車上荒らしで6年間放置の車→「全部手洗い」驚異のビフォーアフター 実は大切な人の形見
車上荒らしに見舞われ、6年放置されていたボロボロの車両が、見事に復活――。奇跡の復活劇がSNSで話題を集めた。20歳の大学生が手がけた、ホンダ・インテグラ タイプRのレストア。しかも、内装は「全部手洗い」でピカピカに仕上げたという。実はこの1台は、レースチームを運営している父親の大切な知り合いで、兄のように慕っていた人の「形見」だった。魂を受け継ぐ愛車物語があった。
99年式ホンダ DC2インテグラ タイプR 「ブラシで根気強く手洗いしました」
車上荒らしに見舞われ、6年放置されていたボロボロの車両が、見事に復活――。奇跡の復活劇がSNSで話題を集めた。20歳の大学生が手がけた、ホンダ・インテグラ タイプRのレストア。しかも、内装は「全部手洗い」でピカピカに仕上げたという。実はこの1台は、レースチームを運営している父親の大切な知り合いで、兄のように慕っていた人の「形見」だった。魂を受け継ぐ愛車物語があった。
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今回復活を遂げたのは、1999年式のホンダ DC2インテグラ タイプR。落ち葉や泥で汚れた内装が一変。ビフォーアフターは驚くべき光景だ。運転席やドアは新品同様に生まれ変わり、“走りのクルマ”の力強いオーラを放っている。
「車上荒らしで窓2枚割られ6年放置をレストア
ステアリング以外なにも変えずひたすら綺麗に頑張った」
「#愛車の内装コンテスト」のハッシュタグと共にレストア完了を報告したのは、大学生のかずゆ(@JW3_KOOL)さん。親子でクルマ愛好家であり、「父が昔からレースをやっており、その影響で幼い頃から車が好きでアマチュアレースに参戦しています。(整備士の)資格はないので、基本的に父の道具と環境を借りて素人DIY的なノリで車いじりをしています。特に公道走行前は必ず資格を持っている父にチェックしてもらってます」と自己紹介してくれた。
入手の経緯には、胸が熱くなるストーリーがある。
「このインテグラは、父のレースチームで一緒に活動していた方の車になります。その方は私より16歳年上ですが、その方が高校生の時から父のもとでレースをしていたため、私が生まれた時からの付き合いでした。私は1人っ子なので、兄のように慕っていてレースもペアで走っていました」。
インテグラの知人オーナーとは家族ぐるみの付き合いで、かずゆさんにとっても大事な存在だった。
しかし、「その方は約1年前にバイクの事故で亡くなってしまいました」。亡くなった知人オーナーが所有していた数十台の車の片付けを、かずゆさんたちが引き受けることになったという。
「その中にレストアしたインテグラが草に埋もれて放置されており、形見として私が引き取りレストアを決意しました」。かずゆさんは幼い頃から親しんできた“兄”の愛車をよみがえらせることを心に決めた。
やるからには徹底したかった。一方で、窓を2枚破られ、シート2脚や純正メーター、追加メーターなどが盗難被害に遭った状態。屋外に置かれていたことで雨風が約6年吹き込んでおり、「見るも無惨な状態からのスタートでした。逆に主要な内燃機関は調子がよかったため、内装さえ仕上げればこの車はまだまだ頑張れると思いました」。必ず成し遂げるという確信があった。
まず取りかかったのは、掃除から。「室内に入った枯葉や虫の死骸、割れた窓の破片などを掃除機で吸い、そこから1つ1つ内装パーツを外していきました」
ロールケージ(金属パーツ)、床のマット、ドアの内張、ダッシュボード……。すべてを引き剥がし、インテグラはむき出しに。「剥がした内装類は全部手洗いです。どこにでも売ってる洗剤を使ってブラシで根気強く手洗いしました」。思いを込めて手洗いで磨き続けた。
床には大量のサビが。丁寧に落としてサビ止めで塗装。一方で、難敵だったのが、カビだった。「カビがひどく、落としていくのが大変でしたね。あまりやりすぎると変色することがあるので、そこを見極めながら何回も洗いました」。洗っては天気のいい日に1日中太陽に当て天日干し、を繰り返した。
「自らの手を汚して整備した時間と車への愛着は比例するような気がします」
天井も塗装をし直し、朝から晩までの毎日の作業を約2週間。「大学が長期休みだったので、その時間を使いました」。こうして、インテグラはバリバリ走っていた当時の輝きを取り戻したのだ。
「シートやメーターなどは盗まれてしまったので自分で集めました。盗難に遭ったもの以外は全て以前から付いていたものをきれいに洗って再使用しています。ここはこだわりました」と自信を込める。
驚異的なレストア復活に、SNSでは「素晴らしい」「こういう愛情は大好き これからも大切に乗ってほしい」といった驚嘆と絶賛の声が届いている。
汚れても、壊れても人の手でしっかりと修理し、乗り続けていく。その姿勢には、心に響くものがある。
「この車の場合少し理由は特別ですし、それぞれ車によって歴史があるので一概に言えませんが、道のりが険しく手間がかかるほど、よみがえった時の愛着は、どこの誰よりも湧きます。自らの手を汚して整備した時間と車への愛着は比例するような気がしますね(笑)」。かずゆさんは爽やかな笑顔を浮かべる。
愛車と向き合い、“共に走る”喜び。かずゆさんは「車は鉄の塊ですが、不思議と感情があるようで、私の場合はレストアにも限らずレースもそうですね。朝の練習で車と会話をして走らせ、その日の車のポテンシャルに合わせた最大限のことを乗り手が考える。そうすると結果は付いてくるような気がします。プロに頼る時も、自分でここはこだわりたいというものを決めて相談すると、よりよいものが作れると感じます」と実感を込めた。