斉藤由貴、演技にインパクトがある理由「説明しづらいエネルギーを持て余している」

俳優・歌手の斉藤由貴(57)が土屋太鳳主演の映画『マッチング』(内田英治監督、2月23日公開)に出演した。マッチングアプリを題材にしたサスペンス・スリラーで、物語のカギを握る役。得体のしれない怖さを醸し出しているが、「こういう怖い役が多いな、なぜだろう」と笑って見せる。

インタビューに応じた斉藤由貴【写真:冨田味我】
インタビューに応じた斉藤由貴【写真:冨田味我】

土屋太鳳主演の映画『マッチング』出演「最近、怖い役のお仕事が多いな」

 俳優・歌手の斉藤由貴(57)が土屋太鳳主演の映画『マッチング』(内田英治監督、2月23日公開)に出演した。マッチングアプリを題材にしたサスペンス・スリラーで、物語のカギを握る役。得体のしれない怖さを醸し出しているが、「こういう怖い役が多いな、なぜだろう」と笑って見せる。(取材・文=平辻哲也)

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『マッチング』は、ウェディングプランナーとして活躍するヒロイン・輪花(土屋)がマッチングアプリで結婚した新婚カップルに降りかかる事件に巻き込まれるというサスペンス・スリラー。ヒロイン自身も、マッチングアプリに登録し、新たな出会いがある中で、危険な体験をしていく……。斉藤の役はヒロインの過去に関係する女、節子。その正体はラストで明かされる。

「最初はホラーなのかなと思ったのですが、読み進めると、サスペンスなんだと思いました。マッチングアプリがモチーフで現代を象徴した物語になっています。私が演じる節子さんは少し怖い役。最近、怖い役のお仕事が多いな、何でだろうと思っています」と笑う。

 確かに節子は登場シーンもセリフも多くないが、不気味な怖さを醸し出す。この存在感は斉藤ならでは、といえるだろう。

「強いインパクトを残さなければならない。怖さ、精神的ないびつさを短いシーンの中でどう印象づけるかということが、私に多分この作品で与えられた仕事だと思ったので、リアリティーを超えたところで強い印象を残すような表現をすることを心がけていました」

 是枝裕和監督の『三度目の殺人』では、殺人を依頼する母親役でブルーリボン賞助演女優賞を受賞。最近ではホラー映画『変な家』(3月15日公開)にも出演する。

「こういう役を求められるということは、職業的な俳優というより、素材感みたいなものが求められているのですかね。企画会議か何かで、プロデューサーさんが、リアリティーを超越した空気感を出せる人だと思っていただけたのかな。表現の仕方でインパクトが残せると思ったのなら、それは、ある意味、私の望む部分。それはそれでいいのかなと思えるんです」

 脚本・監督を務めた内田英治氏(53)は『ミッドナイトスワン』で日本アカデミー賞を受賞した監督。その演出はどうだったのか。

「私には『そのままでやってください』という感じだったと思います。逆に、『どんなものが出てきますか。見せてください』という印象がありました。衣装合わせの時から、こういう世界観を作りたいということを明確に持っていらっしゃったので、私の方から意見を言わない方がいいかなと思っていました」

 撮影は4日間で、ほとんどは片岡礼子との演技だった。

「本当に集中して演技することができました。片岡さんも素晴らしく、キャラクターの醸し出す雰囲気をすごく上手に出していっしゃいました。私の役は片岡さんとは対照的な存在でしたが、うまくバランスが取れたような感じはありますね」と振り返る。

 怖い役でもインパクトを残しているが、近年の代表作は『最初の晩餐』(2020年)での母親役だろう。

 疎遠だった父親(永瀬正敏)の葬儀のために、帰省した主人公(染谷将太)が久々の家族とのふれあいを通じて、家族の思い出を取り戻していく物語。斉藤は、周囲が用意してくれた通夜ぶるまいの料理をキャンセルし、料理は自分で作ると言い出す母アキコ役。一見、常識はずれの母親のように見えるが、物語が深まるにつれ、その思いが明らかになっていく。

 サザンオールスターズのドキュメンタリー映画やミュージックビデオで活躍していた常盤司郎監督の映画監督デビュー作だった。近年は年下の演出家、監督と組むことが多くなってきたという。

「彼の作品も本当に素晴らしかったです。長編デビューの方は自己投影からスタートされますが、常盤監督も自身の体験を基に物語を作られました。ミュージックビデオで力を発揮されてきた方なので、センスを感じましたし、その世界観やウィットに富んだ部分が出ていて、目指している方向性やピュアさに心を打たれる部分がありました」

 斉藤にとって、演技とは自身の中にある情熱や熱量を出す場所であるという。

「俳優というのは、キャリアを積む上で、自分に合ったアプローチが何なのかを模索していくんだと思うんですけど、私は、何かを正確にやることが苦手だと思うんです。ただ、演技する情熱、好きという気持ちがものすごく強い。自分でも説明しづらいエネルギーがあって、持て余しているのかもしれないです(笑)。素材感としてのニーズがあるなら、それでいいのかなと思っています。ただ、それだけに偏るのも、俳優としてつまらないので、ごくごくニュートラルな普通の役もできるといいなとは思っているんですけれどね」

今年、芸能界デビュー40周年を迎えたが、今後はどんな役を見せてくれるだろうか。

□斉藤由貴(さいとう・ゆき)1966年9月10日、神奈川県生まれ。1984年、『少年マガジン』(講談社)第3回ミスマガジンでグランプリに選ばれる。1985年2月、『卒業』で歌手デビュー。4月『スケバン刑事』(CX)で連続ドラマ初主演。12月公開『雪の断章 -情熱-』で映画初主演。各映画賞の新人賞を受賞した。1986年連続テレビ小説『はね駒』(NHK)のヒロインを演じ 、1987年『レ・ミゼラブル』で初舞台を踏む。以降女優、歌手として幅広く活躍。2006年 宮藤官九郎脚本のドラマ『吾輩は主婦である』(TBS)の主演で改めて注目。2017年、『三度目の殺人』でブルーリボン賞助演女優賞、2020年に『最初の晩餐』で第34回高崎映画祭 最優秀助演女優賞を受賞した。

スタイリスト:石田純子(オフィス・ドゥーエ)

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