出馬の石丸市長に「東京を舐めるな」で大炎上 都民ファ幹事長「東京の解体」「弱体化」発言への反論

7月の東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)に立候補の意向を示した広島・安芸高田(あきたかた)市の石丸伸二市長に「東京を舐めるな」と毒ガスを噴射したのが、都民ファーストの会幹事長で東京都議会議員の尾島紘平氏だ。尾島氏のもとには批判が相次ぎ、投稿は大炎上した。いったい、尾島氏の投稿の真意はどこにあったのか。本人を直撃した。

都民ファーストの会幹事長で東京都議の尾島紘平氏【写真:ENCOUNT編集部】
都民ファーストの会幹事長で東京都議の尾島紘平氏【写真:ENCOUNT編集部】

「ネットでバズっただけの人物がノリで挑戦すべきものではない」

 7月の東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)に立候補の意向を示した広島・安芸高田(あきたかた)市の石丸伸二市長に「東京を舐めるな」と毒ガスを噴射したのが、都民ファーストの会幹事長で東京都議会議員の尾島紘平氏だ。尾島氏のもとには批判が相次ぎ、投稿は大炎上した。いったい、尾島氏の投稿の真意はどこにあったのか。本人を直撃した。

「石丸さんのおっしゃるように東京を弱体化させて地方が発展するというのは、そもそもそんなロジックはないと思うんですよ。それをやろうとする人が、しかも都知事になろうと出てくる。東京からお金を奪ってでも地元を潤わせるということを地方の首長(道府県知事・市区町村長)さんが言うのはいいんですけど、都知事がそういうことを言い出したら、東京の弱体化というのが本当に実現されてしまったら、この国は滅びるんじゃないかと私は思っています」

 尾島氏は賛否を呼んだ投稿について真意をこう説明した。

 話題になったXへの投稿は、5月18日のことだった。

「石丸市長の出馬についてはノーコメントでしたが、あまりに聞かれるので申し上げます。政策や政治的スタンス含め、共感できるところはありません。そもそも東京都知事は、ネットでバズっただけの人物がノリで挑戦すべきものではない。都議会が受け入れることもないでしょう。東京を舐めるな。以上です」

 投稿は1.3万件の“いいね”、3900件超のリポストなど大きな注目を集める一方で、「まるで東京の方が上のようなニュアンス」「あなたこそ地方の政治家を舐めてるんですか?」「安芸高田市の老害議員と同じ発想のようで残念です」「この発言により、数千票は石丸さんに流れたのではないでしょうか」など厳しい意見が相次いだ。

「都議会が受け入れることもない」という断定的な口調から、まるで都議会が地方からの挑戦者に門戸を閉ざしているかのような印象を与えた。都民ファーストの会は小池百合子都知事が特別顧問を務めており、よくも悪くも投稿の影響は大きかった。

 いったい、目的は何だったのか。

 尾島氏はXが文字数が限られているため、すべてを伝えることができなかったと前置きしつつ、投稿の意図について口を開いた。

 石丸氏のことは、ネットでの発言で知ったという尾島氏。今後、日本の人口減少により、多くの地方の自治体が消滅に向かっていることに強い危機感を募らせる石丸氏は、「僕が本当にやってほしいことは、東京の解体です」「言葉は悪いですけど、東京を弱体化させる」などとYouTubeで発言。米国のニューヨークとワシントン、ブラジルのサンパウロとブラジリアのような関係を引き合いに、一極集中に異を唱えている。また、かつて大阪都構想を主導した元大阪市長で弁護士の橋下徹氏を「尊敬している」と明かしている。

 地方の活性化という点では同意していると尾島氏は主張。ただ、「東京の弱体化」「解体」というワードには真っ向から反論する。

「政府がずっと進めようとしてきた地方創生は、格差是正の名のもと、東京いじめみたいなことをしていると私は受け止めています。結局それをやっても都民益には全然ならないですよね。まずは都民、東京都内のサービスに充てられるべき財源。それが国の旗振りのもと地方に移譲されてしまう。これ自体極めて不合理なことだと思っているんですけど、それと石丸さんの言っていることが一緒なんじゃないかなと思いました」と指摘した。

 行政サービスの地域間格差の解消のため、東京から税源を吸い上げる動きは加速している。ふるさと納税制度一つをとっても東京は財源流出に頭を痛めている。昨年度の減収額は675億円と過去最多を更新した。

 尾島氏は、逆に今、進むべき方向性は東京が力を維持していくことだとし、「日本という国のその稼ぎ頭たる東京がしっかり力をつけて、稼いでいく。一極集中はそんなにいいことだとは思わないですけど、現実的に今はそれでいくしかないし、こうやって円安、物価高で日本の一人負けみたいなことになっている状況下において、少なくとも(東京の弱体化などは)やるべきことじゃないんじゃないのということですね。東京をたたいても地方が上がってくるわけじゃないと思います」と続けた。

