BEGINの3人はケンカしない「島の小学校から一緒」「100回くらい同じ話をしても笑ってしまう」

3人組・BEGINの島袋優が2月21日に初のソロアルバム『55rpm』をリリースした。「rpm」とは、回転数を表しており、同作はキヨサク(MONGOL 800)、NAOTOとHIROKI(ORANGE RANGE)、玉城千春(Kiroro)、大橋卓弥(スキマスイッチ)、山田孝之、横山剣(クレイジーケンバンド)ら総勢17組の仲間と作り上げた。島袋は今、人生55回転目。作品にちなみ、自身の半生、BEGINについてENCOUNTに語った。「後編」はBEGINメンバー3人の関係性やソロアルバムについて。

55歳でキャリア初のソロアルバムを完成させた島袋優【写真:ENCOUNT編集部】
55歳でキャリア初のソロアルバムを完成させた島袋優【写真:ENCOUNT編集部】

島袋優インタビュー・後編

 3人組・BEGINの島袋優が2月21日に初のソロアルバム『55rpm』をリリースした。「rpm」とは、回転数を表しており、同作はキヨサク(MONGOL 800)、NAOTOとHIROKI(ORANGE RANGE)、玉城千春(Kiroro)、大橋卓弥(スキマスイッチ)、山田孝之、横山剣(クレイジーケンバンド)ら総勢17組の仲間と作り上げた。島袋は今、人生55回転目。作品にちなみ、自身の半生、BEGINについてENCOUNTに語った。「後編」はBEGINメンバー3人の関係性やソロアルバムについて。(構成・文=福嶋剛)

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 今年で34年目を迎えたBEGINですが、デビューからずっと3人でやってきて「ケンカはないんですか」とか「仲の良い秘訣は何ですか」ってよく質問されます。ケンカは多分、ないですね。あったとしても覚えていないので、たいしたケンカじゃなかったと思います。小さい島(沖縄・石垣島)で暮らしてきたので、ケンカをしたり、険悪になっても、すぐにまたどこかで遭遇するんです。だから「昨日は悪かったな」と言ったら、「俺もごめんな」と言ってすぐに仲直りする。島の人間は、そうやってみんな暮らしてきたから嫌なことも忘れていつも新鮮な気持ちなんだと思います。

 BEGINの3人も小学生から一緒なんで、今まで100回くらい同じ話をしてもいつも笑ってしまうんです。それを見たスタッフは「この人たち、また同じこと話していて飽きないのかな」って顔をしてますよ(笑)。僕たち3人は親せきとか兄弟みたいな関係なんです。

 音楽的な部分で言うとBEGINは3人がそれぞれの持ち場というのを尊重していて、1人で勝手に動いたりすることはないんです。(比嘉)栄昇が「この曲は、こんな感じでアプローチしたい」と言うと、(上地)等はピアノ、僕はギターで栄昇のやりたいことを形にしていきます。栄昇は等と僕のアイデアを尊重しながら、お互いに意見を出し合って曲を完成させていきます。音楽を作っていても揉めたりしたことは1度もないです。

 僕はもともと街作りに関わる環境デザインの仕事がしたくて勉強してきたので、よく音楽を街に例えます。心の傷を治す病院だったり、みんなで遊べる公園だったり、お酒を飲む場所だったり、いろんな曲が街を構成しているという想像をします。BEGINはどんな街かというと、ソウル、カントリー、ブルース、ジャズ、沖縄民謡といった“ルーツミュージック”と呼ばれる古い街並みを残しつつ、新しい公園を作ったり、Wi-Fiを導入したり、時代に合わせて快適に暮らせる街を目指して進化し続けている街なのかなって思っています。

 BEGINという街並みは僕にとっての「理想像」なので、そこにあえて島袋優という街(ソロ作品)を作らなくても十分に満足しています。だから、今までソロをやろうなんて考えたことはありませんでした。何より比嘉栄昇という最高のボーカリストがBEGINにはいるから、僕がメインボーカルを取る必要なんかないんです。ところが、2015年に転機が訪れました。僕は『海の声』という曲を書いて桐谷健太くんに提供しました。

 桐谷くんの歌は、CMをきっかけにたくさんの人たちに届いて、BEGINでもセルフカバーをすることになりました。すると、栄昇が「これは優が歌った方がいい。バンドに新鮮さも出てくるから」と提案してくれました。でも、「きっと、みんなに『お前が歌うのかよ』って言われちゃうから嫌だ」と言って僕は最後まで反対しました。そんな時、たまたま長野のバーで友達と飲んでいたら、イーグルスの昔のライブ映像が流れていてイーグルスのメンバー全員が曲によってメインボーカルを取っている姿を見て、「そっか。こういうのもありなんだ」とやっと気が付いて、栄昇に「分かった。歌うよ」ってLINEを入れました。実際に歌ってみると、「悪くはないな」って思うようになりました。

