K-1の“生みの親”石井館長が激白「BreakingDownにホントの悪いヤツは出てきません」

今から30年前の1993年にK-1を世に誕生させた“生みの親”石井和義館長(正道会館宗師)は、その後、日本全国に一大格闘技ブームを誕生させた。今回は石井館長に、最近話題の「BreakingDown」について話を聞いた。

K-1の“生みの親”石井和義館長
K-1の“生みの親”石井和義館長

石井館長はバン仲村が好き

 今から30年前の1993年にK-1を世に誕生させた“生みの親”石井和義館長(正道会館宗師)は、その後、日本全国に一大格闘技ブームを誕生させた。今回は石井館長に、最近話題の「BreakingDown」について話を聞いた。(取材・文=“Show”大谷泰顕)

「僕はバン仲村さんとか好きだよ」

 石井館長に最近話題の「BreakingDown(以下、BD)」について水を向けると、そう答えた。バン仲村は、BDでもひと際キャラ立ちしている実業家である。さらに石井館長は、30年前に生み出されたK-1がなぜ革新的だったのかを解きながら、BDについて話しはじめた。

「僕はK-1で1日に3試合戦わせて、世界一を決めるっていう手法を作り出した。(BDは)あれはあれで新しいシステムというか手法だよね。世間のケンカ自慢を集めて、俺のほうが強いんだって。誰が強いんだ。実際こいつをやらせたらどうなんだろって、服を着せて、あおって。でも試合はグローブを着けて、レフェリーがいて。試合時間は1分間。だから、どうってことないルールなんだけど。1分間だし、ちゃんとグローブを着けているからケガもないし。だけど、そこに行き着くまでの手法が面白かったんだよ。だから、あの新しいシステムっていうかやり方を朝倉(未来CEO)さん? 溝口(勇児COO)さんかな? あの辺の方がみんなで作ったんだから、あれはあれで素晴らしいと思うよ」

 かつてK-1で一世を風靡(ふうび)した石井館長がBDをそこまで評価するとは意外といえば意外だが、懐の深さと寛容さはさすがだなと感服した。

「みんな練習しているかしてないかは分からないけど、練習したいんじゃない? とか、メディアに出たら、変なことできないよね? とかさ。日本はそういう元気のいい子が活躍する場が、失われてきているじゃない。でも、彼らは頭がよくて、ひと一倍エネルギーがあるから社会からハミ出るわけよ。社会って、日本の今あるシステムに入れ込もうとしているじゃない。でも、そういうことだけが人生じゃないから。それにいち早く気づいて、自分のなかのエネルギーを発散したいっていう表現が変わっているだけであって。いろいろね」

 そう言って石井館長は、日本の社会情勢と絡めながらBDに関わっていく選手たちの動機を推察していく。

「元々悪い人なんていないし、元気のいい子が集まってやっていく。そしたら、あの場はあの場で盛り上げないと。『キミは強そうだけど、僕のほうが強いよ』みたいなことをお上品に言ったって盛り上がらないじゃない。あれはあれで番組として面白いなって見てあげないと。あれを真剣に取っちゃダメだよ。嫌な人は見なかったらいいので。見ている人たちは面白いから見ているんだから」

石井館長のXに投稿された、17日にエディオンアリーナ大阪で開催されたカラテGPの模様
石井館長のXに投稿された、17日にエディオンアリーナ大阪で開催されたカラテGPの模様

魔裟斗を巻き込んだ瞬間にBDの勝ち

 BDに関しては、時折、子どもたちへの悪影響について論じられる場合があるが、それに関して石井館長は「子どもたちだって、あれを見て、ああいうふうになろうなんて思ってないよ。あれはあれで面白いなって。今の子どもはしっかりしているから。『子どもの教育が……』なんて言う人もいるんだろうけど、そんなことは全然関係なくて。ちゃんと分かってますよ、子どもたちはね」と語った。

 ちなみに最近、元K-1ファイターであり、K-1 WORLD MAXを2度制した実績を持つ魔裟斗が、BDに関連した見解を示して物議を醸した。

 魔裟斗いわく、「不良やヤンキーが輝く時代になってしまうと、格闘技の未来はなくなる」というもの。これに関して石井館長は「たとえば魔裟斗くんがそんなこと言ったって、魔裟斗くんを巻き込んだ瞬間に、BDの勝ちだから。だからホントは、魔裟斗はあそこに行かないで、ドンと構えていたほうがいいんだよね」と話すと、魔裟斗の真意を以下のように推察した。

「魔裟斗が言いたいことは本当は違うんだよ。あれはそういうことを言った後に、『ちゃんとトレーニングして、彼らがどんどん強い選手になったらいいですよね』みたいなことをちゃんと言っているわけよ。でも、魔裟斗の言った発言の一部分だけ切り取られて記事を出しちゃうから。だからあの辺はマスコミがね。だからちゃんと言ったことを最後まで載せてあげてほしいよね」

 今回、魔裟斗チャンネルの当該動画を確認すると、「不良が更生してスポーツをやるんだったらいいけど、俺もヤンチャな頃もあったけどさ。途中から自分のなかでアスリートに変わってったからね」と話している。おそらく石井館長の言っていることはこの部分を言っているのだろう。また、メディアに掲載された記事も、そこに触れているのかもしれないが、見出しやタイトルでその言葉が一人歩きしてしまった可能性も十分考えられる。ともあれ、この話を聞く限り、石井館長と魔裟斗の間には、目に見えない圧倒的な信頼関係が存在しているように見受けられた。

「別に魔裟斗くんの擁護をしているわけじゃないけど、魔裟斗も本当はイケイケの子だったから。それがK-1に上がって、みんなの協力の元にああいうふうになっていくわけで。本人だって、一番彼が分かっているよ。だから、ああいうふうに言っちゃかわいそうだよね。だからBDはBDで、ひとつの手法として面白いかなと思うし、僕なんかはみんなかわいいよねと思って見てるよ。みんな、かわいいじゃない。みんな戦って、リングの上に上がるんだから。街でケンカしたらいいのに」

 そこまで話すと、石井館長は次の言葉を発した。

「だけど、ホントの悪いヤツはあそこに出て来ないから。出てきませんよ」

 いとも簡単にここまで言い切ってしまう石井館長に、思わず修羅場のくぐり方が違うことを感ぜずにはいられなかった。K-1が誕生して30年。時代は常に新しい手法と新たなるスターの誕生を欲している。(一部敬称略)

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