 一時1ドル160円まで達するほどの歴史的な円安で、国力の急速な低下が叫ばれている。「東京の弱体化」を推進し、多極分散を実現しても、そもそも地方の活性化に直結するとは限らず、各自治体の魅力向上を含めた複合的な改革が必要だと訴えた。

「東京は金持ってるじゃねえかと。だから地方に配って全国で等しく発展していくんだみたいな主張をされる方がいるんですけど、今までも税源を収奪されて、1兆円を奪われてしまっていることもあるんですね。私自身、大阪出身ですから地方分権には賛成なんですけど、人、物、金を一緒に移動させないと地方創生にはならないと思っています」

投稿の表現には反省 家族には脅迫「ちょっときつかったです」

 また、尾島氏は石丸氏の首長としての手腕にも疑問を投げかける。

「もう1つの石丸市長の大きな性質として、対立をとにかくあおるということだと思います。これは基本スタンスからちょっと違うんじゃないのって思いますね。二元代表制において首長と議会がまずあるわけじゃないですか。これは車の両輪だと私は思っています。慣れ合いとかがあってはいけないですし、常に緊張関係にあるんですけど、ここの連携協力によって安芸高田市で言えば市政、東京都で言えば都政を回している」

 石丸市長はXを通じて積極的に情報発信を行い、議会との衝突がたびたびクローズアップされた。

「うまく議会を回すことも含めて、首長の責任なんです。石丸市長はスクラップは得意なんだと思いますよ。というか、もうぶっ壊したと思います。で、全く空転ですよね。少なくとも市議会空転の状態を作り出して、ビルドができない。スクラップも程度があって、議会と修復不可能な関係になっちゃうと、もうその首長は機能しないんですよ。安芸高田って修復不可能じゃないですか。個人攻撃もあって裁判になったりして、あれはどこの自治体に行っても通用しないと思いますよ」

 安芸高田市の人口は、2万6000人あまり。独自の手法で話題にはなったが、結果を出しているとは言いがたいという。

「石丸市長の場合は、そりゃ怒るわということをあおって、怒らせて、その様子をまた世の中に向けて発信する。それが安芸高田の市民益にかなっているとは、前から私は思っていないんですよ。石丸市長だって副市長人事とかいろんなものをやろうとして、全部議会に止められちゃっているんですね。自分のやりたいことが議会に攻撃を加え続けたことによって実現できていないわけですよね。そして、この先の努力がない。例えば、夜に市議会の先生方のところに行ってみたりとか、あるいはコミュニケーションを図ったりしてこれなんとかなりませんかみたいなことをやるのも含めて、首長の責任なんですよ。そこを一切やらずに闘ってけちょんけちょんに言って、しかも切り取っているんですよね。それを東京でやるのかって。そんなの絶対許さないよということです」と語気を強めた。

 一方、今回、投稿が炎上してしまったことには自戒もしている。

「言葉が強すぎたかなと。そこは反省点ですね。若い人の挑戦を頭ごなしに否定しているのではないかとか、これから選挙に挑戦しようとしている人の可能性自体、芽を摘もうとしているんじゃないかみたいな気は全くないんですけど、もうちょっとうまく表現できたかなっていうのは後から考えれば思います」

 個人事務所には数件の抗議の電話やメールが届いた。また、家族への脅迫もあった。「ネガティブな意見が8割ぐらい」と受け止めている。「きつかったのは、家族のことについて言われることですよね。家族への脅迫をちらつかせて人の言論を変えようとしてくる人もいるので、それはちょっときつかったです」。実は尾島氏は現在育休中。子どもの写真をSNSに上げるなど、子煩悩な一面も見せていた。しかし、この騒動では裏目となり、攻撃の対象となってしまった。

 ただ、主張を変えるつもりはない。「ネットにおいてはまさに炎上ですよね。ですが、リアルにおいてはそれが逆転します。よく言ってくれました、間違ったことは言っていないという連絡を個別にたくさんいただいています」と付け加えた。

語った都知事選の展望「東京都がまず強くならなきゃいけない」

 都知事選には、石丸氏のほか、立憲民主党の蓮舫参院議員も出馬を表明。3選を目指す小池氏も立候補が有力視される。選挙の展望については、どう思っているのか。

 尾島氏は「都民ファーストな知事がなってくれること、ですね」ときっぱり。

「これ、大きな大きな論点なんですよ。例えばXでもちょっと触れましたけど、東京って全国知事会とかで1人だけつるし上げに遭うんですよね。1対46なんですよ。で、袋だたきに遭ってということを小池さんはずっとやっているわけですけど、この1が46側に回ったら終わりですよね。1400万都民の利益を逸してしまう。東京都としては別に東京対地方と思っていなくて、テーマは地方との共存共栄なんですよ。なんですけど、そのためにも東京都がまず強くならなきゃいけない。(小池氏は)強い東京を目指していける人だと思います。今、事実として東京都に政官財が集中していますし、富も集中していますけれども、これを少なくとも悪いこととして、東京都の力を弱まわらせようというのはあってはならない。都知事はそれやっちゃいけないと思います」と結んだ。

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