 それがきっかけで、3年前にORANGE RANGEのNAOTOとHIROKIと沖縄で飲んでいたら、「優さん、一緒にソロアルバム作ろうよ」と言ってくれて、「2人がプロデュースしてくれるならやるよ」と返事をしました。そしたら、2人から「優さんはミュージシャン仲間がたくさんいるから、いろんな人に1曲ずつプロデュースしてもらった方が絶対面白いよ」とアドバイスをもらい、近しい人たちに声を掛けました。そして、約3年かかりましたけど、ようやく人生初のソロアルバムが完成しました。

3月11日から初の個展『Guitart Islandart』を「+ART GALLERY」(東京・渋谷)で開催【写真:ENCOUNT編集部】
3月11日から初の個展『Guitart Islandart』を「+ART GALLERY」(東京・渋谷)で開催【写真:ENCOUNT編集部】

50代だからこそ作れたファーストアルバム

 僕は声を掛けた人には『島袋優』という素材を使ってどんな形でも良いので音楽で遊んでください」と言ってお願いしました。NAOTOとHIROKIには『タピオカとパンケーキ』という中南米風の音楽を作って一緒にやりました。ブームが通り過ぎた後の寂しさや切なさみたいなものをタピオカの気持ちになって書いてみました(笑)。せっかくなんで「メキシコ風の衣装を着てMVを撮ろう」と言って、スペイン語でMCも入れてもらおうとディアマンテスのアルベルト城間さんに連絡したら、「今。メキシコにいます」だって(笑)。「何てタイミングだ!」ってみんなで笑っちゃいました。

 他にもキヨサクはモンパチ(MONGOL800)みたいな曲を作ってくれたり、大橋卓弥も素敵な曲を書いてもらい、僕の歌を聴いて「めっちゃ良かった」って褒められて、うれしかったです。また、Mighty CrownのSAMI-Tに声を掛けたら「(横山)剣さんとのデュエットはどうですか」と提案してもらい、僕が中学生の頃、バンドでコピーしたクールスの剣さんと一緒にできると思ったらうれしくて。それで、「横浜と沖縄を音頭でつないで盆踊りするような音楽はどうですか?」と提案して、『太平洋音頭』という曲を作りました。『からっぽカタツムリ』(「NHKみんなのうた」2023年8月-9月放送)は僕の書いた曲を山田孝之に歌ってもらいたくてお願いしました。

 僕は先輩後輩関係なくフラットに付き合えるし、若い人からもたくさん刺激をもらっています。若い頃は、負けたくない気持ちが強くて、他の人たちに嫉妬したりすることもありましたけど、純粋に良い音楽に出会った時の感動は先輩後輩とか関係ないですから。若い人たちのライブにもよく行っては「すごいな」って感動して帰ります。そんな風に考えられるようになった50代だからこそ作れたファーストアルバムです。たくさんのミュージシャンとスタッフのみなさんの愛が詰まった「音楽のビュッフェ」みたいな宝物になりました。今月9日には、東京・代官山のライブハウス「晴れたら空に豆まいて」で栄昇の息子がいるバンド・HoRookiesをゲストに迎え、人生初のソロライブを開催します。50代でドキドキするライブなんてちょっと新鮮ですね。

 最後にもう1つ。趣味で続けてきた絵画ですが、3月11日から17日まで都内で初の個展『Guitart Islandart』を+ART GALLERY(東京・渋谷)で開催します。子どもの頃からずっと絵を描いてきて、今回のソロアルバムでも初めて僕の絵をジャケットに採用してもらいました。来年はBEGINが35周年を迎えます。まさか“初めてづくしの55歳”を迎えるとは想像すらできませんでしたが、大好きなお酒の飲み過ぎには注意しながら、健康で忙しい毎日を楽しみたいと思います。

□島袋優(しまぶくろ・まさる) 1968年9月23日、沖縄・石垣島生まれ。BEGIN のギタリストとして90年、『恋しくて』でデビュー。以降は『島人ぬ宝』『涙そうそう』『笑顔のまんま』など老若男女に歌い継がれる楽曲を発表。2015年、『海の声』を作曲し、CMソングが大きな話題となった。10年ほど前に沖縄本島に移住。それをきっかけに沖縄の自然を表現した作品を中心にした絵画制作を行っている。

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