野球一筋もイップスで高3最後の大会を欠場…挫折経験した兵頭功海の「後悔しない選択」
俳優の兵頭功海がABEMAで放送中の話題ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』に出演中だ。桐谷健太演じる謎の情報屋“インフォーマ”木原慶次郎らと対峙(たいじ)する鬼塚拓真(池内博之)の仲間・優吉役として、ど派手なアクションも見せている。ここ数年で出演作が急増中の活躍目覚ましい26歳に今を聞いた。
『インフォーマ 』で共演した佐野玲於は「兄貴のような存在」
俳優の兵頭功海がABEMAで放送中の話題ドラマ『インフォーマ -闇を生きる獣たち-』に出演中だ。桐谷健太演じる謎の情報屋“インフォーマ”木原慶次郎らと対峙(たいじ)する鬼塚拓真(池内博之)の仲間・優吉役として、ど派手なアクションも見せている。ここ数年で出演作が急増中の活躍目覚ましい26歳に今を聞いた。(取材・文=中村彰洋)
――前作もリアルタイムで拝見していたとうかがいました。『インフォーマ』にどのような印象をお持ちでしたか。
「地上波なのに攻めた作品だなと思っていました。男ってああいう作品が好きなんですよね(笑)。かっこいいですし、俳優としても気になる作品だなと思っていました」
――新シリーズへの出演が決まった時はいかがでしたか。
「優吉という役での出演が決まった時は、とてもうれしかったです。でも、決まってから撮影までが短かったので『あ、来月タイに行くんだ』みたいな感情でした(笑)。僕は台湾とのハーフなので、小さい頃に家族で中華圏に行ったことはありましたが、大人になってからは海外に行ったことがなかったので、心配もありました」
――実際にタイで撮影してみていかがでしたか。
「景色に人や言語、食文化も全てが日本とは違っていて、とてもいい経験になりました。でも、早く日本に帰りたいとも思っていました(笑)。だけど、僕が演じた優吉は、心の奥底で日本に帰りたいと思っている役だったので、それが自然と出てくるのもありかなと割り切っていました。スタッフさんもパワフルで、キャストもすてきな方々ばかりだったので、撮影自体はめちゃくちゃ楽しかったです」
――共演者の方々との交流などはありましたか。
「若い方が多かったので、『新しいことやってやろうぜ』みたいな空気感がすごかったです。僕は今作からの参加で、タイでいきなり初めましてでした。その翌日から空気もつかめないままに撮影だったのですが、(佐野)玲於くんがサウナやご飯に誘ってくれたりしたおかげで、徐々になじむことができました。兄貴のような存在で、玲於くんが1番タイを楽しんでいたからこそ、僕も一緒に楽しむことができました。
池内さんには、クランクインしたばかりの時にSUMIREさんと一緒に3人で食事に行って、『これから頑張ろうね』みたいな話をさせてもらいました。池内さんも僕もゴルフにハマっていたので、タイで打ちっぱなしに行ったり、プライベートでも一緒にいる時間を作ってくださったので、撮影では池内さんの顔や背中を見ていれば、引っ張っていってもらえる感覚がありました」
――今回、役作りで人生初パーマをかけたとお聞きしました。
「そうなんですよ。タトゥーが入っているキャラも初めてだと思います。僕は直毛なので、パーマだとセットしなくても、ある程度形になるので、とても気に入っていました。でも、次の仕事もあったので、すぐにカットしちゃいました(笑)」
『下剋上球児』出演が転機に「あの作品での自分を超えていかなければ」
――テレビに出たいという思いで始められた芸能活動とのことですが、意識に変化はありましたか。
「変わっているかもしれないです。今年の5月ごろから、自分の人生について考える時間が多くなってきました。仕事への向き合い方、生きていく上での考え方とか……。いろいろと変わる良いタイミングなのかなと思っています。
良いことか悪いことかは分からないですが、最近は『楽しいだけでやっていてはいけないな』と思うようになってきました。主演なども経験させてもらう中で、もっと苦しいことも背負っていけるようにならなきゃと意識するようになってきましたね」
――なにかきっかけがあったのでしょうか。
「去年、『下剋上球児』(TBS系)に出たことが大きいです。僕にとって大事な作品で、代表作になりました。投手役でしたが、僕は野球を10年間やっていたので、役作りがほぼ完成しているような感覚だったんです。今後、その10年分の役作りを数か月で行って、あの作品での自分を超えていかなければいけないと考えた時、そもそもの生き方から考えないといけないのかなと思うようになって、自分を見つめ直すことが増えています」
――見つめ直す中で、10年後や20年後にどうなっていたいなどを考えることはありますか。
「それはあります。20歳で役者を始めた時にノートを書き始めました。その1ページ目に5年後の目標、10年後の目標みたいな形で、35歳までの目標を書いていたんです。25歳の目標はまだかなっていなくて、遅れてしまっているのですが、30歳までに巻き返したいなと思っています」
――役作りの際にもノートなどを使用するとお聞きしましたが、書くことを大切にされているんですね。
「音や写真でも残すことのできる便利な時代で、わざわざ書くことってすごく労力がいることだと思います。古き良きではないですが、昔の役者さんたちもこうしていたんだろうなと思っています。20歳の時に、たまたまノートに書き始めて、『これは役者を辞めるまでずっと続けよう』と決めたことなんです。全く同じ種類で同じ形のノートを買いそろえて、今で12冊目ぐらいです」
――これが数年後に何冊になっているか楽しみですね。
「そうですね。書いているってことは役者を続けているということなので、数年後も書けていたらいいですね」
――兵頭さんは高校まで野球に打ち込まれていましたが、高3最後の大会に出られないという挫折も経験していますが、どのように自分の中で消化されたのでしょうか。
「高3の時にイップスになってしまったんです。ずっとお世話になっていたピッチングコーチに『最後の大会は選手兼コーチとして出ないか』と声を掛けてもらえました。でも、『ヤダ』と断りました。僕の性格なんですけど、自分が決めたことを貫きたかったんです。選手兼コーチになれば、その瞬間に選手という重圧からは解放されて、楽な気分でチームに貢献できるとは思いましたが、選手としての戦いを諦めたくなかったので、最後まで抗い続けました。あそこで諦めていた方が後悔して、自分の心に傷が残っていたのかなと思いますね」
――とことんやりきったからこそ、次に進むことができたということですね。
「やれるまでやりきったから、もうしょうがない。今の僕はそれまでだったんだって思えましたね」
――何事も後悔を残さぬようにやり抜くのが大事ということですね。
「これまで、AとBの選択肢があった時、“こっちの方が成功しやすそうだから”という理由では選ばないようにしてきました。“こっちで失敗したならしょうがない”と思える方を選択してきました。でも、ここ数年はその頃の自分を忘れかけていたんです。最近、自分を見つめ直すことが増えた中で、思い出すことができました。これからも、失敗しても後悔しない選択をしていきたいです」