日テレ『セクシー田中さん』問題 脚本家のSNS投稿、故芦原妃名子さんのブログ投稿の意志を知るも「止められず」

日本テレビは31日、企業公式サイトを更新し、昨年10月期の同局系ドラマ『セクシー田中さん』の原作者で漫画家・芦原妃名子さん(享年50)の訃報に関連して設置した社内特別調査チームの調査結果を報告した。90ページに及ぶ報告書では、芦原さんが脚本家に不信感を抱き、降板を要求。9、10話の脚本を自らが書き、脚本家が「脚本協力」で自身の名前をクレジットで入れるよう求めたことも拒否した対立構造などが示された。

日本テレビ【写真:ENCOUNT編集部】
日本テレビ【写真:ENCOUNT編集部】

90ページに及ぶ調査報告書を公開

 日本テレビは31日、企業公式サイトを更新し、昨年10月期の同局系ドラマ『セクシー田中さん』の原作者で漫画家・芦原妃名子さん(享年50)の訃報に関連して設置した社内特別調査チームの調査結果を報告した。90ページに及ぶ報告書では、芦原さんが脚本家に不信感を抱き、降板を要求。9、10話の脚本を自らが書き、脚本家が「脚本協力」で自身の名前をクレジットで入れるよう求めたことも拒否した対立構造などが示された。

 報告書で示された「本件の分析・検証」では、芦原さんが脚本家、制作者側に不信感を抱く経緯などが記された。その理由は「個別の改変ポイントに対する説明に足りないところがあった」「撮影現場で発生したリテイク(撮り直し)をめぐる制作サイドの対応が本件原作者の印象を悪くしてしまった」などとしている。

 そして、芦原さんの要求を受け入れ、日本テレビは脚本家を8話限りで降板させた。9、10話は芦原さんが自ら脚本を執筆することになったが、これらの日本テレビの判断については、「原作契約が未締結であったことが不安視されたという側面もあった」としている(原作者の意向を無視した格好になれば、本件原作者から最終的な原作利用許諾は未締結であるとして、地上波放送(9、10話)の差し止めがなされるなどのリスクは否定できないとの見解)。

 一方で脚本家は日本テレビからの強い説得を受けてやむを得ず降板を受け入れたが、「せめて9、10話に自分が関与したことを示すクレジットを入れるように」と要望。しかし、理由は「脚本家のクレジット表記を認めないという原作者の意向に従わざるを得なかったとみられる」としている。

 その上で脚本家はこれに納得できず、SNS投稿につながったことを明記。現実に脚本家は、最終回(第10話)放送日の昨年12月24日にSNSで「最後は脚本も書きたいという原作者たっての要望があり」「残念ながら急きょ協力という形で携わることとなりました」などと投稿。同28日には「最終的に9・10話を書いたのは原作者です」などと記していた。

 報告書によると、日本テレビ側は同12月6日、脚本家と面会した際、本人から事の経緯についてSNSに投稿することを示唆され、「SNSなどで制作の裏側を書くのは適切ではない」と思ったものの、「脚本家個人のSNSにおける投稿については個人の表現の自由もあり、日本テレビが無理に投稿を制限することはリスクがあると考え、当該投稿を止めるよう依頼することはしなかった」としている。

 そして、芦原さんについては「脚本家の投稿による世間の反応を気にしてブログなどへの投稿を行ったとみられる」と推測。現実に芦原さんは今年1月26日までに、Xアカウントを開設し、ブログやXに「私が9話・10話の脚本を書かざるを得ないと判断するに至った」などと記していた。

 報告書ではこの時の状況について、23年12月25日に芦原さんが関係者と会食をした際に、「(ドラマ制作者が)最初から改変ありきで進めていたのではないか」「1話から8話までは自分が大変な思いをして修正したものであるのに脚本家の手柄にされており、自分が脚本として作った9、10話が駄作と言われているのが許せない」とする趣旨の発言をしていたと明かされた。

 芦原さんが亡くなる直前に行ったブログ投稿について、昨年12月下旬、思いをつづった脚本家のSNSでの投稿を見て「事実と違うため、原作者から見た事実を伝えたいのでブログを投稿したい」という趣旨の発言を関係者にしていたという。その後、投稿内容は事前にドラマ制作関係者も確認したが、日本テレビ関係者は「事実と異なる点がある」と考えたが、投稿は止められなかったとしている。

 また、芦原さんは遺体で発見される5日前の1月24日に関係者に会った際、「漫画『セクシー田中さん』はまだまだ続く、脚本家とのトラブルについては小学館と対応を進めている」といった趣旨の発言をしていたといい、ブログ投稿後には関係者とのグループLINEに「こんな騒ぎにしてしまって申し訳ありません」ともつづっていたという。関係者が「謝ることはないですよ、言いたいことがやっと言えてよかったですね」とメッセージを送ると「ありがとうございます」と反応したという。

 その後、芦原さんはグループLINEのメッセージを全て削除した。同28日にXに「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」と投稿後、ブログ、Xの投稿を全て削除。そして、同29日に栃木県内で遺体となって発見された。

 報告書によると、同調査は2月23日から5月30日まで行い、脚本家やプロデューサーら社内外の関係者計39人への聞き取り調査(書面回答含む)の他、その他関係者77人へのアンケート調査も行ったとしている。

<日本テレビ 石澤顕代表取締役社長執行役員のコメント>

 日本テレビが放送したドラマ「セクシー田中さん」の原作者である芦原妃名子さんに対し心より哀悼の意を表するとともに、ご遺族の皆様にお悔やみ申し上げます。

 日本テレビは、今回の事態を重く受け止め、客観的な視点で経緯と問題点の分析・検証を行うため、外部の有識者を入れた調査を行ってまいりました。小学館はじめ、この調査にご協力いただきました皆様に感謝申し上げます。

 調査チームがおよそ90ページにおよぶ報告書をまとめました。

 この調査の中でも、改めて芦原さんがまさに心血を注いで原作「セクシー田中さん」を作り上げ、そして、ドラマ制作に向き合っていただいたことを実感いたしました。

 また脚本家の方は素晴らしいドラマを作るため、力を尽くしていただきました。

 このドラマの制作に携わっていただいた全ての方々に、心より感謝申し上げます。

 一方で、ドラマの制作に携わる関係者や視聴者の皆様を不安な気持ちにさせてしまったことについて、お詫び申し上げます。

 この調査報告からドラマ制作者側と原作者側のお互いの認識の違い、そこから生じているミスコミュニケーション、ドラマの制作スケジュールや制作体制、契約書の締結時期など、今後日本テレビとしてさらに厳しく取り組まなければならない点が見つかりました。

 日本テレビとしては、指摘された課題についてテレビドラマに関わる全ての方が、より安心して制作できるよう、責任をもって取り組んでまいります。今後も見守っていただきたいと思います。

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