『ジョブチューン』辛口評価リスクも参加企業増のワケ 実は撮影に1商品30分、真摯に向き合う舞台裏

注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はTBS系『ジョブチューン~あの職業のヒミツぶっちゃけます!』(土曜午後8時)で人気のジャッジ企画。コンビニの商品や全国展開する有名飲食店の料理を超一流料理人らで構成される7人が、値段に見合った本当においしい商品なのかを「合格」「不合格」で判定するという企画。厳しい評価を受けるリスクはあるが、参加を希望する企業や店は増えているという。なぜなのか。プロデューサーの時松隆吉氏が取材に応じ舞台裏を明かしてくれた。

『ジョブチューン』の出演者たち【写真:(C)TBS】
『ジョブチューン』の出演者たち【写真:(C)TBS】

バラエティーの域超え企業ドキュメンタリーに変身の声

 注目番組や人気番組の舞台裏を探る企画。今回はTBS系『ジョブチューン~あの職業のヒミツぶっちゃけます!』(土曜午後8時)で人気のジャッジ企画。コンビニの商品や全国展開する有名飲食店の料理を超一流料理人らで構成される7人が、値段に見合った本当においしい商品なのかを「合格」「不合格」で判定するという企画。厳しい評価を受けるリスクはあるが、参加を希望する企業や店は増えているという。なぜなのか。プロデューサーの時松隆吉氏が取材に応じ舞台裏を明かしてくれた。(取材・文=中野由喜)

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 自信の料理や商品だが、決していい評価をもらえるとは限らない。そんなリスクのある番組に企業や店は快く出演してくれるのだろうか。

「企画がスタートした2019年頃は商品がテレビでネガティブな評価を受けることに企業側も慎重になっている部分があり、企画成立の苦労は確かにありました。一方で、この企画をスタートして感じたのは、企業側も料理人に商品に足りていないマイナス部分を指摘され、改善のアドバイスをもらえることがこれまでになかったなどと前向きに捉えていただくこともあり、近年は厳しい評価であってもお客さんの満足度を上げるための貴重な場と思っていただく企業が増えています」

 ズバリ忖度がないのか聞いてみた。すると舞台裏にはリスクを背負っても出演する企業にうれしいメリットがあった。

「現場はガチでやっています。我々も料理人が合格、不合格のどちらの札を上げるのか全く分かりません。あと、各商品の判定後、料理人が、食べた感想や合格、不合格の理由をきちんと伝えるため、実は1商品に30分はかけて撮影しています。そこでの話は商品の品質アップにつながっているそうです。全10商品、同じように時間をかけて判定理由を伝えるので撮影にトータル6時間近くかけています」

 登場するのは一流企業の人気メニューばかり。企画的にNGとする企業も多いのでは?

「スタート当初は周りから『多分、長続きしない企画だろう』と言われました(笑)。当時、新たな企画を立ち上げなくてはならない時期でもありましたので、番組としては行けるところまで行こうという感じでした。でも結果的に「不合格」も捉え方によってはプラス要素もあるとご理解いただき、今日まで続けてこられたのだと思います。最初は視聴者が日ごろ口にする商品がおいしいのか、おいしくないのか、というシンプルな内容として見ていただいていたかと思いますが、ここ2年ぐらいの放送は、出演する企業が、商品開発に並々ならぬ時間と労力を費やしている苦労や、担当者がどれだけの熱量を注いで開発に向き合っているかが伝わることにポイントを置いて放送しているため、開発に向き合うリアルな姿勢から感動が生まれ、大人が涙を流す場面もたびたび見られます。単に合格、不合格、おいしい、おいしくない、ではなく、バラエティーの域を越えた『企業ドキュメンタリー』と評価されることが多く、番組もジャッジ企画を通して成長させてもらっていると思っております」

『ジョブチューン』の番組ロゴ【写真:(C)TBS】
『ジョブチューン』の番組ロゴ【写真:(C)TBS】

 番組では企業や開発者の商品への思い、努力がしっかり紹介されている。視聴者である消費者の商品を見る目も変わってくるに違いない。対する料理人はどんな思いで出演しているのか。

「出演してくださる料理人は、食文化を豊かにするため自分の持つ知識や経験を、外食産業の発展のために伝えたいという思いが根底にあると思います。また、企業の努力から学ぶことも多々あるそうです。あるパティシエは『我々個人の店は扱う商品数に限りがあるためコストがかかるけれど、全国規模で生産しているコンビニさんは大量生産するためコストを抑えることができる強みがある。とはいえ、正直この価格でここまでクオリティーの高いスイーツが作れるのか?』と目を丸くして驚いていました。同時に、コンビニ業界が熱心にスイーツを研究している姿に感動し、喜んでいました。コンビニと個人の店と違いはありますが、番組を通じて原材料や製造工程など『こうすれば、こう変わる』とアドバイスを送り、スイーツ業界全体のレベルを上げていきたい思いをパティシエの方々は語ってくださります」

 企業の反応はどうだろう。

「『合格』『不合格』に限らず放送後の反響はとても大きいと報告を受けることがあります。不合格とされた商品の開発担当者はその時こそ落ち込む姿を目にしますが、それをバネに商品の改善、新たな開発に取り組んでいらっしゃるそうです。また、不合格に対して、社長が『俺の責任だから』と社員をかばう企業や、不合格商品をどう修正するかを話し合い、不合格の判定をプラスに考える前向きな会社もあり、あらためてリベンジしたいと参加してくださる企業が増えているのかなと思います」

 放送では分からない舞台裏の様子も明かしてくれた。

「収録後、カメラが回っていない所で不合格になった商品に対し、料理人が不合格を受けて落ち込む開発担当者に歩み寄り、テレビでは控えていた専門的なワードを使って、より具体的にアドバイスをしている光景を見かけます。一見その場での立ち話にも見えますが料理人は、担当者によりよいモノを開発してほしいという思いがあり、放送では伝えきれないことを個人的に伝えている姿はジャッジ企画をやっていて良かったなと感じます」

 我が子のように愛情を注ぎ開発した商品に「合格」「不合格」がくだされるチャレンジングな企画だが、企業側にはマイナスをプラスに変えるチャンスがある。視聴者は普段は見ることのできない、企業努力と開発担当者の情熱を知ることができる。当初はバラエティーとして見ていたが、企業ドキュメンタリーと評価されるようになった。今後どう進化していくか楽しみだ。

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