ビッグモーターをネタにしまくり 除草剤も… 注目集めたオーナーの愛車は33年目「乗る気なんかさらさらなかった」

2023年は自動車業界が激震に包まれた1年だった。中古車販売大手「ビッグモーター」による保険金の不正請求問題が発覚し、大騒動になった。ビッグモーターの余波は、自動車イベントにも。ナンバーの代わりにビッグモーターの自作プレートをつけ、除草剤まで用意する車両も現れた。ひときわ注目を浴びた48歳オーナーに詳細を聞いた。

「ビッグモーター」のロゴを自作した【写真:ENCOUNT編集部】
「ビッグモーター」のロゴを自作した【写真:ENCOUNT編集部】

もしかして被害者? 足を止める人続々

 2023年は自動車業界が激震に包まれた1年だった。中古車販売大手「ビッグモーター」による保険金の不正請求問題が発覚し、大騒動になった。ビッグモーターの余波は、自動車イベントにも。ナンバーの代わりにビッグモーターの自作プレートをつけ、除草剤まで用意する車両も現れた。ひときわ注目を浴びた48歳オーナーに詳細を聞いた。

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 昨年11月、埼玉・上尾で行われた自動車イベント。スカイラインGT-Rを始め、名車150台が集結したが、その中に、別の意味で注目を集めた車両があった。

 ナンバーには「ビッグモーター」のロゴが入ったプレートが光る。見学に訪れた人々は何事かと、足を止めていた。

 オーナーに聞くと、「自分で作りましたよ。ないものは作りますから。サイトのロゴを印刷して、カッティングシート切って、ペタって終わりですよ」とにやり。

 もしかしてビッグモーターの被害者…?

「いいえ。ネタです。このネタに乗らなきゃってだけですね。10月からイベントでつけています。今日は風強いので置いてないですけど、除草剤もありますよ」

 どうやら“あの話題”に便乗しているらしい。

「皆様から大変、ご好評をいただきまして。いや、どちらかというと、この愛車の会になんてことをするんだというお叱りを受けています。なんて下世話なものを置くんだと。指さされて笑われる回数は増えました」

 あくまで車を見てもらうためのきっかけというわけだが、愛車の1990年式日産ローレルメダリストに関してはいたって真面目だ。もともとの持ち主はオーナーの父親で、90年5月に新車で購入した。価格は約230万円だった。

 車が家に届いた夜のことは今でも鮮明に覚えている。15歳だったオーナーは、車の購入を検討していた父に、「ツインカム(エンジン)のメダリストを買ってほしい」と希望を伝えた。当時はよくも悪くも車雑誌を読み込んでおり、「頭だけはでかかったので」と父の理解も得たつもりだった。

 ところが…。

「結局、車に頓着しないおやじだったので、シングルカムメダリストを買ってきたんです。ひと言も言わずに仕事帰りに買ってきて、自慢げに注文書見せて、『どうだ。買ったぞ』って言うから、『なんでシングルカム買ってんだよ!』ってけんかになりました」

 出だしの印象は最悪だったが、18歳で免許を取ると、次第に車に乗る機会は増えていった。「乗る気なんかさらさらなかった」という浅はかな考えは、やがて変わり、「最終的には奪っちゃいました」と、車を引き継いだ。

 それにしても、なぜ33年間も持ち続けているのか。

オーナーが描いた愛車のイラスト【写真:ENCOUNT編集部】
オーナーが描いた愛車のイラスト【写真:ENCOUNT編集部】

「精神からつながっています」 口からあふれる思い

「まあ、金がないので」と、冗談めかすオーナーだが、口からあふれるのはローレルへの並々ならぬ愛情の言葉だった。

「他に車? レガシィB4を持っていますよ。僕が欲しくて新車で買いました。ただ、なんのかんの言って、こっちのほうが乗りやすいというか、完全にもうあれですよね、体に染み込んじゃっている。こればっかり乗っているので。レガシィのほうは15年たちますけど、7~8万キロぐらいしか乗ってないんです。だから、いつもカバーをかけています」

 車体の色はダークグリーンと渋い。それもオーナーの趣味ではなかったが、「完全に俺そのものですね。もう精神からつながっています。さすがに32万キロ乗っちゃっているので」と、まるで一心同体と言わんばかりに続けた。

 実際にハンドルを握ると、車の奥深い魅力にも気づかされた。

「すべてについて手頃です。手頃な性能と手頃な燃費。あと、壊れない。大きさもいいし、本木目パネルと、スウェードシート、ボンネットのマスコットまでついている。今、同じ230万でこの車作れと言ったら、完全に無理でしょうね。その3点セットが、このお手頃価格の車についている。なんでも載っているので、車界で言うところのお子様ランチみたいです」

 一番のアピールポイントというのがマニュアルミッションだ。「クラッチつきなんですけど、クラッチつきでこれぐらいの車ってなかなかない。しかも、シングルカムは街乗りで乗りやすい。だから、ずっと乗り続けている感じですよね」と、普段使いに抜群の相性を見せていると主張した。

 33年の歴史の中で、最大のピンチは11年前。雨の中、運転中に事故を起こし、車がボロボロになったことがあった。諦めてソアラやグロリアを買おうと頭をよぎったが、選択したのはローレルの修理だった。「インターネットで調べたら、あれよあれよと部品がそろっちゃって、板金から全部込みで37万で直してしまいました」

 父はすでに他界しているが、これからも一途愛を貫くつもりだ。小学校1年生の娘も車好きで、車イベントについてくるなど気に入っている。「運転席に同乗するんですよ」と、オーナーはちょっぴり誇らしげだった。

 最後に改めて、ビッグモーター騒動について聞くと、「ビッグモーターって、僕は1回も行ったことないんですけど、アイスクリームとかジュースが飲み放題で、オイル交換し放題で、夢のような会社だと思っていたら、そんな(不祥事まみれの)会社だったんだなって。だから、大手でも信じちゃいけないなっていうことですかね。いましめとしては」と、真剣な表情で結んだ。

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