不仲を公言していた流れ星☆、賞レースにこだわる理由「売れる、売れないとは別にある感覚」

お笑いコンビ・流れ星☆が、毎年恒例のライブツアーを今夏に開催する。7月27日から『RED ZONE』と題し、東京、大阪、岐阜、群馬、埼玉、北海道の6都道府県をめぐる。高校時代の同級生で、コンビ結成24年。不仲を公言した時期もあったが、追求してきた老若男女を笑わせる芸を同ツアーで披露する決意だ。文字通り、勝負の夏。それを前に、2年連続で挑んだフジテレビ系『THE SECOND~漫才トーナメント~』での手応え、現代に求められる“笑いの質”を2人が語った。

インタビューに応じた流れ星☆のちゅうえい(左)とたきうえ【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた流れ星☆のちゅうえい(左)とたきうえ【写真:ENCOUNT編集部】

7月27日から恒例ライブツアー開催

 お笑いコンビ・流れ星☆が、毎年恒例のライブツアーを今夏に開催する。7月27日から『RED ZONE』と題し、東京、大阪、岐阜、群馬、埼玉、北海道の6都道府県をめぐる。高校時代の同級生で、コンビ結成24年。不仲を公言した時期もあったが、追求してきた老若男女を笑わせる芸を同ツアーで披露する決意だ。文字通り、勝負の夏。それを前に、2年連続で挑んだフジテレビ系『THE SECOND~漫才トーナメント~』での手応え、現代に求められる“笑いの質”を2人が語った。(取材・構成=大宮高史)

――今年の『THE SECOND』は1回戦でかもめんたるに敗退。昨年のベスト16から後退という結果になりましたが。

たきうえ「正直、かもめんたるのことはナメていました(笑)。本気で優勝を狙って、決勝進出まで想定してネタを3本用意していました。そうしたら、かもめんたるの岩崎う大が作ったネタにやられました」

ちゅうえい「僕らは後攻で、『THE SECONDは後攻有利』と言われていたんです。ところが、彼らが用意してきたのが斬新なネタで、会場が大いに沸いてしまって、僕らのネタが終わっても、かもめんたるの空気になっていて“完全アウェー”のままで終わってしまいました」

たきうえ「かもめんたるは本気で勝ちに来ていて、う大によると、対流れ星☆用にみっちりネタを練ったそうです。1本目をライブで披露したところ、全く受けなかったので『これではアカン』と作った新ネタでも納得できず、練り直した3本目を本番で披露したとのこと。やられました」

ちゅうえい「去年はベスト16で三四郎に負けたのですが、彼らも対流れ星用にネタを用意していました。対戦相手を覚醒させるような力が、俺らのコンビにはあるんやなと思っています。だから、一皮むけたいコンビは俺らのところに来てください(笑)」

――昨年敗退した時は、たきうえさんの「こっちは娯楽映画撮ってんのにニッチなフランス映画に負けた感じ」とXに投稿し、話題になりました。

たきうえ「そうでしたね。今回は悔しさ以上に清々しさがあって、それくらいかもめんたるの漫才が良かったんです。ただ『老若男女に笑ってもらえる、万人受けする漫才なら俺らの方が負けへんぞ』という気持ちは変わっていません」

――あの投稿では、大衆受けする笑いとニッチな笑いのどちらを志向するかを「娯楽映画とフランス映画」の例えに込められたようですね。

たきうえ「THE SECONDのような空間では、審査するお客さんがの多くが純度の高いお笑いファンなので、僕らも去年を教訓に『フランス映画的なニッチなファン層』に受けるネタを用意していました。なので、敗退しても流れ星☆の芸風そのものが否定されたわけではないんです。僕らには僕らの芸風を発揮できる場所が他にもあります。ライブツアーもそうです」

――7月からのライブツアー『RED ZONE』は「昔尖っていた頃の流れ星」がテーマになっています、コンセプトは。

たきうえ「THE SECONDで優勝を狙っていくためにも、流れ星☆らしさを継続しつつ、お笑い通をもっとうならせるライブが必要だと考えました。なので、昔のお笑いのことばかり考えていた時代の『尖っていた流れ星☆』を今やってみようと思います。実は、かもめんたるのう大もネタ作りで参加してくれます。う大とは、彼がWAGEというお笑いユニットをやめてしばらくフラフラしていた時期に、ネタ作りを手伝ってもらっていた関係でもあります」

ちゅうえい「ちょうど2000年代の頃ですね。当時、NHKの『爆笑オンエアバトル』やフジテレビの『爆笑レッドカーペット』などに出させてもらっていましたが、『あの頃に比べると今の流れ星は刺激が足りない』と言ってくれるファンもいるんですね。彼らの声に応えて、久々にギラギラした笑いもお届けします」

たきうえ「先日、北海道の伊達市でナイツや三四郎と一緒にライブに出演しました。合計12組でライブをやりましたが、僕たちのネタが間違いなく一番盛り上がっていました。地方の会場で、芸人をテレビでしか知らないお客さんがほとんどで、お笑いに必ずしも詳しくないこの人たちを笑わせることができる。これが流れ星の強みです」

