振り付け450曲以上、コラボ演出…裏方もやるs**t kingzがダンスだけで日本武道館ライブを実現するまで

ダンスパフォーマンスグループ・s**t kingz(シットキングス、略称シッキン)。昨年10月25日、ダンサーとして初の日本武道館ライブ『THE s**t』を実現した。2007年に結成し、海外のダンスコンテストで優勝するなど、キャリアを積み上げてきた。各自が国内外の有名アーティストを振り付け、450曲以上を担当。昨年7月には、TBS系特番『音楽の日』で、事務所の垣根を越えた総勢91人によるダンスコラボのプロデュース、演出を行った。ドラマ、バラエティー番組にも出演。30代後半にして、注目度を増してきた4人は一体どんなグループなのか。インタビュー「前編」では、武道館ライブ、彼らの15年の歴史を振り返る。

s**t kingzの(前列左から)Oguri、NOPPO、(後列左から)kazuki、shoji【写真:北野翔也】
s**t kingzの(前列左から)Oguri、NOPPO、(後列左から)kazuki、shoji【写真:北野翔也】

2007年10月結成 精鋭4人で「1回、かましてやろう」のつもりが活動17年

 ダンスパフォーマンスグループ・s**t kingz(シットキングス、略称シッキン)。昨年10月25日、ダンサーとして初の日本武道館ライブ『THE s**t』を実現した。2007年に結成し、海外のダンスコンテストで優勝するなど、キャリアを積み上げてきた。各自が国内外の有名アーティストを振り付け、450曲以上を担当。昨年7月には、TBS系特番『音楽の日』で、事務所の垣根を越えた総勢91人によるダンスコラボのプロデュース、演出を行った。ドラマ、バラエティー番組にも出演。30代後半にして、注目度を増してきた4人は一体どんなグループなのか。インタビュー「前編」では、武道館ライブ、彼らの15年の歴史を振り返る。(取材・文=よもつ、構成=柳田通斉)

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 ダンサーだけでの武道館ライブ。構想が浮上したのは、「2~3年くらい前」だったという。

shoji(ショージ)「それまでは、ダンサーが武道館で公演をするなんて想像もしなかったですね。ただ4人で集まっている時に『そういう目標を掲げても良いかもね』って。でも、まさかかなうとは」

kazuki(カズキ)「何の根拠もなく言っていました」

shoji「そうそう。大きい目標として、ざっくりとしたイメージで。ただ、武道館はアリーナサイズなのに、ダンスが見やすいんです」

 決定したのは開催日の約1年前。メンバー、スタッフのモチベーションが一気に上がり、多忙なスケジュールの合間を縫って準備を進めた。そして、直前開催の全国7都市ライブツアー『踊ピポ』と武道館ライブのメイキングを収録したブルーレイの制作も決まった(今年3月27日に発売)

shoji「結構、頭の中がごちゃごちゃでしたが、ブルーレイ特典の長時間密着したメイキング映像を見て、『そうそう、こんなことあった』って思い出しました(笑)。僕たちの記憶より、きっとちゃんとその映像が色んなことを残してくれています」

kazuki「ブルーレイの映像チェックをした時、『ここもうちょっとこうすれば良かったな』と思う瞬間が結構、あるんですよ。パフォーマンスには満足しているんですけど、そう思えるってことは、『武道館は通過点』『まだまだやれることがある』というのが見えて、うれしかったです」

NOPPO(のっぽ)「(武道館決定の発表を)サプライズされたけど、サプライズの時マネジャーがちょっと甘噛みして」

kazuki「あまりに一瞬で、良いリアクションできなかったんです(笑)」

NOPPO「『おっ、お~』みたいな」

Oguri(おぐり)「15周年の配信をしていた日だよね。それもメイキングに入ってます」

 ライブ当日。各メンバーには多くの思いが去来し、広がる光景は忘れ得ないものになった。

NOPPO「信じられない思いでした。密着してくれているカメラマンさんに『ちょっと、外を見てきて』『本当に人、集まってる?』みたいな感じで。それで武道館の周りに皆さんがいる映像を見て、(武道館ライブを)実感しました」

shoji「登場のLED扉が開いて出た時にみなさんが盛り上がってくれた瞬間、『ここにいる人達は全員がs**t kingzを見に来たんだ』と思いました。すごく震えました。僕たちを知る入口って、振り付けをしている誰かのファンからだったりします。去年は『音楽の日』のコラボ企画で知って、興味を持ってくれる人が多かった。僕たち昔はクラブで踊ってたんですけど、今はいろんなところで知って、見に来てくれたっていうのはうれしいですね」

Oguri「シッキンとしてやっていく中で、ダンスをやってる人にウケるのはもちろんですが、ダンスになじみのない人も楽しめるショーをやるっていうのは、初期の頃から常に心掛けているので、テレビとかで知って興味持ってくれるのはうれしいですね」

