突然消えた2.5次元俳優、警察沙汰→10円駄菓子で飢えしのぐ日々 起業で年商1億円の復活ストーリー

人気漫画、アニメ、ゲーム作品の世界観を舞台で表現する2.5次元俳優。『刀剣乱舞 』では、森蘭丸役で中性的な美しさと軽やかな身のこなし、剣さばきで話題となった人物がいた。名前は丸目聖人(まるめ・きよひと)。彼はその後、数々の人気作品に出演し、ファンを魅了した。だが、2018年、忽然と表舞台から姿を消し、芸能界を引退した。彼は今、どうしているのか。気になって取材を申し込んだ。

インタビューに応じる丸目聖人さん【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じる丸目聖人さん【写真:ENCOUNT編集部】

『刀剣乱舞 』など出演の丸目聖人さん

 人気漫画、アニメ、ゲーム作品の世界観を舞台で表現する2.5次元俳優。『刀剣乱舞 』では、森蘭丸役で中性的な美しさと軽やかな身のこなし、剣さばきで話題となった人物がいた。名前は丸目聖人(まるめ・きよひと)。彼はその後、数々の人気作品に出演し、ファンを魅了した。だが、2018年、忽然と表舞台から姿を消し、芸能界を引退した。彼は今、どうしているのか。気になって取材を申し込んだ。(取材・文=白川ちひろ)

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 都内の飲食店に現れた丸目さんは、俳優の頃と変わらぬさわやかな笑顔で言った。「お待たせしました」。時間通りだったが、先に着いていた記者を気遣い、取材に入るとデビューの切っ掛けから話し始めた。

「高校を卒業後、地元の兵庫県で特にやりたいことや夢もなく、飲食店でひたすらアルバイトをしていたんです。そんな時、舞台観劇の帰りにお店に立ち寄ってくれたお客さまから、舞台の素晴らしさについて力説され、『芸能の仕事って何だか面白そうだな』と思い、軽い気持ちで上京しました。最初は養成所に入ったのですが、映画の考察やウォーキングや発声の練習ばかりでした。僕はすぐに『こんなの意味がない』と反発するようになりました。まだ若かったので、尖っていたのかもしれません(笑)。そこで、講師の反対を押し切って会場を借りてチケット代500円で、自分で舞台をプロデュースすると結果的に成功。自信になりましたね。その後は別の事務所に所属し、2.5次元の舞台のアンサンブルとして経験を積みました。しばらくはアンダースタディ(主要キャストがケガや病気で出演が難しくなった時に備え、その役の稽古をして控える俳優)でした」

 プロ野球に例えると「2軍」。何年も下積みをしていた丸目の運命を大きく変えたのは、『刀剣乱舞』だった。

「当時、自分はアンサンブル(役名のないキャスト)で決まっていたのですが、主要キャストでは森蘭丸役だけ配役されていませんでした。『これはチャンスだ』と思いましたね。プロデューサーと演出家に『自分をぜひ森蘭丸役にしてほしい』と直談判し、急きょ、オーディションをしていただいたんです。結果、合格をもらい、人生初めての大きな舞台での役付きを勝ち取りました」

 森蘭丸役を好演すると、出演オファーが相次いだ。さまざまな人気作品に出演。だが、2018年2月、出演中だった舞台『アイ☆チュウ』を突然に降板。何の前触れもなく、芸能界を引退した。当然、ファンからは悲しみの声が上がった。

「実はあの時、とある事件に巻き込まれていました。警察沙汰になってしまい、舞台に出演することができなくなってしまったんです。薬物使用などではありませんが、事件については当事者の立場もあるので詳細は控えます。しかし、人気作品の舞台出演中に事件に巻き込まれるという自分のプロ意識の低さ、たくさんの人に迷惑をかけてしまったことは今も申し訳なく思っています。結果的に不起訴にはなりましたが、しばらくは留置所で誰とも連絡も取れない状況で、ただただ後悔をしておりました」

俳優時代の丸目聖人さん【写真:本人提供】
俳優時代の丸目聖人さん【写真:本人提供】

引退後、アルバイト生活経て映像制作会社を設立

 事件後、引退して仕事を失った丸目さんに待ち受けていたのは、多額の賠償金支払い請求だった。

「知人や弁護士の動きで留置所から出た時にはもう大惨事でした。舞台は代役の方のお陰で何とか上演されたのですが、賠償金の請求は3桁以上にも及びました。選択肢は『実家に戻る』だけでした。そこからアルバイトを4つ掛け持ちし、睡眠時間を削ってコツコツ借金を返していましたが、その額はなかなか減りませんでした。無理をしたせいで体調をも崩してしまい、大変な思いをしました」

 翌19年。丸目さんは再び芸能界の仕事に携わるべく、メンズアイドルユニット・VIRALをプロデュースした。だが、その先には別の試練が待ち受けていた。

「2020年春から始まったコロナ禍です。決まっていた仕事が全てキャンセルになりました。年収は100万円切り。水道が止まってペットボトルの水で体を洗ったり、追い詰められて10円の駄菓子を食べてしのいだ日もありました。そして、『このままではダメだ』『自分に何ができるんだろう』と考え、俳優業で制作の裏側を見てきたことに気付きました」

 思い立ったら即行動。丸目さんは顔見知りのカメラマンや映像編集者に声をかけ、ウェブCMやYouTubeチャンネルなどの映像制作チームを結成し、Worth Relation合同会社を立ち上げた。

「100を超える会社に営業に行きましたが、最初はどこも門前払いでした。そこで戦略を変え、『舞台俳優を使ったストーリー性のあるCMを作りませんか』と、自分の俳優活動の経験を切り口にお話をするようにしました。すると、徐々に耳を傾けてくださるようになりました。仕事の発注もいただくようになり、映像制作、イベント運営などエンタメに関する事業を展開できるようになりました。結果、そこから1年で賠償金を完済できました」

 現在、手掛けているグループ会社の年商は1億円。俳優時代の稼ぎと比べると約100倍の額になっており、自身の年収も断然上がっているという。そして、裏方として働く喜びを知った丸目さんは今年、芸能事業も始めた。

「以前、バラエティー番組で共演した女優の麻木玲那さんが所属してくれました。彼女は映画主演の経験もあるので、教える側にも回ってもらっています。今後はタレントの育成事業にも力を入れていきたいです」

 かつて2.5次元俳優だった31歳は、3次元で起きた試練を乗り越えてタフになっていた。この先も何が起きるか分からないが、目の前にあることに全力で取り組み、社会に貢献していくつもりだ。

□丸目聖人(まるめ・きよひと) 1992年10月26日、兵庫県生まれ。2014年に芸能界入りし、『刀剣乱舞 』『アイ☆チュウ』など、数々の有名作品に出演。18年2月、所属事務所を退所し、芸能界を引退。その後、映像制作会社を設立。ウェブCMやYouTubeチャンネル制作、タレントのプロデュースやマネジメント事業を行っている。168センチ。血液型AB。

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