小野みゆき、独自の仕事論を語る「役者の仕事というのは、オファーを待つべき」
第13回大阪アジアン映画祭JAPN CUTS Award受賞の映画「クシナ」(速水萌巴監督、7月24日公開)で約15年ぶりの映画出演を果たした小野みゆき。インタビューの第2弾では、「トラック野郎」「戦国時代」で輝いていたデビュー当時のウラ話を深堀り。今の俳優とは違う、女優哲学を披露してくれた。
小野みゆきインタビュー後編、映画「クシナ」24日公開
第13回大阪アジアン映画祭JAPN CUTS Award受賞の映画「クシナ」(速水萌巴監督、7月24日公開)で約15年ぶりの映画出演を果たした小野みゆき。インタビューの第2弾では、「トラック野郎」「戦国時代」で輝いていたデビュー当時のウラ話を深堀り。今の俳優とは違う、女優哲学を披露してくれた。
――資生堂のCMはもちろん、「戦国自衛隊」での小野さんも印象に残っています。
「あの頃の角川映画はすごかったですよね。主題歌(「戦国自衛隊のテーマ」松村とおる)が売れた。化粧品もタイアップ曲(※資生堂’79サマーキャンペーン「ナツコの夏」ではツイストの「燃えろいい女」)が売れた。歌が売れていくと、コマーシャルとバーッと出ていく。そういう時代でしたよね。もう35年くらい前ですかね」
――いや、40年くらいですか。その前の作品がヒロインを務めたデビュー作「トラック野郎・熱風5000キロ」。これも拝見しています。
「本当ですか、イヤだな(笑)。東映は当時、任侠もののような男性映画をたくさん撮っていました。私は女の子だから、ヤクザ映画なんか観たことないわけですよね。本当に見た目は大人っぽくても、初めての映画で、右も左もわからないんですよ。訳もわからず現場に行くと、ものすごいスケジュールが組まれていました。映画の撮影と(資生堂の)キャンペーンもあって、いわゆる寝る暇もない状態を子どもが味わうわけですよ。東映のスタッフが『かわいそうに』と言って、精力剤を持ってきてくれるんです。キヨーレオピンです。普通、若い子は飲みません。オッサンが飲むようなものです(笑)。なんでも、『はい、はい』と言って、キヨーレオピンを飲んでいましたね」
――商品名まで、よく覚えていらっしゃいますね。
「だって、なんじゃこりゃ? って思っていたから(笑)。そのあと、うちの父が同じものを飲んでいたんです。とにかく、何にもわかんない、生まれたての状態だったんです」
――「クシナ」では、そんな小野さんの貴重な経験を若いスタッフにお伝えする機会はありましたか?
「いやいや。そんなことはないです。昔のスタッフみたいに、右も左もわからなくて、というような人は1人もいないんです。機械ものに関しては何でも知っているし、逆に言うと、現場のことは知らなくても、知識は頭でっかちなくらい豊富ですよ。だから、教えることはない。むしろ教わることばかりですよ。それに、私が口を出すと、若い女性の監督が緊張しちゃうと思っていましたしね。なるべく、のびのびと撮影できるようにしました。邪魔をしないように、『わかりました』と聞いている感じでした。こちらから、『こういうことをしたら、どうですか』ということも言いません。それは昔からです」
――俳優は演出家の言葉を受け止め、演じることに徹するものだと、叩き込まれたのでしょうか?
「そうですね。役者はそういうもんだと思っています。自分としては『こうした方がいいと思う』なんて言うほどの自信もないし、『これどうかな?』と聞かれたこともないですね」