『忍びの家』で話題の“眉なし”ビジュアルは普段から 仲万美が目指す「唯一無二の俳優」

俳優の賀来賢人が主演・原案・共同エグゼクティブ・プロデューサーを務め、2月15日から世界配信がスタートしたNetflixシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』。配信が始まると各国の「今日のシリーズTOP10」にランクインし、「週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)」で1位を獲得するなど、注目を集めている。そんな本作で異彩を放つ存在感で、“ヴィラン”としての魅力を発揮しているのが俳優の仲万美だ。本格アクション初挑戦でありながら、激しい殺陣や立ち回りも披露している。今作の撮影の様子や作品への思いを聞いた。

インタビューに応じた仲万美【写真:冨田味我】
インタビューに応じた仲万美【写真:冨田味我】

アクション初挑戦も緊張なし「すごく楽しんじゃって」

 俳優の賀来賢人が主演・原案・共同エグゼクティブ・プロデューサーを務め、2月15日から世界配信がスタートしたNetflixシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』。配信が始まると各国の「今日のシリーズTOP10」にランクインし、「週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)」で1位を獲得するなど、注目を集めている。そんな本作で異彩を放つ存在感で、“ヴィラン”としての魅力を発揮しているのが俳優の仲万美だ。本格アクション初挑戦でありながら、激しい殺陣や立ち回りも披露している。今作の撮影の様子や作品への思いを聞いた。(取材・文=猪俣創平)

 本作は現代の日本を舞台に、過去のとある任務をきっかけに忍びであることを捨てた服部半蔵直系の最後の“忍び”ファミリー・俵(たわら)家が、国家を揺るがす史上最大の危機と対峙(たいじ)していく完全オリジナルストーリー。

 そんな本作で仲は、新興宗教・元天会の代表・辻岡洋介(山田孝之)の傍らにいる幹部・桜井あやめを演じた。配信前の出演者情報に名前は載っていなかったものの、8話すべてに登場。独特な存在感とアクロバティックなアクションも際立っていた。今作の感想を尋ねると、「めちゃめちゃおもろいです!」と即答。まずは視聴者として作品の魅力を熱く語った。

「面白くて5周ぐらいしましたね(笑)。自分が出ている場面を確認して、英語吹き替えも見ました。日本人でよかったなって思うことでいっぱいですね。日本に生まれて、日本の文化に触れて、日本の作品に出て……日本人でよかったって気持ちが強いです」

 インタビュー時は配信開始からわずか1週間ほどのタイミング。それでも「えげつないですね」と本人も驚くほどの声が届いていると明かし、「ありがたいことにSNSのフォロワー数もすごく増えて、コメントやいいねも気が付いたら100件を超えたりと、規模が違います」と反響の大きさを実感している。

 現在は俳優として映画や舞台などに活躍の場を広げている仲。かつては加藤ミリヤや椎名林檎のバックダンサーとして舞台に立ち、マドンナのワールドツアーにも参加するなどダンサーとして確固たる地位を築いた。「ダンスの世界ではそれなりに有名だったんですけど、『忍びの家』をきっかけに仲万美のことを調べて、『この人ダンスやってるんだ』と知ってくれる人がたくさん増えたので、感動してます」と喜びをかみしめる。

 本作では“忍者アクション”も見どころの一つ。仲の細身ながらも力強くキレのある立ち回りも秀逸だった。しかし、実はアクション未経験。初めてのアクションは今回のオーディションだった。

「お芝居とアクションの審査を1日でやりました。20~30人くらいの人がいて、最初にお芝居をするとほどなくして合否が出ました。他の方たちはキックボクシングが趣味ですとか、このアクション映画に出てましたとか、アクションチームで習ってますと自己紹介していて、『皆さんすごい!』と思う方たちばかりでした」

 初アクションが大役をつかむためのオーディション。緊張はなかったのだろうか。

「普段は緊張しいであがり症なんですけど、オーディションのときはすごく楽しんじゃってました。アクションをずっとやりたかったので、教えていただけると思うとその時間がすごく尊くて。私はクラブにいるみたいに『ふぅ~う!』って、1人で盛り上がっちゃってました。指導してくれる方々のアクションに『あっ、すご~い!』って1人で拍手なんかもして、『かっこいいですね』とか話しかけちゃってたんですよ(笑)」

 走る、蹴る、格闘や殺陣など一通りのアクションをこなした。後日、合格の報せが届き「マジで!?」と喜ぶと、「キャスト表や作品の詳細を見て、『ええー!?』って本当にちゃんと叫びましたね」と豪華な共演者たちに驚がくした。