料理に例えると…「ベースはカツカレーで」

――賞レースとは別の場所でも輝けるということですね。

ちゅうえい「最近は配信ライブなど、ディープなお笑いファンがチケットを買ってくれるジャンルが伸長しました。ただ、地方のショッピングモールなど、至近距離でお客さんを盛り上げられる空間は残っていますし、どちらかに無理に振る必要はないのかなと思います」

たきうえ「地方の文化会館のようなホールでのライブに来てくれるのは、子どもからお父さんお母さん、おじいちゃんまで、日本の人口の縮図のような人たちです。『テレビの向こうではこういう人たちが見てくれているんだ』と実感します。ただ、そんな場所では僕のSNS炎上ネタをやっても分かってもらえません(笑)。THE SECONDとは、ウケるネタの性質がまるで違いますし、賞レースで優勝したネタだからといってウケるとは限りません」

ちゅうえい「そういった(大衆にウケる)流れ星☆のベースは変えないで、ちょっとスパイスを混ぜることで、来年はもっと上のステージを狙えるかなと思います」

たきうえ「料理に例えると、ベースはカツカレーで高級な調味料を混ぜていく戦略です」

ちゅうえい「それも『高級というか、ニッチすぎると俺らの(笑いの)味に合わんな』みたいな感覚は分かってきています。賞のために芸風を変えるのは滅びの道だけど、結果や勝敗にこだわってその道を行きかけていたかもしれません。モールなどでも営業ライブも長年経験してきて、ほとんどゼロ距離でお客さんを笑わせることにかけては、絶対的な自信があります」

たきうえ「地上波ではまだ見せていないけど、会館ライブでもお笑いファン向けのライブでも大いに受けたネタがあります。そういうネタを磨いていけばいいのかなと」

ちゅうえい「自分たちのことをネタにすると、みんな笑ってくれるんです。ところが、僕らがその場にいない別の芸人をネタにすると、これは客を選ぶ笑いになって『(その場にいない奴のことなんか)知らんがな』という白けた反応になりかねない。前者の笑いをつきつめた方が、今後、僕らと当たるコンビは嫌でしょうね」

――既に知名度のあるキャリア組ですが、『M-1グランプリ』『キングオブコント』『R-1グランプリ』『ザ・セカンド』にエントリーし続けています。賞レースにこだわる理由は。

たきうえ「売れていても、芸歴を振り返るとどこかに『優勝していない』というコンプレックスがあるようです。M-1は結局1度も決勝に行けずじまいです。売れる、売れないとは別に、甲子園に縁がなかった高校球児が、『卒業してからも甲子園に挑戦できるチャンスをもらっている』。そんな“延長戦”の感覚で挑み続けています」

ちゅうえい「僕は2年前にG-1グランプリ(崖っぷちNo.1グランプリ=参加格・芸歴15年以上)で2位に終わったことが忘れられないですね。決勝まで進んで、優勝した磁石の芸を間近で見ただけに、『1度は優勝したい』と意識してしまいます」

――あらためて今夏のツアーと来年の『THE SECOND』への抱負を。

ちゅうえい「ツアーは僕らだけの単独ライブなので、合同ライブとも客層が違います。ずっと流れ星☆の笑いを見てきた目の肥えたお客さんも多いと思うので、今回の原点回帰路線が初日にフタを開けたらどうなるか。客席の反応が怖くもあり、楽しみでもあります」

たきうえ「僕らを破ったかもめんたるのう大が、ツアーでは味方についてくれます。ただ、彼も歳を取っているから昔の毒が出せるかどうか(笑)」

ちゅうえい「かもめんたるとは楽屋では仲もいいんです。これから(THE SECONDで)勝ち進んで優勝してくれれば、僕らツアーにも箔(はく)がつきますね」

たきうえ「いや、早く負けて僕らのネタ作りに集中してほしい気持ちもあるかも(笑)。お笑いマニアばかりの、あえて得意でないフィールドで勝負し続ける“フランス映画”のことは来年からも敗退する度にネタにされ続けるかもしれませんが、流れ星☆に新しくついた武器だと思っています。来年は初戦から相手をナメないで(笑)、一戦必勝でチャレンジします」

□流れ星☆(ながれぼし)岐阜県出身で高校の同級生のちゅうえいとたきうえが、2000年6月にコンビ結成。17年、18年に2年連続でフジテレビ系『THE MANZAI』でたけし賞を 受賞。ABCテレビ・テレビ朝日系『M-1グランプリ』には03年から計6度準決勝に進出。単独ライブツアーは14年に始まり、コロナ禍で中止になった20年を除いて毎年開催。

【公演情報】
流れ星☆ 単独ライブツアー RED ZONE supported by ナガセスッポン養殖場
7月27日 東京・山野ホール
8月3日 大阪・ナレッジシアター
8月10日 岐阜・下呂交流会館アクティブ泉ホール
8月17日 群馬・高崎市文化会館
8月25日 埼玉・大宮ソニックシティホール 小ホール
8月31日 北海道・共済ホール
9月29日 東京・山野ホール

チケットは今月20日午前10時から一般販売開始
https://www.bsfuji.tv/nagareboshi/

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