【週末は女子プロレス♯142】181cmの現役最長身は「誇りです」 学生時代は吹奏楽部、運動経験なしの23歳がプロレスラーになったワケ

身長181センチ、体重75キロという立派な体格を誇るスターダムのHANAKO。昨年3・25横浜武道館でデビューを飾り、同じ団体のレディ・Cを抜いて、日本人現役女子レスラー最長身となった。かつてスターダムには身長190センチのイタリア人レスラー、クイーン・マヤが参戦していたが、180センチを超える女子レスラーはなかなか出てくるものではない。HANAKOの大きさは、うまく使えばプロレスラーとして最大の武器であり、財産。今年2・18渋谷の時点ですでに124試合を経験、来月でデビュー1年を迎え、ますますの成長が期待されるレスラーだ。

来月でデビュー1年を迎えるHANAKO【写真:新井宏】
来月でデビュー1年を迎えるHANAKO【写真:新井宏】

来月でデビュー1年、すでに124試合を経験

 身長181センチ、体重75キロという立派な体格を誇るスターダムのHANAKO。昨年3・25横浜武道館でデビューを飾り、同じ団体のレディ・Cを抜いて、日本人現役女子レスラー最長身となった。かつてスターダムには身長190センチのイタリア人レスラー、クイーン・マヤが参戦していたが、180センチを超える女子レスラーはなかなか出てくるものではない。HANAKOの大きさは、うまく使えばプロレスラーとして最大の武器であり、財産。今年2・18渋谷の時点ですでに124試合を経験、来月でデビュー1年を迎え、ますますの成長が期待されるレスラーだ。

 HANAKOがプロレスを知ったのは、高校生のときに母親に誘われたのがきっかけだった。
「母はむかしプロレスが好きだったみたいで、職場のプロレス好きの人に見に行こうと誘われたらしいんです。その母が私も誘って見に行ったのが、プロレスとの出会いでした」

 最初の観戦は、地元・京都で開催された、ブラザーYASSHIの京都カス野郎プロレスだった。

「廃校になってしまった小学校が会場でした。最初は校庭でしたね。カス野郎プロレスは3、4回行ってて、(中野)たむさんやなつぽい(万喜なつみ=当時)さんがいらっしゃったときも見ました。はじめてプロレスというものを知り、人間が飛んだり跳ねたり相手を投げたりするということに驚きましたね。アニメとかゲームの世界が本当に目の前で起こっているような感覚になりました」

 プロレスに興味を持った彼女は、新日本プロレスが京都や滋賀県に来たときにも足を運ぶようになった。高校を卒業し、大学に合格して上京。そこで彼女は学生プロレスのサークルに入った。が、選手ではなく、まさかの裏方志望だったというではないか。

「プロレスは好きだったんですけど、中学が吹奏楽部で高校のときはなにもせず、運動経験がなかったんですよ。そもそもレスラーになろうなんて考えはありませんでした」

 が、周囲からは選手になることを勧められる。それはそうだろう。彼女くらいの長身なら、選手として見栄えすること間違いなしだ。

「たしかに、小さい頃から背は高かったです。小学生のときは5年生以外、すべて一番高かったですね。最初は背が高いって優れていることだと思っていたんですけど、中学高校で、いじられてしまい、それがイヤでコンプレックスになってしまったんです」

 高身長に引け目を感じていたというHANAKO。マネジャー業や音響係など学園祭でのイベントで忙しくしていたものの、しだいに仲間たちがリングで躍動する姿をうらやましいと思うようになっていく。

「先輩たちの試合を見て楽しそうだなって。もともと気持ちのどこかに興味はあったんですけど、実際にやってみるとなると怖くてできなかったんですよね。でも、リングを見ているうちにだんだんやってみようかなって」

 そして、学プロの選手としてリングに上がることになった。そこでついたリングネームが、世羅りさオマージュの「フェラりさ」……。

「先輩がつけてくれました。どぎついのがきたなと思ったんですけど、伝統的に断っちゃいけないところがあったので(苦笑)」

 大丈夫か?と思われるリングネームではあるけれど、リングでそこを利用するわけではなく、試合はいたって普通だったとフェラりさ、いや、HANAKOは当時を振り返る。そのうち、元ネタのホンモノ世羅りさから声がかかる。プロミネンス、すなわちプロのリングに上がってみないかとのオファーだった。

「私を呼んでくれるなんて、世羅さんの心が寛大だなと思いました。学プロって敬遠されがちだけど、逆に来てほしいというか、受け入れてくださったことがすごくうれしかったです」

 プロミネンスには22年8月から12月にかけ5大会に参戦。ホンモノのプロレスラーへの道を開くきっかけとなった。この参戦をネタではなく、チャンスと受け取っていたのである。というのも……。

「ちょうど、プロのレスラーになろうかなと考え始めた頃だったんですよ。プロレスの道に進むのもありかなって。そう思っていたときにちょうど声をかけていただいたんです」
 ただ、プロミネンス参戦で学プロとプロの差を痛感したのもまた事実だった。まず、基礎体力が違う、一発一発の重みが違う。

