「もっと規制を厳しくしろ」酒はタバコに比べゆるい? データで見る社会的影響&驚きの“新指標”

時代の移り変わりとともに規制が厳しくなっているタバコ。定期的に喫煙をめぐるトラブルがネット上で話題となるが、必ずといっていいほど同じ“嗜好品”である酒について「もっと規制を厳しくしろ」といった声があがる。たしかに酒はタバコに比べ、世間の風当たりも含めやや“ゆるい”印象がある。しかし、飲酒についても今年“動き”があるかもしれない。

たびたび比較される酒とタバコ(写真はイメージ)【写真:写真AC】
たびたび比較される酒とタバコ(写真はイメージ)【写真:写真AC】

タバコと酒が及ぼす身体的、社会的影響とは

 時代の移り変わりとともに規制が厳しくなっているタバコ。定期的に喫煙をめぐるトラブルがネット上で話題となるが、必ずといっていいほど同じ“嗜好品”である酒について「もっと規制を厳しくしろ」といった声があがる。たしかに酒はタバコに比べ、世間の風当たりも含めやや“ゆるい”印象がある。しかし、飲酒についても今年“動き”があるかもしれない。

軽トラからセンチュリー、バイクにバギー…大御所タレントの仰天愛車遍歴(JAF Mate Onlineへ)

 そもそもなぜタバコの話題で酒が登場するのか。そこには“嗜好品”以外にもいくつか共通点があることが関係している。

 まずタバコに対する批判の声として代表的なものに「臭い」「依存性」「他人への健康被害」「将来的に医療の世話になる可能性が上がり、非喫煙者より税金を使う」などがある。そして酒も場合によっては他人への迷惑、健康被害が発生するため、話題にあがるようだ。

 では実際どれほど影響があるのか。タバコ、酒が及ぼす影響について考える1つの参考指標として、厚生労働省が公表しているデータを見ていく。

 まずはタバコから。あくまでも厚生労働省の統計によるものだが、喫煙による年間死亡者数は12~13万人、受動喫煙による年間死亡者数は約1万5000人(脳卒中を含む。2012年公表の肺がん、虚血性心疾患のみのデータでは6800人)とされている。また、年間の超過医療費1兆7000万円、入院・死亡による労働力損失2兆3000万円といった経済損失に関する記載もあり、タバコ税収2兆円を上回る格好となっている。

 酒についても「多飲がさまざまながん等の疾患や自殺等のリスクを高める」としており、特に発症頻度の高い代表的な臓器障害として「アルコール性肝疾患」をあげている。肝疾患全体の死亡数は減少傾向にあるが、アルコール性肝疾患の死亡数は、1996年に2403人であったものが、2019年には5480人と増加。アルコール依存症の総患者数は、約4万人前後で推移している。

 さらに、アルコールが心身への影響のみならず、多くの社会問題との関連を示す例として、飲酒運転で検挙された者のうち、3割程度の者にアルコール依存症の疑いがあったこと、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律の保護命令違反者を対象に行われた研究で、飲酒に関する問題を有していた者が約4割であったことなどを紹介。社会的損失は年間4兆円で、約1~1兆5000万円ほどの酒税収入を大きく上回っていることも明かしている。

 また、警察庁の発表では飲酒運転の死亡事故率は、飲酒なしの約6.1倍。昨年の飲酒運転による交通事故件数は2346件、そのうち死亡事故件数は112件だった。

 そして今年2月、厚生労働省は新たに「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を発表。飲酒による身体等への影響について、年齢・性別・体質等による違いや、飲酒による疾病・行動に関するリスクなどを詳細に記している。

男女でリスクとなるアルコール量に違い

 なかでも話題を呼んだのが「生活習慣病のリスクを高める純アルコール摂取量」。酒に含まれる純アルコール量は摂取量(ミリリットル)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)で表すことができ、1日当たり、男性40グラム、女性20グラム以上で“リスクが高まる”と示された。ビールのロング缶(500ミリリットル/5%)で純アルコール量が20グラム(500×0.05×0.8)であることから、女性の場合、ロング缶1本でリスクが高まるというから驚きだ。

 男女でリスクとなる量が違う理由については「女性は、一般的に、男性と比較して体内の水分量が少なく、分解できるアルコール量も男性に比べて少ないことや、エストロゲン(女性ホルモンの一種)等のはたらきにより、アルコールの影響を受けやすいことが知られています。このため、女性は、男性に比べて少ない量かつ短い期間での飲酒でアルコール関連肝硬変になる場合があるなど、アルコールによる身体への影響が大きく現れる可能性もあります」と説明している。

 また、高齢者もアルコールの影響を受けやすいようで「若い時と比べて、体内の水分量の減少等で同じ量のアルコールでも酔いやすくなり、飲酒量が一定量を超えると認知症の発症の可能性が高まります。あわせて、飲酒による転倒・骨折、筋肉の減少(サルコペニア)の危険性が高まります」としている。

 今年開始予定の国民健康づくり運動「健康日本 21」(第三次)では、生活習慣病のリスクを高める量(男性40、女性20グラム以上)を飲酒している人の減少を目標としており、ネット上では「お酒にも何かしら規制が入るのだろうか…」「タバコの次はお酒…次は何を規制するの?」「コンビニやスーパーで買えなくなったりする?」「飲み放題とかなくなりそう」といった具体的な変化を懸念する声があがっていた。

 その一方で、「妥当」「海外みたいに公共の場所で飲んではいけないという法律を早く作ったほうがいい」「タバコばかり目の敵にされてるの違和感あったから規制していい」「酒のせいにするやっかいな人もいるから歓迎」「タバコ並にアルコールにはデカデカ注意書きが書かれるべき」といった規制に肯定的な意見も見られた。

 共通点からたびたび比較されてきたタバコとお酒。どちらも法で認められた嗜好品であり、楽しむ権利は誰にでもあるだろう。しかし、今回紹介した厚生労働省のデータが必ずしも公平で正しいものとは限らないが、“楽しみ方”次第では他人に迷惑をかけることがあるのも事実。どちらが“悪”かという議論が巻き起こることもしばしばだが、これ以上規制されないために何ができるのかという議論も必要かもしれない。

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください