春風亭昇太会長「女流という意識を持たずに自由に」 シングルマザーで入門した雨花ら新真打ちに期待

公益社団法人落語芸術協会(会長・春風亭昇太)が29日、都内で新真打ち披露記者会見を開催した。

会見に出席した(左上から)春風亭昇太、神田紅、桂南なん、春風亭柳橋、(左下から)松林伯知、山遊亭金太郎、雲龍亭雨花【写真:ENCOUNT編集部】
会見に出席した(左上から)春風亭昇太、神田紅、桂南なん、春風亭柳橋、(左下から)松林伯知、山遊亭金太郎、雲龍亭雨花【写真:ENCOUNT編集部】

雨花の座右の銘「あの場合はしょうがなかった」に壇上の師匠らも苦笑い

 公益社団法人落語芸術協会(会長・春風亭昇太)が29日、都内で新真打ち披露記者会見を開催した。

「新真打ちの誕生はいつもうれしく、先々が楽しみ」という昇太会長のあいさつの後、それぞれの師匠に紹介されたのは、春雨や風子改メ雲龍亭雨花(うんりゅうてい あめか)、山遊亭くま八改メ四代目山遊亭金太郎(さんゆうてい きんたろう)、神田真紅改メ三代目松林伯知(しょうりん はくち)の新真打ち。

 3人のうち2人が女性というバランスに昇太は「女性が落語やるのは普通のことだと思っているので、女流落語家の意識をもたないで、普通に落語家として頑張ってもらいたいなと思います。以前は、女流落語家とか女流講談師とかくくりがありましたが、女性だからという気持ちを持たないで自由に落語や講談をやってもらいたい」と、時代に即したエールを送った。

 シングルマザーとして入門した雨花は、修行と子育て(入門時に息子は3歳)を見かねた保育園に「里子に出したら」と言われたほど。母親が前座、二つ目の修業をする間にみるみる成長し、今年成人式を迎えたという。

 厳しい教えで知られる師匠・春雨や雷蔵の「男がやろうと、女がやろうと八っつあん(古典落語の登場人物)は八っつあんだ」という時代を先取りした教えに従い、落語と余芸として顔まねを磨いてきた。ネタ数は100に及ぶ。「ものまねや顔まねは好きなので続けますが、落語と一緒に依頼していただけたら」と落語家としての誇りを伝えた。

「バームクーヘンのような年輪のある芸人になりたい」という四代目山遊亭金太郎は、師匠三代目山遊亭金太郎没後(2019年)、桂南なん門下へ移籍した。

「さんゆうてい」という亭号は「三遊亭」がすぐさま連想されたり、変換されるが、金太郎の亭号は「山遊亭」。「“やまあそび亭”をとにかく残してくれ、と亡くなった師匠は言っていました。今、私ひとりです。ご存じない方が多くて、どんな現場に行っても『三遊亭』と楽屋に名前が書かれていたりします。それが悔しくて。もっともっと僕が頑張って、『三』かな『山』かなと1秒でも考えてもらえる“やまあそび亭”を育てていきたいと思います」と誓いを立てた。

 編集者時代、講談教室に通っていたことから、師匠神田紅との縁ができた伯知。入門前を知る師匠の紅は「一番後ろに座っていました。表方志向ではなかったのに」と回想。「講談師としては向かない。前座時代は苦労していまして、いつも胃を押さえながらやっていた。講談の『南総里見八犬伝』の最初を教えて、『あとは自分でやんなさい』と言ったら、目の色が変わった」と弟子の成長に目を細めた。

 史学部卒の伯知は新選組が大好きで、新選組の講談を作った2代目松林伯知に心酔した。「三代目として新選組を題材とした講談を作って、連続ものとして後世に残したい」と、今後も創作に向かうことを明かした。

 落語芸術協会の披露興行は、5月1日、新宿末広亭からスタートする。伯知は、日本講談協会にも所属しているため、3月22日、23日の両日、東京・上野広小路亭で披露興行を行う。

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