不仲もパワーの源 共に55歳、解消された永田裕志&鈴木みのる“宿敵タッグ”の行く末

毘沙門(後藤洋央紀、YOSHI-HASHI)のV3に終わった新日本プロレスのワールドタッグリーグ戦。過酷な優勝争いはもちろんだが、話題を集めたのが永田裕志と鈴木みのるの宿敵タッグだった。

修羅の形相で攻め込む永田裕志【写真:柴田惣一】
修羅の形相で攻め込む永田裕志【写真:柴田惣一】

毎週金曜日午後8時更新 柴田惣一のプロレスワンダーランド【連載vol.176】

 毘沙門(後藤洋央紀、YOSHI-HASHI)のV3に終わった新日本プロレスのワールドタッグリーグ戦。過酷な優勝争いはもちろんだが、話題を集めたのが永田裕志と鈴木みのるの宿敵タッグだった。

 6人タッグマッチでの七番勝負を経て、二人のわだかまりにいったん終止符を打ちコンビを結成。「昨日の敵は今日の友」となるべくリーグ戦に参戦したものの、二人のコンビネーションはいまひとつで結果は2勝5敗。残念ながら1+1が5にも10にもなるタッグとはいかなかった。

 だが、「この二人が組んだのが一番良かった。闘い方も興味深かった」というファンも多く、リーグ戦では吉とは出なかったが、実力者二人である。チームが続行するのか否か、今後のタッグ戦線を左右しかねない。公式戦最終戦でついに鈴木が永田の握手に応じたことで、今後もタッグ戦線に名乗りを上げ、タッグベルト狙いかと思われた。

 ところが、12・10熊本大会の6人タッグ戦終了後、鈴木が口火を切った。「組んで闘うよりも、俺はお前の顔を殴っている方が楽しい。お前の後ろやコーナーにいるとイライラする」と悪態をついた。

 これには永田も「共闘していても、あれは本当の鈴木の姿ではない、と感じていた。本当の意味で気持ちが通じ合うことはなさそう」と応じた。

 やはり、二人は殴り合い、主張をぶつけ合った方が似合う。論客の二人のやり取りは秀逸。ノー・フィアーやGET WILD、最近では黒潮TOKYOジャパンと立花誠吾のやり取りを思い出させる。

鈴木みのると永田裕志の握手も実現したのだが【写真:柴田惣一】
鈴木みのると永田裕志の握手も実現したのだが【写真:柴田惣一】

永田は「今日も頑張りますゼァ」と連日SNSで発信

 プロレス界で一時代を築き上げた二人。55歳になったが、レジェンド枠に収まるつもりはない。永田は「今日も頑張りますゼァ」と連日SNSで発信している。鈴木も今現在を大切にする主義。常に全盛期とばかり、コンデションも維持している。

 元より、永田は「ミスターIWGP」と呼ばれた男。長州力から「天下を取り損ねた男」と揶揄されたが、新日本が苦しい時期にエースとして踏ん張っていた。

 今年2月には宮原健斗を下し三冠ヘビー級王座を奪取。新日本、全日本プロレス、ノアのメジャー3団体のシングル、タッグ王座を獲得し、シングルリーグ戦も優勝。メジャー完全制覇を達成している。そして、ゼアッ! の敬礼と唯一無二のパフォーマンス「冴え渡る白目」はファンの脳裏に深く刻まれている。

 鈴木はプロレスに加え格闘技イベントでも活躍。入場テーマ曲「風になれ」は会場で大合唱が巻き起こるほど定着し、花道に登場するやファンを熱狂させ存在感たっぷり。強さと怖さを兼ね備えたファイトスタイルに支持率は高い。

「世界一性格の悪い男」から「プロレス王」にキャッチフレーズは移行しつつあるが、毒気があふれながらも、根底にはプロレスへの熱い想いに、対戦相手をいじりながらも立てる男気が伝わってくる。

 二人は同じ年のライバル。高校生時代にレスリングで覇を競い始めてから40年、一足早く鈴木が1987年に新日本に入門したが、89年にUWFに移籍。92年に新日本の門を叩いた永田とはすれ違ったものの、その後は様々な場面で衝突している。

 実は永田はUWF入りも考えていた。「もし」はご法度ながら、二人の命運がどうなっていたのか。色々と考えさせられる二人の運命の糸。これからも絡み合っていくはず。

 同じく不仲で、全日本の最強タッグに出場した諏訪魔と鈴木秀樹との対戦を望む声も聞かれる。

 不仲なタッグは、阿吽の呼吸とはいかないので意思の疎通が取りにくい。コンビネーションがうまく行かずチームとして機能しないこともあるが「あいつよりいいところを見せよう。目立ってやろう。俺の方が強いんだ」という気持ちも大きくなる。タッチワークやカットプレーなどは不安だが、思いもよらない強力コンビになる場合もある。

 不仲4人の対決はまさにカオス。諏訪魔と永田のレスリング対決。みのると秀樹の鈴木対決は、現代のゴッチVSロビンソンだ。無効試合になる危険性もあるが、とんでもない熱戦になる可能性もある。

 いずれにしろ、個々は実力者。歯車がうまくかみ合えば、極上のタッグチームになる。

 様々なタッグチームが活躍してきたが、公私ともに仲の良いコンビは意外に少ないという。山本小鉄、星野勘太郎のヤマハ・ブラザーズ、グレート小鹿、大熊元司の極道コンビが一緒に行動するのは、会場、リングに限られていたようだ。公私ともに息があっていたのは、天山広吉、小島聡のテンコジ、邪道、外道の邪外だろうか。

 いずれにせよ、解消された永田と鈴木の宿敵タッグの今後から目が離せない。

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