 数多の人気アーティストが歌ってきた武道館。その聖地でのライブを“ダンスだけ”で成立させるためには、どんな工夫があったのか。

shoji「いつものシッキンの中に工夫が詰まっていました」

Oguri「常に前やったことを繰り返したくないんですよね。『この前、こうだったから今度はこうしよう』みたいな。常に変化させたい者が集まっているので、それを(演出担当の)kazukiが、『どうすれば、お客さんが乗ってくれるか』を考えてくれました」

kazuki「どんなに好きでも、2時間ダンスを見続けるって辛いと思うんですよ。歌と違って、ダンスは直で届きにくいというか。でも、『ダンスだけで勝負する』というこだわりがあるので、一緒に踊りたい曲、みんなでタオル回したい曲、騒ぎたい曲、黙ってカッコよく見せつける曲……。そういうバリエーションをゼロから作りました」

shoji「他の方のライブを演出する中で、お客さんを観察することが多いんですけど、カッコいいダンスを踊ってる時って、お客さんは止まってるんですよ。集中して見てくれているから。でも、そういうのが続いたライブって実は盛り上がってない。僕たちもダンスで勝負しているから、どうしてもお客さんが止まっちゃう。そこをどうやったら解消できるかということで、『踊ピポ』という皆で踊るライブを試行錯誤しながら作って、そこでいろいろ感じたものを武道館に持っていった感じです」

kazuki「『踊ピポ』に来てくれたお客さんたちが、(武道館も)引っ張って全体を盛り上げてくれたって印象もあります。」

shoji「ライブ映像にもお客さんが映っているんですけど、踊ってたりとか暴れてたりとか(笑)。そういう『一緒に踊る』ことで一体感が作れたという意味では、今までできていたところから、さらに目指すライブに近づいた感覚があります」

 グループの結成は2007年10月。4人の物語は、kazukiをきっかけに始まった。

kazuki「僕はそれぞれ3人と違う形で知り合っていて、shoji君と別のユニットで踊っていたました。ちょうどYouTubeが出た頃で、そこで見せてもらったアメリカのダンサーの映像が結構衝撃的でした。同じヒップホップの括りなんですけど、それを『ちょっと、やりたいな』と思って3人に声をかけました。本当に1回、そのパフォーマンスをするだけのつもりでした」

shoji「kazukiとNOPPOは幼なじみでずっと踊ってて、kazukiとは全員が何かしらのユニットで踊っていました。俺はNOPPOと踊ったことあるんですけど、NOPPOは覚えてないんですよ(笑)」

NOPPO「(笑)」

kazuki「当初はこのチームで十何年続けるなんて全く思ってなかったですね。ユニット3つに入っているとか当たり前で、s**t kingzもその中の1つぐらい思っていました。ただ、精鋭を集めた感覚はあって、『かましてやろう』という気持ちはありました」

2010年、米国最大ダンスコンテスト『Body Rock』で優勝した時のs**t kingz。左からkazuki、Oguri、shoji、NOPPO【写真提供:アミューズ】
2010年、米国最大ダンスコンテスト『Body Rock』で優勝した時のs**t kingz。左からkazuki、Oguri、shoji、NOPPO【写真提供:アミューズ】

米国最大コンテスト2連覇 国内外のアーティストから振り付け依頼

 当時、shojiはサラリーマンで昼に仕事、夜にs**t kingzとして踊る生活。最年少のOguriは大学生だった。その後、08年にマライア・キャリーのバックダンサーとしてショーに参加、09年には米国、スウェーデンでワークショップを開催。10、11年に米国最大のダンスコンテスト『Body Rock』で2連覇を飾った。

shoji「当時、アメリカによく3人(kazuki、NOPPO、Oguri)がレッスンを受けに行ってて、アメリカのダンサーや、アメリカに住む日本人ダンサーとのつながりが深くなりました。その頃、ヨーロッパでストリートダンスが盛り上がり始めて、振り付けを教えるレッスンが流行り始めた時でした。その時にちょうどスウェーデンに行ったダンサーについてきた日本人の方が、『s**t kingzっていうグループがいて、これから絶対に注目されるから』のようなことを言ってくださり、それで呼んでいただきました」

kazuki「アメリカでのレッスンやショーの動画を見てオファーする方が結構いたので、ヨーロッパに行った時、相手の方が僕らを日本人だと思ってなかったこともありました。『日本人なんだ。アメリカに住んでるんじゃないんだ』みたいな」

shoji「(オファーを受けて)『日本に住んでる』と伝えると、『えっ、航空機代4人分は払えないかも』みたいな話になったり(笑)。日本での振り付けの仕事は、その頃にはみんなが始めていましたが、段々と海外や韓国のアーティストの方が、僕たちがドイツでやったワークショップの動画とかを見て、『この動画を見てやってほしいと思った』と言ってくださるようになりました」

 その後、日本で開催したせりふのないダンスだけの『無言芝居』はライフワークになり、これまでに5作品を発表。20年には、生配信ライブ『NAMAHOSHOW』を世界同時配信で開催。同年の『Black Lives Matter運動』を機に、チャップリンの演説に合わせて踊る『独裁者 – 最後の演説 -』をYouTubeで公開した。21年には、ゼロから楽曲をプロデュースした『見るダンス映像アルバム』をリリースし、アーティストとしてテレビ朝日系『MUSIC STATION』に出演した。

 スキルの高さに加え、「誰もが楽しめる作品を作る」「常に新しいことをする」という信条で、彼らは唯一無二のグループになった。インタビュー「後編」では、話題になった昨年7月に実現したTBS系音楽特番『音楽の日』コラボ企画の裏側、メンバー個々の活動、ダンス業界、グループの未来などについて語っている。

□s**t kingz(シットキングス) 2007年に結成のダンスパフォーマンスグループ。メンバーは、リーダーのshoji(持田将史=39・神奈川)、kazuki(濱本和樹=37・神奈川)、NOPPO(増田昇太=37、神奈川)、Oguri(小栗基裕=37・東京)。米国最大のダンスコンテスト「Body Rock」で10、11年と連続優勝。世界各国からオファーが殺到し、これまで25か国以上を訪問。三浦大知、BLACKPINK、東方神起ら国内外のアーティスト450曲以上の振り付けを手がけている。NHK『あさイチ』、日本テレビ系『スッキリ』などで特集が組まれ、昨年7月15日放送のTBS系『音楽の日』では、総勢91人のダンスコラボパフォーマンスをプロデュース、演出、振り付けを担当し、アーティストとしても出演を果たした。

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