「衝撃を受けたんです」 18歳からの夢、40代で遂に購入…レア車収集家、今はたった1台に絞ったワケ
18歳の時に、愛車を見せ合う集まりで受けた衝撃。当時は「とても買えない」と諦めた。年を重ねて、「どうしても欲しい」が遂に実現できるようになった。1986年式の日産セドリック Y30 ブロアム VIP。労力も費用も惜しまず、徹底的に“フルノーマル”で管理・維持している。まだ若かった頃の55歳男性オーナーの運命を決定付けたクルマだ。
部品は買い集めてストック、残るピースは「後ろのエアサス」
18歳の時に、愛車を見せ合う集まりで受けた衝撃。当時は「とても買えない」と諦めた。年を重ねて、「どうしても欲しい」が遂に実現できるようになった。1986年式の日産セドリック Y30 ブロアム VIP。労力も費用も惜しまず、徹底的に“フルノーマル”で管理・維持している。まだ若かった頃の55歳男性オーナーの運命を決定付けたクルマだ。
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「この車体のVIPのエンブレム。これに衝撃を受けたんです」
黒光りする圧巻のセダン車。威風堂々としたたたずまいだ。
男性オーナーが当時を振り返る。
「初代ソアラに乗っていた10代の頃のことです。当時18歳、ベタベタの改造車に乗っていました。“グラチャン仕様”なんて呼ばれていた改造にハマっていて。それで、ある集会に参加した時に、当時出たばかりのこのセドリックを見て、一発でほれちゃったんです」
しかし、高級セダンを買えるはずもなく、当時は購入を断念。あこがれのまま、アツい思いは胸の中にしまった。
40代になり、時間的にも経済的にも余裕が出てきた。青春時代の情熱が、再び燃え盛り始めた。
「このセドリックがどうしても欲しくて。『カラーは黒』『最上級』『セダン』。これを絶対条件に、5年間全国を探し続けました」
業者がオークションに出品していた走行距離1万キロのセドリックに手が出そうになったが我慢。最終的に、神奈川県内の中古車店で、今の愛車を見つけた。約10年前のことだ。
そこからがハンパないこだわりようを見せる。「外装は9割以上の部品を交換しました」。なんと、純正品をそろえて“新車”としてよみがえらせた。昨年、ようやく満足のいくような「完成」に至った。
「ちょっとこだわり過ぎちゃっていますが(笑)、自分でもよくできたなと思っています」。セドリックは、愛好家によって改造カスタムが加えられることが多い車種だ。それだけにノーマル仕様で残る車体は、相当貴重だと言える。男性オーナーは「コーナーポールもオプションの純正品です。ここまでのものはほとんどないのではないでしょうか。やっぱり、昔の日産車はかっこいんですよ」と充実の表情を浮かべる。
内装も完璧に残しており、「シートは本革。ひび割れもありますが、これこそが当時のものを維持している証明になります」と強調。「カラオケマイクが付いていて、これも私をひきつけた魅力の1つなんです」。それに、昔の携帯電話を小物として置いており、“バブリーな時代”のらしさを演出している。
カーイベントに出展すると、多くの人たちが足を止める。カナダ人男性は「素晴らしい1台ですね。僕の乗っているキャデラックに雰囲気が似ています」と感嘆した様子。それほどまでにオーラを放っている。
これからの維持も用意周到だ。時代と共に生産がなくなってしまう部品のストックをコツコツ収集。「100万円分ぐらいのストックをしっかり持っています。それにしても、当時の車は部品集めが大変なんですよ」と苦労を語る。
普段は車庫で大事に保管。人前で見せるのは、イベント出展時だけだ。渾身(こんしん)のワックスがけの効果で、まるで新品の輝きを放っている。
完璧と自負するが、“最後のピース”がまだある。「実は後ろのエアサスだけ残っています。購入当時にすでに交換されていました。これがまたなかなかなくて。ずっと探しているので、エアサスをそろえるのが最終目標です」。必死になって探す日々だ。
これまで、シーマとデボネアのレア仕様、グロリア Y30 ジャック・ニクラスバージョンといったレア旧車を保有してきた。今は思い入れの強いセドリック一本に集中。「旧車の維持は難しいんですよ」。それだけに、最大限の情熱を傾けている。
言わば人生を懸けてきたセドリック。「何と表現したらいいのでしょう。『恋人』ですかね」。ずっと恋し続け、ずっと青春の面影を追いかけ続ける。