ラジオでの声が歌手デビューのきっかけに…東宝シンデレラ出身20歳女優・井上音生「違う一面を出せたら」
「音に生きる」と書いて「音生(ねお)」。名をつけたのは父親だという。まるで、アーティストとして生きることを予言していたかのようだ。2016年の「東宝シンデレラ」オーディションで見いだされた井上音生(20)が、10月9日にシングル『あなたに恋をしている』で歌手デビューする。同曲はピュアな恋を描く、透明感あふれる楽曲。井上に今の思いを聞いた。
「音に生きる」と書いて「音生(ねお)」の井上音生
「音に生きる」と書いて「音生(ねお)」。名をつけたのは父親だという。まるで、アーティストとして生きることを予言していたかのようだ。2016年の「東宝シンデレラ」オーディションで見いだされた井上音生(20)が、10月9日にシングル『あなたに恋をしている』で歌手デビューする。同曲はピュアな恋を描く、透明感あふれる楽曲。井上に今の思いを聞いた。(取材・文=ふくだりょうこ)
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井上は第8回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞と集英社賞(りぼん賞)を受賞し、そのキャリアをスタートした。
「デビューしたのが小学6年生の時でした。そこから濃い経験をたくさんさせていただいて、『まだまだ活躍する場を広げていきたい』という気持ちもあります」
中学、高校時代も仕事と学業を両立。現在は大学で語学を学んでいる。
「小さい頃から英語が好きで、海外の文化にも興味がありますし、世界中の人とコミュニケーションを取ることが自分の一つの目標でもあったんです。『お仕事にも生かせるな』と思ったので進学を選びました。お仕事と離れて同世代の子たちと授業を受けたり、お話をすると休息になるし、『すごくいい時間になっているな』と思います。楽しく過ごせているので、大変だと思うことは……授業に出れなかった時に焦るぐらいですね(笑)」
一方で、仕事面で印象に残っているのは23年に上演の舞台『あの夜であえたら』だ。井上が演じたのはラジオパーソナリティーの綾川千歳。舞台の本番に向けて、実際に約1年間はニッポン放送『綾川千歳のオールナイトニッポンN』に綾川千歳として出演していた。
「役としてラジオをやり、その役を本番に持っていって、最後に舞台に上がる時に初めて観客のみなさんの前に綾川千歳が登場するんです。『満を持して』という雰囲気だったので、それがすごくプレッシャーでしたね。わりと私と似ている役というか、ほとんど同じ。それまでに1年間作ってきたものを基にした役になっていたので、逆に難しかったです。どうするのが正解なのか、本番まで正解が分からないのが不安だったんですけど、本当に共演したキャストや、スタッフのみなさんに支えていただきました。舞台に上がった時に観客のみなさんがペンライトを振っていて、『今までラジオを1年間やってきたからこそ、リスナーさんがいるんだ』という気持ちになり、初めて『役とリンクできたのかな』と思いました」
ラジオは井上にとって欠かせないものだ。RNB 南海放送『井上音生のNEOラジ』は約6年間続けてきており、生活の一部となっている。地元愛媛県をカバーする同局が制作。井上自身も番組作りに積極的で「自分で原稿を作って、『リスナーさんにどう話せばいいかな』だとか、毎週考えているのでなくなったら寂しいと思います」と話す。
歌手デビューもラジオがきっかけだった。番組で井上の声を聴いた徳間ジャパンのディレクターが「井上が歌ったらどうなるのか」とイメージし、彼女の道が開けた。
「決まった時は期待に応えられるのか不安もありましたし、知識もない私が何をしていけばいいのか分からなかったんです」
しかし、周りからは驚きとともに背中を押された。ミュージカル『ナビレラ』の共演者たちからもエールが送られていた。
「『すごく楽しみにしている』というお声もいただきました。公演後もみんなでお食事に行く場もあったんですけど、家族役で共演させていただいた狩野(英孝)さんからは『作詞や作曲するからいつでも言ってね』とおしゃっていただけて本当にうれしかったです」
