RIZINのクラウドファンディングで見えたもの プロモーターには受難の時代か!?

RIZINが9日、都内ホテルで記者会見を開き、来る8月9、10日の2日間、新設されたぴあアリーナMMで開催される「RIZIN.22」「23」の第1弾対戦カードを発表。その席で、榊原信行CEOは、7日に開設したクラウドファンディングでの支援を呼びかけた。しかし、数日前に開設したとはいえ、現在、目標金額である5000万円には遥かに及ばない金額だ。さらに注目の朝倉未来はヒジをケガして「8月は試合をしません」との声明を発表した。

9日に開催したRIZINの記者会見【写真:“Show”大谷泰顕】
9日に開催したRIZINの記者会見【写真:“Show”大谷泰顕】

RIZINのクラウドファンディングから見えたもの (後編)

 RIZINが9日、都内ホテルで記者会見を開き、来る8月9、10日の2日間、新設されたぴあアリーナMMで開催される「RIZIN.22」「23」の第1弾対戦カードを発表。その席で、榊原信行CEOは、7日に開設したクラウドファンディングでの支援を呼びかけた。しかし、数日前に開設したとはいえ、現在、目標金額である5000万円には遥かに及ばない金額だ。さらに注目の朝倉未来はヒジをケガして「8月は試合をしません」との声明を発表した。

 クラウドファンディングをスタートさせた以上、平身低頭、真実を語っていくのが最善策だ。しかし、その最善策がなぜ取りにくいのか。あえてRIZIN側に立って弁明するなら、榊原CEOのプロモーターという職業の性格が関係しているのだろうと推察する。

 そもそもプロモーターという職業は、ファイター(もしくは出演者)に満足なファイトマネー(ギャラ)を払うこと。簡単に言えばこの役割が達成できるからこそ、プロモーターはファイターに対し、いわばデカい面をすることができる。ファイターからすれば、カネの払えないプロモーターに価値を感じるほうがおかしな話。だからこそ、榊原CEOも「皆さんの支援を」と呼びかけはしたが、真っ当なプロモーターらしい雰囲気だけは残しておきたいという意識が働くのだろう。なぜなら支払いの悪いイメージを持たれては、いざとなった時にファイターと交渉しにくくなるからだ。

 結果的に現在のような曖昧に見えるような状況に陥ってしまう。まさにプロモーターにとっては受難の時代である。そんな状況をどこまで把握しているのか、この日の会見に出席したファイターは誰もそこは触れない。いや、実際には1人だけ、「RIZIN.22」でホベルト・サトシ・ソウザとの対戦が決まった矢地祐介だけがこの件に触れていた。矢地は、サトシとの対決にテンションが上がることを口にした後、多少の苦笑いを浮かべながら支援を呼びかけた。

「あと、クラウドファンディング。もしかしたら僕らにも影響があるかもしれないんで、是非、支援をよろしくお願いします。以上です」

 ここまで書いたところで、実際に今回のクラファン特設サイトを開くと、例えば今回のクラファンには、支援金100万円で榊原CEOとオンラインで90分間の話ができるディナーコースがある。オフ会ならまだしもオンラインとなると、およそ一般常識では考えにくい価格設定である。だが仮の話、それに見合う中味のある秘蔵話を榊原CEOが披露するのであれば、それはそれで聞いてみたい方もいるのかな、と考えた。

 この際、常識は関係ない。その価格が適正だと思った人物が存在するならその金額は成立する。サイト上には「寄付する」の文字もあることから日本人には馴染みは薄いが、「寄付」を前提にした話である。「寄付」とは本来個人の責任の下、無償で行うもの。その認識があれば、あとは個人の問題ではないかと考える。

 また、個人的にどうしてもRIZINには継承してもらいたいことがある。それは何かといえば「歴史」である。榊原CEOは7日にウェブ会見を行った際、「戦後、第二次世界大戦と言っても今の20代には届かないかもしれないけど」と前置きしながら、戦後の復興を力道山がプロレスで引っ張り、その際のテレビ視聴率が60%を超えていたこと。さらにはその弟子であるアントニオ猪木が時のプロボクシング世界ヘビー級王者のモハメド・アリと「格闘技世界一決定戦」を戦い、その弟子の高田延彦がヒクソン・グレイシーとの戦いに挑み……と、そうした世間を巻き込むような戦いが、常に日本全国のみならず、世界中を虜にする魅力を発してきた、と口にしていた。そして「僕はそういうものをもう1回つくりたい」と続けたのである。この発言には榊原CEOの気概を感ぜずにはいられなかった。

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