伊藤健太郎×倉悠貴が対談 “理想と現実”のギャップとの向き合い方とは
俳優の伊藤健太郎と倉悠貴がABEMAで配信中のオリジナル連続ドラマ『透明なわたしたち』に、主演の福原遥の高校時代の同級生役として出演している。20代の若者の“今”をテーマとした本作。仕事・孤独・理想と現実など20代の“今”、2人は何を思うのだろうか。
ABEMAオリジナル連続ドラマ『透明なわたしたち』で共演
俳優の伊藤健太郎と倉悠貴がABEMAで配信中のオリジナル連続ドラマ『透明なわたしたち』に、主演の福原遥の高校時代の同級生役として出演している。20代の若者の“今”をテーマとした本作。仕事・孤独・理想と現実など20代の“今”、2人は何を思うのだろうか。(取材・文=水谷賀奈子)
本作は、松本優作氏が脚本と監督を務め、藤井道人氏がプロデュースする、ABEMAオリジナル連続ドラマ。社会派の作品を多く扱う2人の監督による完全オリジナル脚本で、「どこか居場所がないと感じてしまう20代の若者の“今”を切り取る作品」をテーマに、東京と富山を舞台とした社会派群像サスペンスとなっている。
伊藤はある事件をきっかけに順風満帆な高校生活から一転し、渋谷の片隅で闇バイトを行う喜多野雄太を演じた。
「似ている部分はないのですが、なんとなく分かる部分はありました。自分も喜多野みたいに学生時代に“自分じゃないのに自分がやった”と疑われてしまった出来事があって、そのときは『やったのは違う人だ』と言ってくれる仲間がいてくれて僕は助けられました。学生時代の経験がその後の人生に影響した方には共感してもらえるキャラクターだと思います。性格云々ではなくて、周りの人に対して抱いてしまう感情というところで共感する部分もありました」(伊藤)
一方の倉は、渋谷のスタートアップ企業のCEOとしてきらびやかな生活を送る高木洋介を演じた。
「僕もあまり似ている部分はなかったのですが、“一見すると順風満帆に見えるけど、実は誰よりも孤独”というのは、この業界と似ているのかなと感じました。一見華々しく見えるけど、実際はそうでもないというか……。近い部分があるんじゃないかなと思いました。高木にはずっと喜多野という絶対的な存在がいて、ずっと脇役で主役にはなれない人間なんです。僕自身が『自分が!』という性格ではないのでその部分も共感できましたね」(倉)
富山での学生時代と、渋谷での大人になってからの描写が描かれている本作。まるで温度感の異なるシーンとなっているが、撮影現場でもそんな雰囲気を感じ取っていたようだ。
「違う現場の気持ちで入っていました。学生時代と大人になってからの喜多野は別人で、分かりやすく言うと“闇落ち”したキャラクターになっていたので、逆にやりやすかったです」(伊藤)
「僕も違う現場の感覚でした。富山での撮影は、キラキラした青春も相まって、時間の流れも落ち着いていてゆっくりに感じていた分、東京に帰ってきて、現実に引き戻される感じがあったので、それをそのまま渋谷でのシーンに持ち込みました」(倉)
本作は、現代の20代にスポットを当てた作品となっている。伊藤は27歳、倉も24歳とまさに20代真っただ中の2人にとって共感できる部分は多かったようだ。
「僕たちの世代が感じやすいことをテーマにした映像作品という点での面白さもありますし、抱いている感情を隠すしかない人が多い中で、そういう人が救われてくれたら良いなと思っています」(伊藤)
「『めっちゃ共感するわ、痛っ、きつっ』と思ったからこそ、僕らの世代がやる意味があるんだろうなと思いましたし、やりがいも手応えもありました」(倉)
互いを「色」で表現するとしたら…
本作では、“理想と現実”のギャップに苦しめられるシーンも描かれている。2人ともそういった場面に直面することはあるようで、それぞれの消化方法についても語った。
「落ち込みます。24~25歳って『もっともっと!』というイメージだったけれど、全然まだまだだと感じることが多いです。悩み始めたのはこの仕事を始めてからですが、向き合って自分のペースで歩いていくしかなくて、抜け出すには頑張るしかないです。忘れるぐらい忙しくなるしかないですね」(倉)
「早い段階で処置するようにしています。気付いたときに『あれ、離れすぎてる』とはならないように。……でも、無理なんですよね。理想通りになんてなかなかいかないし、すごく難しいからこそ“理想”なんです。だから、あまり理想にとらわれすぎないようにして『近付けないくらい高い目標にしているんだな』と思っておけば、楽になるのかな。落ち込むことはたくさんあったし、落ち込んでも何も変わらないけど、落ち込むときは落ち込んでいると、いつか落ち込まなくなる日がきます」(伊藤)
続けて伊藤が、「落ち込み続けているといいものが寄ってこなくなる気がしていて。無理やり自分のことを洗脳するぐらいの勢いでポジティブにいようというのは最初はきついけれど、なるべくそういうマインドに持っていった方がいいのかなと」と前向きでいることの重要さを説くと、それを隣で聞いた倉は「ちょっと泣きそうになってきました」と勇気づけられたようだ。
本作のタイトルは『透明なわたしたち』。最後にお互いがイメージし合う色で表現してもらった。
倉は目の前に置いてあった油性ペンを眺めながら、「紫と黄色ですね」と2色を選択。伊藤について、「まとうオーラは紫だけど、発散しているのは黄色、みたいな。それは第一印象から変わらないです!」と語った。
一方の伊藤は「緑とか? これまで話していたように、明るい部分も少しダークな部分もあるというか。でも、ダークと言っても僕はネガティブには感じていないです。それを本人としては悩んでいる部分もあるとは思うけれど、それが倉くんの魅力なんじゃないかなと思っています」と倉に優しい視線を向けた。