「性器を見られるのが恥ずかしいわけではない」 元AV女優・澁谷果歩が明かす無修正流出訴訟の背景
昨年2月、無修正アダルト動画をネット上に流出させたとして、元セクシー女優でタレントの澁谷果歩さんが制作会社などに損害賠償を求める訴えを起こした。無修正動画の流出は業界内で度々問題となっている一方、これまで表立って訴訟に発展したケースはほとんどないとされている。今回、なぜ訴訟に踏み切ったのか。澁谷さんに一連の経緯とAV業界の今後について聞いた。
無修正アダルト動画のネット流出を受け、制作会社などを相手に損害賠償を求め訴訟
昨年2月、無修正アダルト動画をネット上に流出させたとして、元セクシー女優でタレントの澁谷果歩さんが制作会社などに損害賠償を求める訴えを起こした。無修正動画の流出は業界内で度々問題となっている一方、これまで表立って訴訟に発展したケースはほとんどないとされている。今回、なぜ訴訟に踏み切ったのか。澁谷さんに一連の経緯とAV業界の今後について聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
澁谷さんは青山学院大卒でTOEIC満点という英語力の持ち主。元東京スポーツ記者という肩書きも相まって、デビュー時には大きな話題を呼んだ。デビュー4年後の2018年、「仕事のマンネリ」を理由にAV女優を引退。現在は作家や声優業、コスプレイヤーやゲーム実況の配信など、マルチにタレント活動を行っている。
今回の訴訟は、16年に撮影され17年頃から販売された自身が出演するAV2作品について、無修正映像がインターネット動画サイトに投稿されていたとして、制作会社などに対し計740万円の損害賠償を求めたもの。映像は編集前のもので、市販品には収録されていない編集前シーンなども含まれることから、制作段階の映像が何らかの理由でネット上に流出したものと見られている。
「無修正動画の流出はこれまでにも何度か起こっていた問題ですが、現役の女優は業界内で干されるリスクがあったり、すでに引退している人でも事を荒立てて現在の生活に支障を出したくないという理由から、泣き寝入りを強いられてきた現状があります。ある意味野放し、やられ損という状況の中で、以前から私自身がもし当事者になることがあれば、絶対に行動を起こそうと決めていた。誰かが動かないといけない、これは自分にしかできないことかもしれないと」と訴訟の理由を語った。
740万円という賠償金額については、「当該作品の私のギャラが28万円で、当時の所属事務所の取り分が仮に折半だったとして56万円、その10倍の金額に、裁判費用を上乗せして決めました。金額について『安すぎるのでは』という声もありますが、お金目当てではなく業界が変わるきっかけになればと思っての設定。前例がないことなので、適正だったのかという葛藤は今もあります」と算出の過程を明かす。
解決金は受け取らない一方、業界としての態度を示すことで和解
流出した元データはカメラマン、監督、メーカー、編集会社の4者が所有しており、そのいずれかから流出したものと見られるが、流出経路は依然として判明しておらず、4者のどこから漏れたかが分からない以上、法的責任を問うのも難しいというのが現状だ。あらためて訴訟の焦点について、澁谷さんは「性器を見られるのが恥ずかしいというわけではまったくない」と強調する。
「日本の法律では、モザイクの有無が適法か違法かの線引きになっています。無修正動画が流出するということは、女優が違法行為に加担していると取られる可能性があるということ。実際に、過去にはそれで逮捕された女優もいました。私自身、裸を見せることに誇りを持って仕事をしてきたので、今更性器を見られたから恥ずかしいということはありません。あくまで日本の方の枠組みの中で、違法行為に加担したと思われるのが心外だということ。例えば仮に、これを機に法改正でモザイクがなくなるなら、私はそれはそれで構わないとも思っています」
4者とはその後、和解条項が決定。原告(澁谷さん)が解決金を受け取らないかわりに口外禁止の要望は受け付けず、被告側は「流出への遺憾の意を表す」「今後漏えい事故の防止に努める」ことを約束してもらうことで合意したという。
「解決金はありませんが、どちらにしろ裁判費用を差し引いたらマイナスになる程度の金額。最初からお金でなく、業界としての態度を示していただくことが目的だったので、これでやっと一区切りというところ。本当は流出の裏ルートまで分かればよかったんですが、それでも今回の裁判をきっかけに、長年放置されてきた流出問題に一定の歯止めはかけられると思う。もともと閉鎖的な業界でしたが、私の引退後にAV新法が成立して、今では透明性も生まれ、業界で常識とされてきたことが世間では非常識だったということが浸透してきていると思います。私のような人間が声をあげることで、業界がより健全なものになっていくことを願っています」
さらなる業界健全化の契機となるか。