藤原さくら「音楽を長く続けれたら本望」 俳優やDJと多彩な活動も「全部つながっている」

シンガー・ソングライターの藤原さくらが通算5枚目となるアルバム『wood mood』を4月3日にリリースした。ドラマーの石若駿がトータルプロデュースを務めた同作は前作『AIRPORT』からはガラリと印象を変えた1枚に仕上がった。“今”の藤原さくらを凝縮した作品となったが、どのような思いでアルバム制作と向き合ったのだろうか。

藤原さくらが5枚目となるアルバム『wood mood』を発売
藤原さくらが5枚目となるアルバム『wood mood』を発売

5枚目となるアルバム『wood mood』に込めた思い「生きている中での“光”の部分を見られる力を」

 シンガー・ソングライターの藤原さくらが通算5枚目となるアルバム『wood mood』を4月3日にリリースした。ドラマーの石若駿がトータルプロデュースを務めた同作は前作『AIRPORT』からはガラリと印象を変えた1枚に仕上がった。“今”の藤原さくらを凝縮した作品となったが、どのような思いでアルバム制作と向き合ったのだろうか。(取材・文=中村彰洋)

――今作の『wood mood』はこれまで以上に世界観がハッキリとしている印象を受けました。どのような思いを込めて作られたのでしょうか。

「テーマは前作の『AIRPORT』と近いものがあるなと自分では思っていたりもするのですが、光や影といった対象的な歌詞や、全てを包み込むような曲が多くなったとは感じています。あまり意識してはいなかったのですが、振り返ってみると今はこういうことを伝えたいモードなんだなと自分でも感じました」

――今作を作られる中で、起点となった楽曲はありますか。

「1番最初に作り出したのは『daybreak』です。以前『早春物語』でご一緒した際に、ぜひ、また石若さんと曲を作りたいと思っていたので、オーガニックな雰囲気のものを作ろうと考えていました。データをやり取りして制作していくことも多かったんですけど、今回はレコーディング当日に皆さんが演奏してくれて、そこで起こる化学反応みたいなものも大切にしています」

――『daybreak』を作られたタイミングでは、『wood mood』の方向性は決まっていたんですね。

「決まっていました。最初に森の中に入っていって、そこから抜けて光が差していくみたいなイメージが頭の中にありました。最初にプレイリストを作って、石若さんとイメージを共有してから『daybreak』制作の作業に入っていきました。

 実は最初はアルバムではなく、5~6曲のEPにしようかなと思っていました。でも、石若さんとレコーディングを進めていくうちに、曲がどんどんできて、『これはアルバムとして出したいな』と変化していきました。私はタイアップ楽曲を作るときは候補曲を2~3曲作るんですけど、『daybreak』のときに作っていたもう1曲が『星屑のひかり』でした。石若さんが『星屑のひかり』も良かったよねと言ってくださったこともあって、アレンジをし直したりして、『これも入れましょう』みたいな形でどんどん曲が増えていってアルバムになったという流れでした」

――とても楽しく作られた雰囲気が伝わってきました。

「ありがとうございます。私も『めちゃくちゃいいバイブスで作れた』というのは感じています。本当に楽しくて、まだまだレコーディングがしたかったです。石若さんは、あまりプロデュース業をされてこなかったみたいですが、ものすごく楽しんでくれていました。制作の終盤は『これは一石を投じてると思う』みたいに言ってくださって(笑)。ものすごくうれしかったです」

――『wood mood』というアルバム名に込めた意味はありますか。

「最初は森みたいなイメージがあったので、“tree”など木にまつわる言葉を考えているときに、“wood”っていいなとなりました。『wood mood』って“w”と“m”が違うだけで、字面がすごいかわいくて、今の自分のムードみたいなものも伝わるなと思い、全部の楽曲が出そろってから決めましたね」

――歌詞も幻想的な世界観のものが多い印象です。

「私の中ですごい大きな出来事だったのが、去年の夏にお姉ちゃんに姪っ子が生まれたことでした。自分のすごく身近なところで、新しい命が生まれるという経験が初めてで、ものすごく感動しちゃったんです。福岡に住んでるんですけど、私が東京に帰らなきゃいけない時も、ずっと涙が止まらなくて(笑)。私も生きていると、大切な人が亡くなったりする経験もしました。すごい悲しいことが起きる一方で、こんなにうれしいことが起きていて、『巡っているな』と感じたんです。だからこそ、今回の歌詞には『目を閉じて、感じたままに』みたいな雰囲気のものが多くなっていると思います。『sunshine』は姪っ子に対して作った歌になっていますね」

4月14日からは「Sakura Fujiwara Tour 2024」もスタート
4月14日からは「Sakura Fujiwara Tour 2024」もスタート

これまでとは違ったアルバムの制作過程「新しい作り方が見つかった」

――9曲目の『I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free』はカバー楽曲となっていますが、なぜこの曲を選ばれたのでしょうか。

「『このアルバムに入っていて自然で、今私が歌う意味のある曲ってなんだろう』と考えていたとき、この曲を思いつきました。私がミュージカル『ジャニス』に出演したときに、浦嶋りんこさんがこの楽曲の歌唱で知られるニーナ・シモンを演じられていて、そのときに初めて彼女の音楽に触れて、『こんなにすてきなアーティストなんだ』とめちゃくちゃ感動したんです。そこからニーナ・シモンの曲を聴くようになって、テデスキ・トラックス・バンドのライブを見に行ったときも、この曲をカバーしていて、『すごいいい曲だよな』と思ったんです。

 今回のアルバムの制作の中で、例えば『daybreak』は、今の社会や世界情勢の中で『自分って何ができるんだろう』と無力感を感じることがすごく多かったんですけど、どこかに希望の光はあるはずだよということを歌いたいと思って作った曲だったんです。

『I Wish I Knew~』も自由について歌っている曲で、スピリットみたいなものが通じるところがあって、今のSNS社会で、みんなと比べてずーんと沈んでいってしまうような日常の中で、もっとより自由になった方がいいということを伝える意味でも、今だからこそカバーしたいと考えて選びました」

――今回のアルバムを通して1番何を伝えたいですか。

「光を見逃したくないということです。歌詞の中に光にまつわる言葉がたくさん出てくるんです。『AIRPORT』の頃から通じてる私の考え方として、全部は捉え方次第という気持ちがあるんです。例えば事故に遭ったとして、『めちゃくちゃ運悪い』と思うこともできますが、『命が助かったなんて強運だ』と考えることもできると思うんです。起きてしまったことは変わらないし、自分の力ではどうにもできないこともありますが、どう捉えるかによって、少しずつポジティブな思考に切り替えることができると、もっと毎日が楽しくなると思うんです。そういった生きている中での“光”の部分を見られる力を持てるといいよねといった思いを込めています」

――今作は前作から1年たたずの短いスパンとなりましたね。

「今回のアルバムは自主レーベルの『Tiny Jungle Records』から出すことは決まっていて、また石若さんとご一緒したいと考えていたんです。すごくお忙しい方なので、早めの段階で打診をしていて、石若さんが『ぜひ作りましょう』と言ってくれたこともあって、一気に話が進んでいった感じです」

――今作は制作の過程にも変化があったのでしょうか。

「最初からコンセプトアルバムにしようとはそんなに考えていませんでした。今までは、いろんな方々と一緒に2、3曲ずつ作って、それが1枚のアルバムにまとまるということが多かったので、どうしても全部出そろった段階で『こういうアルバムになった』と最後に分かることが多かったんですけど、今回は全部、石若さんと一緒にやるのも決まっていたので、世界観を作りたいと先に決め手から、作り始めたのは、今までのアルバムではなかったところです。

 mabanuaさんと『green』、『red』という2枚のEPを作ったんですけど、そのときはまだ20代前半で、自分が『こういうコンセプトでやりたい』というものがなくて、ギターで曲を作って、それをmabanuaさんに渡したら『こんなかっこいい曲になった!』みたいな感覚でした(笑)。そういう作り方もまたやってみたいなと思うことではありますが、自分が大人になって音楽活動を続けていく中で、今回の『wood mood』では新しい作り方みたいなものが見つかったという感覚がありました」

藤原さくら
藤原さくら

デビュー10周年も「やりたいことを」「海外に何年か行きたい」

――4月14日からは「Sakura Fujiwara Tour 2024」も始まりました。近年は47都道府県ツアーや1会場4公演といったコンセプチュアルなものを開催してきましたが、王道といえるライブツアーは久々になりますね。

「1番最初は、カフェやレストランでライブをしていました。でも、ドラマに出たことで、急に大きなホールで回るようになって、その時にお客さんとの距離がすごく遠く感じて、距離感をつかむのが難しかったんです。でも、『heartbeat』のツアーで、すごい近いところでライブをすることで、『みんな味方なんだな』というのをすごい感じたんですよ。『間違えちゃダメだ』とか『みんなを楽しませなきゃ』と気負ってしまったところがあったんですけど、『自分の音楽が好きで来てくれてるんだ』と気付かされた感覚があって、そのマインドを持ちながら、大きい会場でライブをすると以前とは全然違うんだろうなと楽しみに思っているところです。すごくいいマインドで戻って行ける気がしています」

――今までの活動の中で、やはりドラマに出演されたことは大きな転機だったのでしょうか。

「そうですね。一番最初はドラマに出ること自体も突然のことだったので、何が何やらもう分からないままにいろんなことが進んでいった怒涛の期間でした。もちろん、経験できてすごく良かったなと思いますし、転機にはなったなと感じています。それに、全部の活動が音楽に返ってきてるなという感覚はあるんです。47都道府県でライブをしていた時も、ドラマを見て来てくれた方がすごく多かったんです。若い女の子が、『ドラマ見てました』って言ってくれたりすることが多くて。全部つながっているんだなと感じましたね。

 それに、音楽活動だけだとどうしてもサイクルが決まってくるのですが、他の刺激が合間に挟まってくるからこそ、歌いたいテーマが新しく思い浮かんだりするんです。結局、人生って人と人同士の関わり合いだなという気がしていて、1人で家に引きこもっていると歌詞が書けないこともあるので、すごくいい刺激になっていますね」

――今作は前作の『AIRPORT』を作る前からアルバムのイメージを持たれていたとのことですが、現在は次回作の構想はありますか。

「今までは振り切って、テーマ付けして、いろんなことをやってきたと思っていて、それもすごく楽しかったんです。『これをしなきゃ』と思うとやりたくなくなることがあったりするので、とりあえず自分がやりたいことを無作為にやっていったのが、この数年でした。でも、同じ映画を繰り返して見るからこそ、新しく気付くことがあるように、『wood mood』で得たものをもっと深掘りしていってもいいかなと思っています。この世界観を自分の中で深掘りしていったら、どうなるんだろうって。もしかしたら、よりポップなものがあるような気もしていて、掘っていったら、『なんだこれ!』みたいなものが見つかるような気がするんですよね。浅くいろんな場所を掘るよりのではなく、深堀りしてみたいなと考えています」

――3月18日で9周年を迎えられて、現在10年目に入られました。意識の変化みたいなものはありますか。

「まだ全くないんです。でも、本当に応援してくれている人がいなかったらここまでできていないので、日々感謝の気持ちでやっていこうと思っています。まだやりたいことはいっぱいあるので、10周年だからとかではなく、やりたいことをやっていこうと思っています。でも、せっかくなので、ちょっと特別なことができたらいいですよね。まだ何も考えてないですけど(笑)」

――やりたいこととはどういったことでしょうか。

「海外に何年か行きたいなと思ったりしています。とにかく刺激になるようなことがしたいと思っていて、仕事が立て込んだりすると行けないので、今年はちょっと合間を見て行けたらいいですね。そこで得たものをまた作品にして、皆さんに届けられたりしたいです」

――この先に向けて、目標をお教え下さい。

「私の目標はただ楽しく長く続けることなんです。だからBEGINさんとか憧れなんです! 同じ事務所の先輩としても尊敬していますし、ライブを見ていても音楽が大好きな人たちが集まってとてもピースな雰囲気なんですよ。そういう風に無理なく長く続けられたらいいなと思っています。ここまでやってきて、自分がすっごい音楽が好きなんだなと感じることが多いんです。だから、長く続けれたら、本望なんだろうなと思います」

□藤原さくら(ふじわら・さくら)1995年12月30日、福岡県出身。シンガー・ソングライター。活動はラジオDJなど多岐にわたる。俳優としては、16年4月、フジテレビ系月9ドラマ『ラヴソング』にヒロイン役として出演。その後も『ファイトソング』(TBS/22年)、『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ/23年)など数々の話題作に出演。24年4月3日に5thアルバム『wood mood』をリリース。現在、全国ツアー「Sakura Fujiwara Tour 2024」を開催中。

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