 主演の賀来のほか、江口洋介、木村多江、高良健吾らそうそうたる俳優が顔をそろえた本作。仲は合同で行われたアクション稽古から参加。テレビや映画で見ていた俳優陣を前に、「やっぱり空気感が全く違ったのですごく緊張しました」と初めての現場を振り返った。「でも、そこでいろんな方にお会いしてお話もできました。賀来くんや高良くんは『万美~!』って声もかけてくれて、すごくフランクに接してくれて『おお~!』って感動しちゃいました(笑)。『万美って呼び捨てされた、ミーハーかな自分?』とか思いながら、ちょっとドキドキでした」と、現場でのエピソードを明かした。

 共演者との距離も縮め、落ち着いて挑めたという実際の撮影。もっとも、「彼だけ唯一すごい緊張しちゃって」と、ある俳優の存在を打ち明けた。

「山田孝之さんと共演するときだけは苦労しました。緊張で私の顔がこわばっちゃうというか……」と、当時の心境も思い出したのか言葉を詰まらせると、「昔からすごくファンだったので、緊張が顔に出てしまわないかと不安でした。でも、それがバレていたみたいで、山田さんにも『大丈夫?』って心配もされちゃって」と苦笑いを浮かべた。

 最初の共演シーンでは山田の迫力に圧倒された。「めっちゃ怖かったです。山田さんのもとに走ってからセリフを言う場面だったのもあって、息も震えてましたし、全然セリフが出なくて」と声を絞り出すのにも精いっぱいだった。

念願だったヴィラン役で存在感を発揮した【写真:冨田味我】
念願だったヴィラン役で存在感を発揮した【写真:冨田味我】

明かした目標「唯一無二の俳優に」

 本作で演じたあやめは、眉毛のないビジュアルも印象的だ。その理由を聞くと「普段からです。監督たちがすごく気に入ってくれて『それでいこう!』って」と仲の特徴をそのまま生かした演出だったという。そんな“謎の女”桜井あやめは自身にとって特別なキャラクターになった。

「ヴィランをやるのが夢だったんですよ。こう見えて悪役が1個もないんです(笑)。どう見たってヴィラン顔じゃないですか? 分かりやすく言ったら、『ハリー・ポッター』なら『絶対にスリザリンでしょ』って言われるタイプです。でも、1度も悪役をやったことがなくて今回初めてでしたから、夢がかないました」

 念願の悪役に笑みがこぼれ、より饒舌(じょうぜつ)に。演じることで「正義と悪ってなんだろうと考えるようになったり、悪役が持ってる正義もあるよねと考えたりするうちに、ヴィランも決して悪いわけではないと思えて、すごく愛くるしい存在になりましたね。あやめには何があったんだろうって」と役そのものにも夢中となった。

“ヴィラン”を見事に演じきった仲は、今作への出演で俳優としての意識にも変化があった。

「Netflixは世界配信で規模が大きいので、見られている意識をもっと持たないといけないなと痛感しました。その意識がなかったわけでもないですし、おろそかにしていたわけでもないんですけど、改めて気を付けなきゃいけないなと。ましてや、あやめっていうインパクトの強い役をやらせていただいたので、がんばろうという思いがたぎっています」

 2019年の俳優デビューからわずか5年で出会ったハマリ役。今後の展望を聞くと、少し考えてから「唯一無二の俳優になりたいですね」と目標を語った。

「人とちょっと違う存在になりたいですね。今回の『忍びの家』もそうですけど、見ている方にインパクトは植え付けていきたいです。昔から“人外”という言葉がすごく好きで、『人と違う』と思われたいです。だから、できる役の幅は狭いと思うんですよ。絶対に女子高生なんかできるわけないですし、青春ラブストーリーとか絶対無理なのは分かっています(笑)。でも、できる範囲はすごく狭くても、そこにバッと入れる、そういう人になりたいですね」

 悪役の印象とは対照的に、どんな質問にも快活に答えた。見るものにインパクトを残した本作を経ても、「またヴィランをやりたいです。サイコパスとか、とち狂った役を」と目を輝かせた。仲にしか表現できない次なる“悪役キャラ”を期待せずにいられない。

□仲万美(なか・ばんび)熊本県出身。5歳からダンスを始め、これまで加藤ミリヤ・BoAなどのバックダンサーを務め、2015年にはマドンナのバックダンサーとしてワールドツアーに同行。14~16年・19年には、『NHK紅白歌合戦』で椎名林檎のアーティストダンサーを務めた。16年、リオデジャネイロ五輪の閉会式で、日本のプレゼンテーション「SEE YOU IN TOKYO」にも参加。19年、岡崎京子氏原作の映画『チワワちゃん』で俳優デビュー。

次のページへ (2/2) 【写真】あやめを演じた仲万美の『忍びの家』ショット
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