長野智子、「女性議員を増やしたい」が最大の関心事も自身の政界進出「絶対にない」言い切る理由

キャスターの長野智子(61)が4月から文化放送の情報ワイド番組『長野智子アップデート』(月~金曜日午後3時30分~5時00分 生放送)のパーソナリティーを務めている。文化放送は上智大学時代にミスDJを務めた“古巣”となる。

4月からラジオ番組『長野智子アップデート』のパーソナリティーを務めている【写真:山田隼平】
4月からラジオ番組『長野智子アップデート』のパーソナリティーを務めている【写真:山田隼平】

4月から『長野智子アップデート』パーソナリティー

 キャスターの長野智子(61)が4月から文化放送の情報ワイド番組『長野智子アップデート』(月~金曜日午後3時30分~5時00分 生放送)のパーソナリティーを務めている。文化放送は上智大学時代にミスDJを務めた“古巣”となる。(取材・文=平辻哲也)

 女子大生ブームの火付け役となった文化放送の人気番組『ミスDJリクエストパレード』をきっかけに、フジテレビアナウンサーとして人気となり、さらにキャスター、ジャーナリストと飛躍した長野。新番組は今日起きたニュースを丁寧に振り返るとともに、最新情報をいち早くアップデートするというもの。

「人生長く仕事していると、こんなことがあるんだと思っています。あの頃は“ド”がつくほどの素人で、何一つ期待に応えることができなかった。だけど、ミスDJがきっかけで、その後の放送人生に繋がったので、恩返しもしたいし、リベンジもしたい。人生が一周回って、いい挑戦させていただいているなって感じです」

『ミスDJリクエストパレード』は1982~83年6月までパーソナリティーを務めたが、現実的な進路は中学校の英語教師になることを決めていた。ところが、大学4年の時に、運命的な再会があった。

「昔の文化放送と私の大学が同じ四谷だったんです。番組で一番怖かったディレクターさんに道端で会って、『どうしている?』と聞かれたんです。私は『教育実習をやろうと思っている』と言ったら、『もったいない。放送業界を受けてみれば』って。内心、いや、それはあなたに叱られて、心が折れて、諦めたのよと。ところが、そこで『一番アナウンサーに向いていると思ったから厳しく言ったんだ』と言われたんです」

 それで、ダメ元で受けたのがフジテレビだった。そのディレクターは既にリタイアしているが、今でも付き合いがある。

「間に合ったのが唯一フジテレビ。テレビは一社しか受けなかったんですよ。インタビューでこのエピソードを話すと、『読んだよ』とLINEが来ます。新番組が決まった時は、『よかったね。文化放送に新しい風を吹き込んで』とメッセージを頂きました」

 新番組は平日午後の1時間半の生放送で、生活のリズムも変わってきた。

「毎日の生放送は本当にずっとやってなかったんで、大丈夫かと思うくらい疲れますね(笑)。力を抜いてやればいいんですけど、ものすごい気合い入っちゃって、毎日が全力投球。最初の1週目は豪華ゲストのお話を聞くだけで精いっぱいでした。リスナーさんとの交流とか議論もやってみたいと思っています。今はラジオ初心者みたいな失敗もいっぱいありますけど(笑)」

 今は6時に起床して猫の世話や雑用。8時までに朝食をとり、新聞に目を通して、テレビやネットのニュースをチェック。書く仕事などをやってから、近くのジムで運動して、2時頃に局に入って、打ち合わせをするのがルーティンだ。

「番組では、自分の目線を忘れないようにと心がけています。ニュース解説だけで終わってしまうのは味気ないので、なるべく自分がこれまで経験したこと、取材で経験してきたことのフィルターを通して話すようにしています。例えば、最近では介護保険料の引き上げの話を取り上げたのですが、92歳の母を介護して、看取った経験を話したら、すごくリスナーさんの反応がよかったんです」

 長野は7歳の時に胃がんで父親を亡くし、母親とは姉妹のような距離感で共に人生を歩んできた。晩年は同じマンションの別棟に住んでいたが、介護保険制度を活用することで、最後の1か月も自宅でワンオペ介護をしながら大切な時間を過ごすことができたという。

 従来からの関心事であるクオーター制度の導入、企業での働き方改革などの勉強会、取材もあり、忙しい日を過ごしているそうだが、最も関心を寄せていることは何か。

「最終的には女性の国会議員を増やしたいと思っているんです。それを阻んでいるのは最大与党や、いまだに地方で顕著な「女が政治をやるものではない」という昔ながらの意識でしょう。衆議院は9割男性、1割女性。そこには決まった議席数しかないので、男性を減らすしかない。しかも、小選挙区制度では、重鎮が居座り、後継は自分の息子だ、孫だと世襲にするので、いつまで経っても新しい人材は入れない。比例代表も、救済制度のように使われてしまっている現実がある。選挙に出たい若者もいますが、高い供託金が壁。出来上がった壁、システムを壊していかないといけない」

学生時代は中学校の英語教師になろうと思っていた【写真:山田隼平】
学生時代は中学校の英語教師になろうと思っていた【写真:山田隼平】

出てきた新たな欲とは

 一方、民間企業では新しい風も感じている。

「いろんな企業を取材しましたが、女性たちが声を上げたり、横連携をしても変わらない。結局、トップが問題意識を持って、重要性を感じているかが大事です。丸紅、大和証券、丸井グループなどはトップが改革のリーダーシップをとり業績も上げています。この問題の優先順位が高いことを理解している人がトップにならないと、200年かかってしまいます」

 自身が政治の道に進むことはないのか。

「よく言われるんですけど、絶対にないです。外から取材をして発信したり、やりたい人の背中を押すのが自分だと思っています」

注目すべき女性リーダーを聞くと、3000社以上の企業の働き方改革をコンサルティングしてきた「株式会社ワークライフバランス」の小室淑恵さん(49)と大手メーカー、社外取締役などを経て、2019年から会計検査院の検査官を務め、今年1月に院長に就任した田中弥生さん(64)を挙げる。

「小室さんはブルドーザーみたいな突破力と行動力がすごいです。田中弥生さんは(経済学者の)ピーター・ドラッカーの弟子。会計検査院の存在をもっと国民に知ってもらうためにタイムリーで話題性がある検査報告を発表しています。ガソリン価格が上がれば、ガソリンに関する検査報告をしたり、コロナ禍関連の報告をしたり、メディアが取り上げやすい、国会でも議論に反映できるサイクルを開拓している。そうなると、職員が大変になるので、デジタル化にも取り組んでいる。職員との信頼関係を築くために一人ひとりと面接したりします。そんな話もラジオの中でしたいです」

 約3週間の生放送の中で、新たな欲も出てきた。

「私って、味がないなと思っちゃったんですよね。長寿番組のラジオを聴いていると、パーソナリティーの方々って、すごく味があるじゃないですか。リスナーからその味わいに浸りたいな、と思っていただけるような喋り手に、いつかなりたいと思っているんです」。番組を通じて、自分自身もアップデートしていくつもりだ。

■長野智子(ながの・ともこ)1962年12月24日、米ニュージャージー州出身。O型。上智大学卒業後、フジテレビアナウンサー(1985~90年)を経て、ニューヨーク大学でメディア環境学修士号を取得。『ザ・スクープ』や『サンデーステーション』などのキャスターを務めたほか、現在は国連UNHCR協会理事としても活躍中。近著に『データが導く「失われた時代」からの脱出』(河出書房新社)がある。

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