「ちゃんとデビューして強くなりたい。強くなって対等に闘えるようになりたい」

 そう感じた彼女は、試合数や環境面を考慮しスターダムに入門。この時期就職活動もしており、某食品会社への内定を得ていたものの、それを蹴ってプロレスラーへの道を選んだという。そして、プロのプロレスラーになるためのトレーニングが始まった。

「まず最初に筋トレができないと技術練習に進めないのがあって、運動経験の足りない私には、そこが厳しかったです」

 それでも昨年1月のプロテストに合格し、3・25横浜でデビュー。初戦はレディ・Cとの最長身コンビで、舞華&ひめか組と対戦。敗れはしたが、大型タッグとのぶつかり合いは将来のポテンシャルを十分に感じさせた。ひめかの得意技JPコースターの使用許可が出たのが、その証と言っていいだろう。

 7・2横浜武道館では6人タッグながら同日デビューのさくらあやから自力初勝利をゲット。層の厚いスターダムにおいて、アルゼンチンバックブリーカーやビッグブーツなど、身体を活かした技を武器にどんどん経験値を上げていった。タイトル戦線においてもレディとの令和東京タワーズでNEW BLOODタッグ王座、吏南のフューチャー・オブ・スターダム王座に挑戦した。

 昨年11月以降、スターダムでは一気に3人の新人がデビューを果たした。これにより、4年ぶりにルーキー・オブ・スターダム新人王決定戦を開催。HANAKOのほか、弓月、八神蘭奈、玖麗さやかがエントリーされた。

 が、キャリア、体格差からしても、HANAKOこそがダントツの優勝候補。それは誰もが認めるところだっただろう。ところが、今年1・3横浜でおこなわれたトーナメントでは、決勝戦で昨年11月デビューの弓月がHANAKOを破り、23年度の新人王に輝いた。敗れたHANAKOは号泣。しばらくは弓月との関係もギクシャクしてしまった。

「すごく悔しかったです。自分が(あのメンバーで)勝つのは当たり前だし、絶対に新人王を取る自信がありました。なので、みんなのすべてを受け止めて勝ってやろうという気持ちで挑みました。でも、弓月に足元をすくわれてしまった。実際、丸め込まれるのが苦手な部分だったので。切り返したかったんですけど……」

 試合は、丸め込みを得意とする弓月が3カウントを奪ってみせた。弓月の戦法は大型選手攻略のお手本のようでもあった。丸め込みとはいえ、スピードとキレのよさは新人離れしており、HANAKOはまんまとハマってしまったのである。

身長181センチ、体重75キロのHANAKO【写真:新井宏】
身長181センチ、体重75キロのHANAKO【写真:新井宏】

新人王となった弓月の活躍に感じたこと

 下馬評を覆し新人王となった弓月は今年1・14大阪でSTARS入りを志願し、新人のユニット入り第1号となった。ユニット入りは必須ではないとはいえ、こちらでもHANAKOは先を越される形になってしまったのである。

「弓月がユニットに入って正直、あせりはありました。無所属で、いろんな先輩と闘ったり組んだりして、いろんなことを学ぶ。それが自分には合っていて、学ぶ環境としてもいいとずっと思ったんですけど、弓月が先に一歩踏み出して評価される姿を見ていると、なんかモヤモヤしましたね」

 弓月に触発された部分もあったのか、HANAKOは1・20高田馬場で舞華、白川未奈が結成した新ユニットに合流した。のちにE neXus V(イーネクサスヴィー)と命名されたこのユニットで、HANAKOは大きく羽ばたくチャンスを得たと言っていい。

 EXVを立ち上げた赤いベルトのチャンピオン舞華は、HANAKOデビュー戦の相手でもある。前述したようにHANAKOは舞華のパートナーだったひめかから必殺技を引き継いでおり、舞華と組めば“舞ひめ”と呼ばれた舞華&ひめか組の再来という考え方もできるだろう。同時に、HANAKOは舞華と組んでタッグリーグ戦を制したメーガン・ベインの日本ラストマッチで、舞華&メーガン&HANAKO組を結成。HANAKOのパワフルな攻撃はメーガンの後継者候補とも言え、こちらも“ディバインキングダム”と呼ばれた舞華&メーガン組を引き継ぐ可能性があるのではなかろうか。

「確かに、そういっていただけるところはあります。ただ、いまはもっともっと実力をつけなければいけないので、2人の顔に泥を塗らないような、最強のレスラーになりたいです。一番背が高いのは(プロレスラーになった)いまでは誇りです。でも、いずれは抜かれるかもしれないので(そこには固執しない)。やっぱり、最強になりたいですよね」
 では、最強を目指すHANAKOにとって、プロレスとはなんなのか?

「闘いですね。相手と闘うのはもちろん、自分との闘いでもあります。技を食らっても諦めないのもそうですし、目標に向かってリング以外のところでもトレーニングとか道場の練習とか、ユニットのなかで信頼を高め合っていくのもすべて。すべてが自分との闘い。まずは自分に勝たないと!と思います」

※「週末は女子プロレス」は、今回が最終回となります。ご愛読ありがとうございました。

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