被災地で“自家用消防車”が活躍 要請受け名古屋から水を運搬、女性2人を救出し金沢に搬送

1日に発生した令和6年能登半島地震により石川県各地で甚大な被害が発生している中、自家用の元消防車で被災地に向かった会社員のボランティア活動がSNSで注目されている。能登町の要請で生活用水を運んだ愛知県在住の自家用消防車(@jikayoshobosha)さんは「支援物資が届いていない自主避難所に名古屋から水を運搬しました」と報告した。

名古屋から能登半島へと“命の水”を搬送【写真提供:自家用消防車さん】
名古屋から能登半島へと“命の水”を搬送【写真提供:自家用消防車さん】

能登町役場の要請で被災地入り、生活用水不足を実感

 1日に発生した令和6年能登半島地震により石川県各地で甚大な被害が発生している中、自家用の元消防車で被災地に向かった会社員のボランティア活動がSNSで注目されている。能登町の要請で生活用水を運んだ愛知県在住の自家用消防車(@jikayoshobosha)さんは「支援物資が届いていない自主避難所に名古屋から水を運搬しました」と報告した。

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 能登町役場から「高倉公民館で生活用水を配ってほしい」との要請を受け、同じく自家用消防車を持っている友人とチームを結成し3台で被災地に向かった自家用消防車さん。名古屋市上下水道局緑営業所(名古屋・緑区)の協力を得て、水1500リットルとポリタンクを受け取り被災地へと車を走らせた。支援物資満載で出発し緊急車両の邪魔にならないよう被災地内は車のいない深夜に走ったが、道路が荒れていて能登町まで11時間かかったという。

 到着した避難所の能登町役場では断水のためトイレが流れない状態で3階までアンモニア臭のようなにおいが充満。支援物資の状態については「食料の量が2日保つかどうかというギリギリな状態でしたが、それ以外の物資はたくさん届いていました」と明かす一方、「避難所自体、中に人が入れないくらいパンパンのため、公民館や小学校、老人ホームなどの自主避難所と呼ばれる場所に身を寄せている方が多かったです。自主避難所には物資などの割り当てがないため支援物資が行き届いていませんでした。また、庭先や路側帯に停められた車の中で生活する方や、ガソリンがないため車で主要避難所まで物資を取りに行けない人たちもとても多くいました。ただ、現在はガソリンが届くようになったため、ある程度改善されてきています」と語った。

 現地で不足しているものを聞くと「電気が通っておらず真冬なので暖房器具が足りません。実際に私の行った避難所でも灯油ストーブ2台を40人ぐらいで囲む様子が見られました。また部屋の外の廊下で寝ている過酷な光景があり、仕方なく公民館などに行こうにもそういった自主避難所には水を含む支援物資の配給がないためどこにいてもつらい環境が見て取れました」と窮状を明かした。

 さらに「サポートした真脇や姫の自主避難所でも水を入れる容器がないのとガソリン不足のため車で水を取りに行けず、川の濁った水で皿洗いしていました。また、老人ホームには外出できない方が多くいるため、生活用水を蓄えるべくポンプを使い窓から浴槽に水を注入するなどしました」と明かした。

 そんな中、目にとまったのが“意外なごみ箱”。丸椅子をひっくり返して脚の部分にビニール袋をかけ即席のごみ箱が出来上がっていた。「このごみ箱は6日に私が真脇公民館で撮影しました。モノがない中でも工夫され、そして丁寧に分別されていました。日本人の美徳を感じましたね」。

被災地では地元消防団が案内、スムーズに物資を搬送

 津波の影響で道路の段差が行きと帰りで広がっているなど至る所で地震の影響を目撃した自家用消防車さんは、官公庁からの払い下げで購入した元消防車をマイカーとして愛用している。購入は昨年7月。日産アトラスF24で横幅169センチ、最小回転半径4.2メートルの6人乗り。2リットルレギュラーガソリンで燃費は街中8キロ、高速10キロだ。元消防車である赤い車体が注目を集めている。

「被災地では土地勘がないため消防団の方が案内してくださいました。そのためスムーズに避難所を回れ、物資を下ろすことができました。『車について何か聞かれた?』と名古屋に帰ってきて尋ねられるのですが、“自家用消防車”について話したりするような余裕は全然ありませんでしたね」と現地の緊張感を伝えた。

 自家用消防車さんにはもうひとつ大切なミッションがあった。余震が続く中、避難所生活を続けることが厳しい友人の親戚のおばあちゃん2人(90代と70代)の救出だ。6時間にわたって車を運転し金沢市内のホテルで待つ親戚に安全に引き渡した。「親戚同士、泣きながら抱き合う姿にもらい泣きしてしまいそうでした。現地の今の様子をXユーザーの皆さんに共有できたことは良かったと思います」としみじみ語った。

 名古屋から能登半島へと“命の水”を大量に運んだパワフルな元消防車。「今回、帰路についてからXを書いたのですが現地で活動している方々からも連絡をもらい、細かい情報共有をすることができました」とのこと。一般ボランティアの募集が始まったら再度、現地入りする予定という。

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