飯塚健監督、辛口・東野圭吾氏の絶賛に「ホッとした」 重岡大毅主演のミステリー映画

WEST.の重岡大毅(31)が単独初主演した映画『ある閉ざされた雪の山荘で』(1月12日公開)のメガホンを取ったのは、『ステップ』や『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』の飯塚健監督(44)だ。人気作家・東野圭吾が1992年に発表した同名小説が原作の密室ミステリー。主演級の俳優8人が集まったが、飯塚監督はキャストのどこに魅力を感じたのか。

映画『ある閉ざされた雪の山荘で』監督を務めた飯塚健【写真:ENCOUNT編集部】
映画『ある閉ざされた雪の山荘で』監督を務めた飯塚健【写真:ENCOUNT編集部】

重岡大毅が単独初主演の映画『ある閉ざされた雪の山荘で』

 WEST.の重岡大毅(31)が単独初主演した映画『ある閉ざされた雪の山荘で』(1月12日公開)のメガホンを取ったのは、『ステップ』や『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』の飯塚健監督(44)だ。人気作家・東野圭吾が1992年に発表した同名小説が原作の密室ミステリー。主演級の俳優8人が集まったが、飯塚監督はキャストのどこに魅力を感じたのか。(取材・文=平辻哲也)

 物語は、目隠しされた7人の舞台俳優が海沿いのバス停で降りるところから始まる。7人は演出家によって、次回作の舞台の最終オーディションとして集められ、別荘で4日間過ごすことになる。台本は「大雪で閉ざされた山荘」という設定で、連続殺人事件が起こるというもの。しかし、実際に一人が消え、また一人……。これは演出なのか事件かが分からなくなる……。

 密室で起こる俳優同士の心理戦、駆け引きがだいご味。作品は東野氏から「トリッキーな世界観が監督の手腕によって完璧に成立させられており、そこを舞台とする役者さんたちの演技も見事でした。これぞミステリ映画です」と絶賛された。

 多数の映像作品がある東野氏だが、映像化作品への評価は辛口でも知られる。

「東野さんは日本で知らない人はいない人気作家です。試写に立ち会ってくださった時はめちゃくちゃ緊張しましたし、(評価をいただき)ホッとしました。東野作品を多数手がけたプロデューサーさんからも『こんなコメントを出してくれること自体ないから』と言われました。演出のことにも触れてくださったこともすごく光栄でした」

 原作の舞台は早春の乗鞍高原のペンションだが、映画では海辺の別荘に置き換えられ、視覚効果が増している。また、演出家からの指示も、手紙から現代的な手段にアップデートされている。

「30年前はインターネットも普及していない時代でしたので、それを現代に置き換えることから始めました。原作の舞台は、ロッジのようなイメージだったのですが、あえて海辺の別荘にしています。ロケは千葉県館山で行いました」

 20~30代前半の俳優たちしか出ない作品は初期の代表作『荒川アンダー ザ ブリッジ THE MOVIE』(2012年)以来。重岡のほかにも、中条あやみ(26)、岡山天音(29)、西野七瀬(29)、堀田真由(25)、戸塚純貴(31)、森川葵(28)、間宮祥太朗(30)といった主演を張れる実力派を起用し、青春群像劇としても成立させた。

重岡大毅、中条あやみら名だたる俳優陣が出演【写真:(C)2024映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会  (C)東野圭吾/講談社】
重岡大毅、中条あやみら名だたる俳優陣が出演【写真:(C)2024映画『ある閉ざされた雪の山荘で』製作委員会 (C)東野圭吾/講談社】

 主演の重岡は、オーディションに参加した中で、唯一、劇団に所属していない“部外者”久我。

「関係値が出来上がっている集団の中に一人だけ異物として入るので、基本的には周囲の動きを受ける役回りですが、受けが柔軟で広い視野を持っています。それはキャスティングの段階でも感じていましたが、印象通り。あとは本当に場を盛り上げてくれます」

 中条は公演直前に役を奪われた女優・中西を演じる。「不思議な人でした。きれいな容姿とは違って、中身は庶民的。大阪独特の地元話がユニークで、その意外性が面白かったです。演技に奥行きがあって、目に力がある」

 西野は世間知らずなお嬢様女優、元村役。「一番映画に向いていると思った人です。肉眼よりカメラを通して見ると、“映える”。スクリーン映えする人です」

 岡山、堀田、戸塚は2度目の起用で、過去の信頼に基づいて抜てきした。

 岡山は恋愛感情をこじらせたクセの強い怪優・田所役。「重要な役なので、絶対、天音がいいです、と強く言わせてもらいました。考えることを諦めない人で、演技を“提出”した後も、もっといい演技があるはずと不安を持っている。『用意スタート』の声がかかると、スイッチが入るんですが、ちゃんと俯瞰して見えているから、次のテイクの話もできる」

 戸塚は優しい劇団リーダー、雨宮役。「約5年ぶりの仕事でしたが、器用さに磨きがかかった。集団にいても、ちゃんと抜けてきてくれる人」

 堀田は役のためなら勝ち気になれるワガママ女優・笠原役。「すごい仕事量をこなす中、今までやっていなかった、きつめの性格の役をやって欲しかった。電話をかけて叫ぶシーンに松田優作さん感があって気に入っています」

 間宮は実力を兼ね備えた劇団の花形俳優・本多役。「思慮深く、真っ向勝負で挑んでくる感じがしました。スケジュール的にリハーサルをする時間がなかったのですが、ちゃんと合わせて演じることができる」

 森川は、圧倒的な演技を見せる天才女優・麻倉。「演技がうまいかどうかは楽器の上手下手と違って、分かりにくさがあります。僕らも煮えきれない思いで撮っているのですが、大切な場面で相談ができて、その読解力も素晴らしかった」と評する。

 男女4人の青春劇『虹色デイズ』(2018年)、長野五輪のスキージャンプ・ラージヒルの逆転金メダルの裏側を描く『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』(21年)、高校球児のコメディー『野球部に花束を』(22年)など多彩なジャンルを手掛けているが、代表作を聞くと、重松清の短編連作を山田孝之主演で映画化した『ステップ』(20年)を挙げる。

「長い時間をかけて、すごく気持ちを込めて挑めた作品です。重松清さんの原作にやられてしまって、その日のうちに読み切って、次はこれだと思いました。短編連作を1本の映画にすることも挑戦でした。重松さんも撮影現場に来てくださり、作品も気に入っていただけた」

 本作ではミステリー初挑戦になった。

「俳優が似た役をやりたがらないように、監督もそうあるべきだと思います。私は怖いのが苦手なので、ホラー以外いろんなジャンルを撮りたい。先輩世代と一人称映画を作りたいとも思っています」と飯塚監督。次回作として、オリジナル作品と原作モノの映画化の準備を進めている。

■飯塚健(いいづか・けん)1979年生まれ。2012年の監督・脚本作『荒川アンダーザブリッジ』で注目を集め、「イロドリヒムラ」(12年、ドラマ)、『風俗行ったら人生変わったwww』(13年)、『大人ドロップ』(14年)、「REPLAY&DESTROY」(15年、ドラマ)、『笑う招き猫』(17年、ドラマ・映画)、『榎田貿易堂』(18年)、『虹色デイズ』(18年)と幅広いジャンルをカバーする。近年の映画作に、『ステップ』(20年)、『FUNNY BUNNY』(21年)、『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』(21年)、『野球部に花束を』(22年)。最新作は5月に公開された『宇宙人のあいつ』。また、コットンクラブでの芝居×生演奏×食という会場一体型ライヴショウ「コントと音楽」シリーズはライフワークとなっている。

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