日本を代表する俳優・永瀬正敏が6年前に京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)の学生とともに作り上げたのが「二人ノ世界」(藤本啓太監督)だ。バイク事故による頚椎損傷のため、首から下の自由を失った画家(永瀬)と、彼を介護する盲目の女性(土居志央梨)の究極のラブストーリー。7月10日から全国のイオンシネマで緊急公開が決定。永瀬がENCOUNTの独占インタビューに応じ、映画やコロナ禍での映画への思いを語った。

――この映画は随分前に拝見していますが、傑作です。私自身、多くの人に観てほしいと思っていました。体が不自由な2人の物語ですが、コロナ禍で触れ合えない今の不自由さともリンクするところがあって、より染み入るものがあります。公開が決まった今の気持ちは？

「本当にうれしかったですね。映画はお客さんに観ていただいて初めて完成するもの。そこから、進化させていってもらえるのだと思います。このような大変な時期ですが観ていただける機会をいただいたのは、すごいありがたいなと思いました。『二人ノ世界』は京都芸術大学(現・京都芸術大学)の在校生と卒業生を中心に少しのプロが入った映画。その子たちは既に卒業していますけど、一人ひとりが何役もこなしながら作り上げていきました。言ってみれば、彼らは映画界の未来なんです。その最初の一歩としての作品を、ぜひ劇場で見ていただきたいという思いが一番強かったですからね。それを思い続けてもう6年も経ってしまったので」

――そもそもの出演の経緯について教えてください。

「(『私立探偵 濱マイク』シリーズの)林海象監督が当時、京都造形芸術大学で学科長をされていて、その授業の一環として、『彌勒 MIROKU』(2013年、林海象監督)という映画を作ったんです。そのプロモーションに参加する中、(本作のプロデューサーの)林監督から『実はすごくいい脚本があるので、また学生たちと一緒に作ろうと思っているんだけど』と言われて、読ませていただきました。確かに、すごい力強い本だったので、『面白いですね』と言ったら、『出てくれる？』と言われたんです。『もちろん、いいですけど、まず監督に僕でいいか聞いてみてくださいよ』と言ったのがきっかけでした」