妻ぼう然「なにこれ」 自宅に届いたのは40年前の車…小学生の時の夢かなえたオーナー「もう車は最後にしよう」
電気自動車(EV)やハイブリッドカーが台頭し、ガソリン車の時代がだんだんと終わりに近づこうとしている。日本ではガソリン車の占める割合が依然高いものの、世界の市場はテスラやBYDが席巻している状況だ。そんな時勢を理解しつつも、小学生のときの衝撃を忘れることができず、40年以上前の旧車を購入した50代オーナーがいる。熱い思いを聞いた。
納車時は緊張「家族に内緒で買いました」
電気自動車(EV)やハイブリッドカーが台頭し、ガソリン車の時代がだんだんと終わりに近づこうとしている。日本ではガソリン車の占める割合が依然高いものの、世界の市場はテスラやBYDが席巻している状況だ。そんな時勢を理解しつつも、小学生のときの衝撃を忘れることができず、40年以上前の旧車を購入した50代オーナーがいる。熱い思いを聞いた。
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「小学生の頃の憧れの車なんです。もう買うのは今しかないだろう的な感じで買ってしまいました。当時コマーシャルで、川の中を走っていたり、急な坂路をガーって上がっていたりしてたんですよ。おお、すげえなと。普通の乗用車のボディーなのに、ジーブみたいなことができる。その頃からスバルってメーカーが気になって、これに至るまでは結構車を乗り換えてたんですけど、最終的にもう車は最後にしようというので、これにしました。自分の乗りたい車を買ったっていう感じです」
1983年式のスバル・レオーネツーリングワゴン。東京都の岩本忠則さんは、2年前に神奈川県内の中古車店で購入した。価格は「売り値が140万ぐらい。ちょこちょこっと直すのやってもらって、トータルで160、170万ぐらいだったと思います」。ネットで売りに出されているのを見つけ、1年ほど悩んだ末に決断した。
「外装は結構ボロいんですけど、内装がきれいだったので、これだったら乗れるかなと。エアコンもついていましたし、古い車の価格が上がっている中で、これからまたどんどん上がられても困るなと」
レオーネはレガシィの前身。ちょうどバブル期で、日本だけでなく、アメリカにも輸出されていた人気車種だった。
加えて、岩本さんの車には特徴がある。屋根にスキー板を積むルーフボックスを搭載している。
「本来この車にはつかないものなんですけど、レオーネのオーナーズクラブで会長さんが探してくれて、持ち主の方とお話して譲ってもらったんですね。で、無理やりくっつけているんです」
レオーネはセダンやハッチバックなど複数のボディータイプがあり、バンには「スキーヤーズスペシャル」という特別仕様車があった。その目玉がルーフボックスだった。「昭和55年ぐらいだったかな。限定300台ぐらい。その仕様を模した形って言えばいいですかね」。岩本さん自身はスキーをしないが、このままスキー場にも行けそうな雰囲気で、愛車のワイルドなイメージを一層引き立てている。
レガシィやインプレッサを所有したが…
免許を取得後、これまで購入のチャンスはなかったのだろうか。
「いや、もう何度もありましたね。それこそ免許取った時はちょうどこれが中古車でバンバン出ていた頃で、安く買えたりもしたんですけど、その当時は買おうと思いませんでした。新しい車に目が移ってしまったというか、私が勤め始めた頃はもうレガシィに変わっていたんです」
ブランド名が消滅し、少なからずその影響を受けた。
「だからレガシィに行ったり、インプレッサに行ったりとかしたんですけど、最終的に巡り巡って最後に乗ろうかなと思ったのは、やっぱり当時欲しかったこいつでした。もう電気になるじゃないですか。それこそ、代替燃料やEフューエル(合成燃料)みたいなもので乗れれば乗りますけど、そうじゃない限りは、ガソリンが続くまではこれ乗ってようかなって。最後のトドメの1台です」
最新の車に比べれば、不自由なところもある。マニュアルで重ステだ。「車庫入れは正直、重いです」。ただ、40年分の思いがすべてを包み込んでいる。
「今の車にはない鼓動があるんですよね。加速する時の音とか、一時代前のスバルなんですけど、音がやっぱりいいんですよね。マフラーで出してないような、自然のスバルの音なので、そこは気に入っています。ボディーサイズもちょうどいいサイズで、家族も不満をあまり言わずに乗ってくれてはいます」
とはいえ、納車のときには緊張した。
「それこそシークレットで買いました。家族に内緒で買いました。突然これを見せたんで、(妻は)なにこれっていう話にはなったんですけど、パパが好きだからしょうがないよねって」
ほかに車を所有しておらず、妻の免許はオートマ限定だ。にもかかわらず、相談もせず、いきなり40年前の車を持ち帰ってきた。
夫の趣味に理解を示してくれているが、妻の嘆きは続いているようで……。「次変わんないの、変わんないの? とは常に言われてます。『あれ、まだ変わってないね』と乗るたびに言われてますけど、もう変えないよって言っているんです。諦めるぞ、もうこれずっと乗るからって」と苦笑いを浮かべた。
ちなみに、レオーネの前の愛車は、前席3人乗りのフィアット・ムルティプラ。「人が乗ってないような車に乗っていることが多いかもしれない」と続けた。
スバル技術の結晶は「タフで意外に壊れない」
ハンドルを握った2年間の中で、思い出に残っているのが、大阪で行われたオフ会だ。
「スバルのコミュニティーサイトのオフ会が大阪であったんです。これで行ったんですけど、何のトラブルもなく、往復で1200キロぐらい走ったんですけど、全然疲れないし、大したもんだなと思って。燃費もそんなに悪くなく、15キロぐらい走ったんですよ。全然使えるじゃん、まだまだ乗るよ、乗ってやろうってなりました。タフで意外に壊れないんですよ」
昔の車と言うなかれ。どっこい、スバルの職人の技術は令和の時代でも生きている。
ただ、いくら信頼していても、CMのような走行は控えているという。
「実際の話、やろうと思えばできると思うんですけど、できないですね。板金したくない、あんまり修理はしたくないというのがあって」
部品はアメリカのほうがあり、何かあればネットで探している。円安には頭が痛いが、存在自体が希少な車だ。
オーナーズクラブの中でも「ツーリングワゴンに乗っている方は何人かいます。でも、ほとんど乗ってこられないというか、コレクターズアイテムじゃないですけど、別車がありますよという方が多いですね」。ルーフボックスまで積んでいるとなれば、「日本に1台かもしれない。もし、ほかにいらっしゃったら逆にお友達になりたいですね」という。
物珍しさから、公道に出ると頻繁に声をかけられる。
「パーキングはしょっちゅうですね。懐かしいですね、みたいな感じで。普通に一般道走っていて、交差点で止まった時にバイクのおじさんが『古い車乗ってるね~』と声かけてくることもあります。この車自体が本当走ってないので、本当に珍しがられています」
小学生の時に刻まれた記憶が40年の年月を経て、オーナーの人生を変えた。岩本さんはガソリン尽きるまで相棒に乗り続けていく。