「このクルマと共に老いていく」 33年間ワンオーナーの愛車人生、始まりは必死に貯めた頭金100万円

スーパーカーブームに憧れた少年が大人になり、就職して頑張って貯めたお金で愛車を買い、結婚、子育て。人生にはいつも、「相棒」が一緒に走ってくれた。1991年式の真っ赤な日産・180SX。33年間、ワンオーナーで乗り続ける50代会男性会社員の愛車物語には、文字通り“クルマ愛”があふれている。

1991年式の日産・180SXは33年間ワンオーナーで健在だ【写真:ENCOUNT編集部】
1991年式の日産・180SXは33年間ワンオーナーで健在だ【写真:ENCOUNT編集部】

「僕の若い頃は『就職したらクルマを買う』が定番でした」

 スーパーカーブームに憧れた少年が大人になり、就職して頑張って貯めたお金で愛車を買い、結婚、子育て。人生にはいつも、「相棒」が一緒に走ってくれた。1991年式の真っ赤な日産・180SX。33年間、ワンオーナーで乗り続ける50代会男性会社員の愛車物語には、文字通り“クルマ愛”があふれている。

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 小さい頃からクルマに熱中してきた。就職して1年目は必死に頭金100万円を貯めて、社会人2年目になって当時新車のこの180SXを手に入れた。「日産車が大好きで、リトラクタブル・ヘッドライトにずっとあこがれを抱いていました。当時はシルビアも人気でしたが、後ろのハッチバックのデザインも気に入っていたので、180SXに決めました。ボディーカラーですか? フェラーリやランボルギーニをイメージさせる明るい赤。やっぱりこれですよね」。

 自分のモノが手に入ったぞ――。うれしさが止まらなかった。当時を思い出すと、自然と笑みがこぼれる。

「僕の若い頃は『就職したらクルマを買う』が定番でした。それに、“走り屋”なんて言葉がはやりました。僕も走るのが好きで、サーキットを走ったり、峠を攻めたり……。今は維持を大事にしていますが、当時はよく走りに出ていました」。

 実はエンジンは3基目だ。ちょっぴり“やんちゃ”な過去の思い出がある。

「25歳ぐらいの時かな。楽しいドライブから帰ってきたら、アイドリングの音がずいぶんにぎやかで、『あれ』っとなって。当時は若くて知識もノウハウもなく、エンジンに負荷をかけ過ぎていたんです」。最初のエンジンが故障してしまった。

 20代後半。夢中になって筑波サーキットに通っていた頃のことだ。仲間とタイムレースを楽しんでいたら、思わぬ事態に見舞われた。

「サーキットを走っていると、後方から白煙が上がったんです。『誰がトラブルを起こしているんだろう』と思って。実は僕でした(笑)。エンジンブローになってしまい、マフラーから煙が出ていたんです。無理に回しちゃったんですね」。懐かしそうに振り返る。

 妻がまだ彼女だった頃はドライブデートで青春のメモリーをたくさん作った。

 結婚して、子どもが生まれると、当然ながら優先順位は「家族」に変わっていった。「僕も大人になりました(笑)。金銭的な面を考慮すると、もし次に壊れたらもうないな、ということです。そこからは、『どう維持するか』の意識が強くなっていきました」。

 ミニバンタイプのファミリーカーも持っている。それでも、息子は幼少期は「これに乗りたい」とパパ自慢の真っ赤な1台に乗って楽しんだ。親子でカーレースを観戦しに行き、カーイベントにも一緒に行った。「子どもと共に、このクルマも育ってきたんだな。そう思っています」と実感を込める。

「息子は免許合宿の都合上、オートマの免許を取ったので、このクルマは今は運転できません。それに、妻も今は『乗り心地が悪い』なんて言ってミニバンしか乗ってくれません(笑)」。そう言ってちょっと苦笑いだが、家族で培ってきた思い出を共有している。一家にとって大事なクルマであることに変わりはない。

「息子もちっちゃい頃に『これがいい』と乗ってくれた」 家族の思い出が凝縮

 自分流のこだわりを加え続けてきた。とりわけ外装はオリジナリティーを追求。フロントバンパー、リアスポイラー、タイヤは17インチ、車高調はちょっと下げている。海外部品という『200SX』のテールランプも印象的だ。30年以上かけて、しっくりくる自分流のスタイルを築き上げた。

 2年前にオールペン(全塗装)して、さらなる磨きがかかった人生の相棒。リタイア後のドライブ人生を想像するのも楽しみの1つだ。これからは180SX・シルビア仲間とのツーリングを重ねていくことにも夢を描いており、「季節季節で長野のビーナスラインを流していくと、本当に気持ちいいんですよ。今はもう峠には行きませんが、遠出ドライブを楽しんでいきたいですね」と目を輝かせる。

 旧車分野の維持管理の大変さも痛感。「日産さんはスカイラインGT-Rの部品は出してくれるのですが、それ以外の昔のクルマは純正品があまりないので、もっと出していただけたらうれしいなと思っています」。整備を怠らず、ずっと乗っていく覚悟はできている。

「30年以上乗ってきて、浮気したい気持ちと言いますか、別のクルマに心揺れたこともありました。でも、愛着と言いますか、息子もちっちゃい頃に『これがいい』と乗ってくれた、その情景が思い出されて。もうこのクルマは家族の一員なので、ずっと乗っていこうと、考え直したんです。このクルマと共に老いていこうと思います」。愛車を誇らしげに、いとおしそうに見つめた。

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