『不適切にも』に出演、早実で甲子園2度出場の元野球エリート 31歳で続く下積みも「簡単でないのはわかっていた」
俳優・阿部サダヲ主演のTBS系連続ドラマ『不適切にもほどがある!』(金曜午後10時)には、元野球エリートも出演していた。中学日本代表、早稲田実業高で甲子園2度出場、早稲田大OBの深澤恒太(ふかさわ・こうた)だ。出演は第2話(2月2日)の1シーンのみだが、中学野球部の練習シーンにも関わっていた。俳優活動の傍ら、学習塾講師、野球コーチでもある31歳に、同作に携わった思い、今後の目標を聞いた。
31歳・深澤恒太 第2話で主演の阿部サダヲと絡み
俳優・阿部サダヲ主演のTBS系連続ドラマ『不適切にもほどがある!』(金曜午後10時)には、元野球エリートも出演していた。中学日本代表、早稲田実業高で甲子園2度出場、早稲田大OBの深澤恒太(ふかさわ・こうた)だ。出演は第2話(2月2日)の1シーンのみだが、中学野球部の練習シーンにも関わっていた。俳優活動の傍ら、学習塾講師、野球コーチでもある31歳に、同作に携わった思い、今後の目標を聞いた。(取材・文=柳田通斉)
『不適切にもほどがある!』は、宮藤官九郎氏のオリジナル脚本によるコメディー作。1986年から2024年の現代へタイムスリップした“昭和のおじさん”小川市郎(阿部)が、コンプラで縛られた令和の人々に考えるキッカケを与えていくストーリーが展開される。
その第2話。深澤は令和のテレビ局でカウンセラーになった市郎に、相談する局員を演じていた。
「実は自身の出演するシーンの前日の撮影で野球部の練習シーンがあり、野球指導で阿部さんにお会いしていました。翌日、阿部さんに改めてごあいさつした際に『あれ、今日は役者? 忙しいね~』と声を掛けていただきました。撮影の合間には僕が感銘を受けた阿部さん主演舞台『髑髏城の七人』(劇団☆新感線)の裏話を聞かせていただき、とても貴重な時間でした」
練習シーンでは阿部にノック前のボールの受け取り方、選手役のキャストにはケガをしない守備の仕方、制作サイドには阿部が演じている際の背景での練習は何をすべきかを伝えたという。
「撮影での野球指導は初めての経験でしたが、カメラワークを気にしながらの指導は、俳優である僕ならではだったと思います。ちなみに、阿部さんは野球経験者でノックがとても上手でした」
今は俳優の深澤だが、大学までは典型的な野球エリートだった。中学時代は名門の調布シニアに所属し、中学日本代表で主将を務めた。進学した早稲田実業高では甲子園に2度出場。ここまでは清宮幸太郎(日本ハム)と同じルートで、進んだ早大では日本一も経験している。だが、有原航平投手(ソフトバンク)、中村奨吾(ロッテ)らと同期。1学年下には茂木栄五郎(楽天)らもおり、定位置は獲得できなかった。そして、大学3年の秋、周りが就職活動を始める中、自身は俳優を志した。
副業は学習塾講師&中学野球コーチ
「甲子園に出場して人前でパフォーマンスをする楽しさを知り、今度は俳優というフィールドで表舞台に立って活躍したいと思いました。大学4年時には芸能学校のワタナベエンターテインメントカレッジに通いました。演技を基礎から学んでいくうちに、演じることの楽しさや奥深さを知り、より一層俳優になりたいと思いました。卒業オーディションでは多くの芸能事務所関係者が集まった中で芝居をし、50社から声を掛けていただきました。そして、所属させていただいたのが今の事務所です」
だが、芸能界は甘くない。簡単には仕事は決まらず、生活をするために副業を探した。思い浮かんだのが、培ってきた「野球と勉強」。学習の家庭教師と野球の個人指導を別々に行っていたが、野球での対象者は個人では見つけづらかった。その後、野球事業を手掛けている株式会社GXAに相談。同社からは、中学生向けの学習塾と野球チームを並行して行う城東ボーイズ(東京・江東区)を運営していることを知らされ、「そこで野球と勉強の指導をしてくれないか」と誘いを受けた。
「両方できる人はそうはいないということもあり、採用していただきました。早実には野球推薦で入りましたが、周りは秀才ばかりで必死に勉強しないと留年してしまう環境で学業を頑張ったことが今、役立っています」
現在も野球、トレーニング、勉強などのレッスンを行いながら、オーディションを受け、映画、ドラマ、CMなどに出演している。ただ、メインキャストにはたどり着いておらず、下積みの状態は続いている。
「簡単ではない道のりであることは、俳優を志した時から分かっていました。今、僕ができることは、いただいた仕事に全力を尽くし、俳優としてブラッシュアップしていくことだと考えています。今回の作品には、阿部サダヲさんや八嶋智人さんといった僕が目標としている俳優の方々が出演されており、とても良い刺激を受けました」
城東ボーイズ出身では、寺地隆成捕手(18=明徳義塾高出)が昨秋のドラフト会議でロッテから5位指名を受けて入団した。深澤にとっては、寺地が教え子のプロ野球選手「第1号」であり、子どもたちの憧れになっている。次は深澤が憧れられる番。野球で培った体力、精神力も武器に俳優界の1軍入りを目指す。
□深澤恒太(ふかさわ・こうた)1992年6月10日、東京・杉並区生まれ。早稲田大人間科学部卒。小・中学は調布リトル、調布シニアで硬式野球のスキルを磨き、早稲田実業高に進学。2年春に三塁手でセンバツ大会に出場し、8強入り。3年夏にも二塁手として甲子園の土を踏んだ。早大では日本一も経験。卒業後は俳優の道へ。資格はNSPA公認パーソナルトレーナー、乗馬4級ライセンス、大型自動二輪免許、第二種電気工事士など。174センチ、72キロ。