帰したばかりだ。そのミサヲに欠場中に考えていたこと、そして2025年の抱負を聴いた。

自身のプロデュース興行についても語ったハイパーミサヲ【写真:橋場了吾】
自身のプロデュース興行についても語ったハイパーミサヲ【写真:橋場了吾】

プロデュース興行では完全に演出側に回ってもいいという思いがあった

 来年デビュー10周年を迎える東京女子プロレスの愛と平和を守るニューヒーロー・ハイパーミサヲ。彼女はこの10年弱の間に二度の長期欠場を経験しているが、二度目は今年起こったもので、つい先日11月22日の新宿大会で復帰したばかりだ。そのミサヲに欠場中に考えていたこと、そして2025年の抱負を聴いた。

 今年4月、ハイパーミサヲは東京女子プロレスのアメリカ遠征に参加。しかしその中で、右足首の骨折という大けがを負ってしまう。

「試合の中盤でしたか、場外で『あっ』と思って。まだまだやり足りないタイミングだったので、ここで終わらせたくないと思って最後まで試合をやり切りました……強度の捻挫だと信じて。でも試合後に見たらすごく腫れていて、でも歩けるので何とかなるかなと。帰国して時差ボケもあったので寝ていたんですが、パンパンに腫れてしまい、整形外科に行ったら『折れていますね』といわれて絶望ですよ。まあ、ロキソニンも効かないくらい痛いし、気圧の変化でさらに痛いしで。2週間後には『HYPE!2』(ミサヲプロデュース興行)が控えている中で、手術もしなくちゃいけないという状況で、まだ台本(HYPE!は通常の大会とは違い、演劇的要素が含まれている)も書いていなくて。

 本を書かないことには誰も何もできない状況だったんですが、手術の日程的にギリギリできなくはないというスケジュールだったので、もうやるしかないと。私は出ることができないけど、代役を立てて……これは、私は主役的な役回りではないですし、完全に演出的なところに回ってもいいんじゃないかと思ったからなんですが、それはマッスル坂井さんの影響が大きいですね。もともと『HYPE!』をやろうと思ったのは、マッスル坂井さんが主宰する『マッスル』(カタカナマッスル)や『まっする』(ひらがなまっする)に触発されたからなんです。

 プロレスはほかのエンタメジャンルと比較すると裾野が狭くて歯がゆいと思っていたんですけど、『マッスル』や『まっする』はプロレスの知識がなくても楽しめる興行だったんです。私も、これまで興味のなかった人たちに対して女子プロレスを見るきっかけを作りたいと『HYPE!』を始めました。まだまだ手探りではあるんですけど……、東京女子プロレスの選手に歌や演劇といったプロレス以外の無茶ぶりをさせることで、プロレスラーはなんでもできるというところを見せたいですね」

2025年も恒例となった中島翔子との試合からスタートする【写真:(C)東京女子プロレス】
2025年も恒例となった中島翔子との試合からスタートする【写真:(C)東京女子プロレス】

このままでは辞められない…長期欠場が喝を入れてくれた

 7か月の欠場を経て、11月22日にリングに復帰したミサヲ。パートナーは『享楽共鳴』というタッグを組んでいる中島翔子。対角にはミサヲが大好きと公言している辰巳リカと、ミサヲの欠場中にプリンセスタッグ王者にも輝き成長著しい遠藤有栖がいた。

「すごくいいカードを組んでくださったなと思いました。このカードで復帰できるのは嬉しかったですし、タッグパートナーの中島さんが頼もしくて、対戦相手には深い思い入れのあるリカさん、そしてタッグ王者の経験を経て強く成長した有栖……めちゃくちゃ燃えるカードでした。この状況でコミカルという自分の強みを見せたいけれども、自分が復帰するにあたってパワーアップしてきたという部分を見せたいと思っちゃって……肩慣らし程度だと思われたくないというのがあって、後半に連れてただ休んでいただけじゃないんだぞという展開になったんだと思います。そしてそれを受け止めてくれる二人だったので」

 ミサヲの言う通り、後半は激しい攻防となった。最後は辰巳が大一番でしか出さないホワイトドラゴンスリーパーという切り札中の切り札で、ミサヲからギブアップを奪った。

「私がスリーカウントを取られる形だと、諦めないだろうなと思ったんじゃないですかね。絶対返すだろうと。その意地を汲んでくれたリカさんに、完膚なきまでに叩き潰されました(笑)。ただ欠場したケガが試合中だったこともあり、これが最後の試合になるかもという気持ちはつねに持つようになりました。アメリカのケガでフェードアウトしてもおかしくなかったですし、実際病んだ時期もありました。実は数年前から、次に大きなケガをしたら(プロレスを)辞めようと思っていたんですよ。

 フワフワしていた時期があって、このケガで逆に喝を入れられたというか。ここで現役生活が終わったら、こんな気持ちになるんだみたいな。5月6日の後楽園は病室から見ていて、後輩同士が戦うタッグタイトル戦(鈴芽&遠藤有栖に上原わかな&HIMAWARIが挑戦したプリンセスタッグ選手権試合)があったんですけど、皆強くなっていてすごくいい試合をして。そして、メインでは道場で会う回数が多すぎる2人(渡辺未詩に中島翔子が挑戦したプリンセス・オブ・プリンセス選手権試合)の集大成で。

 私、なんでここにいるんだろうと思って、この悔しさが絶対辞めたくないという気持ちにさせてくれました。享楽共鳴でタッグベルトは獲っていないので、歴史に名を残すこともできていないですし。以前、挑戦者決定戦で負けたときに中島さんが流した涙が忘れられなくて、今でも思い出すとショックで……自分が情けなかったです。だから、2025年こそ享楽共鳴で結果を出したい。復帰してからの目標がタッグベルトを獲ることにしているんですが、強くなって中島翔子の隣に立ちたい。その意味でも、恒例の1.4後楽園での中島さんとのシングルは負けられないですね」

 1.4後楽園。中島翔子vsハイパーミサヲのシングルは名(ときに迷)勝負数え歌として1年に1回の恒例試合となっている。過去の戦績はほぼ五分だ。

「(対角の中島は)めちゃくちゃ勝ちづらいんですよ。私的に中島さんに勝っているところが身長ぐらいしかない。享楽共鳴でタッグを組むときは、変則的な動きや小賢しいテクニックがいい持ち味になっていると思うんですけど、対角にいる中島さんは引き出しが多すぎて。唯一私が勝てそうなのは、飛び道具とハードコアかなと。私と同じ土俵で戦ってくれる中島さんの対応力はすごすぎるのでどうなるか……」

最後に改めて2025年の抱負を聴いた。

「これまでの私って、正直“切実さ”が足りなかったと思うんです。まったくなかったわけではないですけど、トップ選手と戦うときに一番大切なのはその最後の切実さの差なのかなと。今回の長期欠場によって、すごく切実になったんですよ。1試合1試合を無事に終わらせて、次の試合をしたい、そのうえで勝ちたい。東京女子全体を良くしていきたいという気持ちだけではなく、ハイパーミサヲ個人としての強さも出していきたいですし、享楽共鳴の強さも出していきたいですね」

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