永瀬正敏「ジレンマや相当なストレスを抱えた」…幻の名作「二人ノ世界」への壮絶覚悟
学生の熱意に引っ張られた「そのままプロの現場に出てもおかしくない」
――撮影は2014年3月、2週間弱。あまり長くはない撮影期間であっても、主人公2人が人々で賑わう祭りに出かけて、身動きが取れなくなる、という大掛かりなシーンもありましたね。
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「祭りのシーンは学生たちがエキストラを集めて、テキヤさんに交渉して、出てもらっているんです。学生たちはリサーチから準備を含めて、そのままプロの現場に出てもおかしくないと感じました。それでも、人数が足りているわけではないので、1人が何役もこなしているんです。ちょうど卒業の時期だったので、どうしても出なければならない授業があったりで、『人がいません』という数日間もあったのですが、スケジュールをやりくりしながら、監督含め卒業生たちで埋めて、その期間はミニマムでもできるシーンをスケジュールに組み込んでやっていました。そんな学生たちに僕が引っ張られた部分もありました。大したものですよ」
――相手役の土居志央梨さんとは「彌勒 MIROKU」でも共演されています。今や、プロの女優として活躍されていますが、共演していかがでしたか?
「女優として目指すところがはっきりしている人です。監督に対しても、自分の意見をしっかり言うし、僕より早い段階から視覚障害を持った方々とお会いして、リサーチをして、役作りをされていました。彼女は目が不自由な役でしたけども、たばこを吸うシーンでは、どう吸えばいいのか? などちょっとでも自分が疑問に思ったところは、ちゃんとリサーチをして、それを役に反映させていました。今はプロの女優として、活躍されていますけども、当時から片鱗はありました。とても素晴らしかったですよ」
――ヒロインに髪を切ってもらうシーンはとても印象深いです。あれはカツラではなく、実際に切っている?
「自分の髪です。髪を切ったり、ひげを伸ばしたり、切るくらい、なんでもないですよ(笑)。また、生えてきますからね(笑)」
(後編に続く)
□永瀬正敏(ながせ・まさとし)1966年7月15日生まれ、宮崎県出身。相米慎二監督「ションベン・ライダー」でデビュー。「ミステリー・トレイン」、「息子」など国内外の100本以上の作品に出演し、数々の賞を受賞。台湾映画「KANO~1931海の向こうの甲子園~」では、金馬映画祭で中華圏以外の俳優で主演男優賞に初めてノミネートされた。「あん」、「パターソン」、「光」ではカンヌ国際映画祭に3年連続で公式選出された初の日本人俳優となった。近年の主な出演作に「64-ロクヨン-前編/後編」、「Vision」、「パンク侍、斬られて候」、「赤い雪 Red Snow」、「ある船頭の話」、「カツベン!」などがある。また、写真家としても多数の個展を開き、20年以上のキャリアがある。2018年芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。今年は日本・イラン合作「ホテルニュームーン」(9月18日公開)、「さくら」(秋公開)などが控えている。