くしくも、『ナビレラ』でダブルキャストを務めていた青山なぎさは今年5月にデビュー。井上は「親近感を持った」と言う。
「青山さんはもう10曲も作詞されていて、『書く手が止まらない』っておっしゃっていました。『本当にすごいな。私もそうなれたら』と思います。他にも共演者の方から緊張しないコツを聞いたりしてます。心の中では『緊張しないぞ』という強い気持ちを持っているつもりなんですけど、メンタルと歌声は直結しているんですよね。喉が緊張するとわかりやすく声が出なくなるんです。『ナビレラ』でもたくさんの方の前で歌う機会がありましたし、みなさんに聞いた緊張の鎮め方も実践していけたらと思います」
可能性を広げた声の使い方を意識
そんな井上のデビュー曲のタイトルは『あなたに恋している』。タイトルの通り、恋愛の曲だ。
「恋する乙女のあふれる気持ちや、繊細な感情をストレートな歌詞にのせた楽曲になっています。なので、私もうそをつかずに素直な気持ちをのせて、『みなさんに届けばいいな』と思って歌いました。曲の主人公の設定も決まっていて、それは演技と通ずるものがありますね。最初に主人公の設定を詳しく聞いていたから、想像しやすかったです。そうすると、歌うというより、『歌詞に思いがのるな』と思いました」
同シングルにはボーナストラックとして、ボイスドラマが収録されている。これは『あなたに恋をしている』の「アンサーボーナストラック」となる。
「本当に恋を知っている方も、今は恋をしていなくても『これから恋をしたいな』と思うぐらい幸せいっぱいの気持ちになれるような曲にしたいと思っています。それをボーナストラックで曲を掘り下げることができてうれしいです」
もう1曲は『ラジオパーソナリティ』。ラジオを愛する井上にはぴったりな曲だ。
「作曲のたかはしごう先生も私のラジオを聴いてくださっていて、そこからこの曲が生まれました。歌詞を作る上でも私と先生で打ち合わせをして、どういう気持ちでラジオに取り組んでいるのか、向き合っているのかをお話して作られた楽曲なので、とても気持ちがこもっています」
俳優、ラジオパーソナリティー、歌手。どれも声が重要になる仕事だ。井上はその魅力的な声をもって、それら全てに可能性を広げた。自身でも「『この声を聴いたら、音生だって分かる』と友人に言われたことがあります。それで、私って個性的な声なんだなって思って」と話すが、その使い方も意識している。
「でも、あらためて自分のラジオを聴いていると、『歌声とは少し違うな』と感じます。ラジオでもリスナーさんに向けて明るく楽しく話すところは同じですが、歌だと楽曲によって声質が変わるので『自分の違う一面をもっと出せたらいいな』と思います」
最後に井上に「歌とは何なのか」を問うた。歌う側として、聴く側としての思いを聞いた。
「聴く側としては心の栄養剤だと思っています。自分の1日の気分を上げてくれるような曲もたくさんあります。自分の解釈で共感できる歌をよく聴いて、『1日頑張るぞ』と思えるような曲が大好きなので、そういう曲を作る機会があれば作りたいですね。歌う側としては、あまり『こういう歌だ』と決めつけて歌いたくないですね。聴く人の思うままに、自由に聴いてほしいんです。みんなの心に届くように歌いたいです」
8月18日、20歳になった。新たな10年もスタートさせたばかりで「新たな一面を惜しみなく出して、みなさんを驚かせる10年にしたい」とも語った。『あなたに恋をしている』は序章。これから、どのような一面を見せていくのだろうか。
□井上音生(いのうえ・ねお) 2004年8月18日、愛媛県生まれ。16年11月、第8回「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞と集英社賞(りぼん賞)を受賞し、芸能界入り。18年、映画『嘘を愛する女』で俳優デビュー。18年1月から南海放送(RNB)『井上音生のNEOラジ』でRNB最年少ラジオプレゼンターとなる。21年3月には、ミュージカル『魔女の宅急便』でキキ役を演じ、初舞台にして初主演を果たす。趣味はアニメ、茶道。特技はバレエ、乗馬、空手。157センチ。血液型O。