櫻坂46藤吉夏鈴「山崎天には甘えっぱなし」 初づくしの1年で心境変化「人に頼るように」

櫻坂46の藤吉夏鈴が、来年1月19日スタートのWOWOW連続ドラマW-30『アオハライド Season2』で本格的にドラマ初出演を果たす。前身グループの欅坂46でのデビューから6年。クールなイメージを持たれてきた彼女が、胸の奥に秘めた「表現者」としての思いをENCOUNTに語った。

『アオハライド Season2』に出演する藤吉夏鈴【写真:矢口亨】
『アオハライド Season2』に出演する藤吉夏鈴【写真:矢口亨】

WOWOWドラマW-30『アオハライド Season2』で葛藤を抱える役

 櫻坂46の藤吉夏鈴が、来年1月19日スタートのWOWOW連続ドラマW-30『アオハライド Season2』で本格的にドラマ初出演を果たす。前身グループの欅坂46でのデビューから6年。クールなイメージを持たれてきた彼女が、胸の奥に秘めた「表現者」としての思いをENCOUNTに語った。(取材・文=大宮高史)

 2023年は藤吉にとって飛躍の年になった。櫻坂46の6枚目シングル『Start over!』で表題曲初センターを務め、テレビ朝日系バラエティー『あざとくて何が悪いの?』内のドラマ『あざと連ドラ』に出演。『サムライマック』のCMにも登場した。その勢いのまま、『アオハライド Season2』で青春ドラマの高校生を演じる。

「実はSeason1が始まる前の予告編で、後ろ姿だけでちょっと出させていただいていたんです。それをグループの山崎天に見せたら、もう大爆笑してくれて。メンバーにもメイクさんにも一瞬で広まって(笑)。私が思った以上にみんなが喜んでくれました」

 累計発行部数1300万部を超える咲坂伊緒氏が原作の漫画『アオハライド』をSeason1、Season2の2部作として連続ドラマ化した同作は、高校生の吉岡双葉(出口夏希)と馬渕洸(櫻井海音)の関係を描くラブストーリー。Season1で双葉と洸の仲が深まったところに、Season2で洸の長崎時代の同級生で、藤吉が演じる成海唯が登場した。物語は新展開に入り、双葉と洸の気持ちがすれ違い、唯も洸や菊池冬馬(曽田陵介)との関係の中で葛藤を抱えてしまう。

「唯はすごく一途な性格のいい子なんです。けれども、Season1の展開から双葉と洸ちゃんに感情移入してきた方が多いと思います。なので、『嫌な恋敵ではなくて一途さにも共感してもらえ、愛される女の子としての唯の魅力を伝えたいな』と考えて、役を作ってきました」

 唯の感情を理解しようと役に強く打ち込むあまり、カメラの前を離れても、唯としての感情が出ることがあったという。

「『どうして、こんなに純粋で自分の感情に正直でいられるんだろう』と、演じながらうらやましくも思いました。彼女の心情を想像しながら台本や原作を読んでいると、私まで胸が苦しくなる瞬間が何度もありました。撮影期間中はグループに帰っても、(唯が思いを寄せる)洸ちゃんを思って、急に涙が出てしまったり……相当唯になりきっていた気がします。」

 唯の長崎弁で話すセリフも、物語にアクセントをつけている。

「母が長崎出身で、私も幼い頃は長崎に住んでいました。ただ、いざ話そうとすると言葉づかいも全く覚えていなかったですね。台本に抑揚のメモまで書き込んで、方言指導の先生とずっと一緒にいました」

 そんな中でも、出口ら共演の俳優と楽しい現場をつくることができていた。

「出口さんは本当にかわいい方です。ラストのロケの日にプレゼントしたクッキーを食べてくれたときのしぐさなんて、役ではライバルなのに恋に落ちそうでした。櫻井さんの第一印象は『猫』でした(笑)。休憩中にふらりといなくなっていて、気づいたらコーヒーを持って戻ってきていたり。おかげで私も最近、お仕事中に1人で散歩する癖がついちゃいました。撮影の合間に気づいたら、海辺まで行っていたこともあります」

「(グループでも)MVやライブで曲の世界をどう表現しようかと考えることは好きでした。それが、『お芝居もやってみよう』と思い立った始まりでしたが、いざ演じると別物でした」

 感情をどう演技に込めるか、熟考しながらの日々だった。

「櫻坂での作品の中では、自分の中にある感情を強調して皆さんに届ける心構えでした。例えば、MVでの表現に決まった台本はなくて、私が解釈するままに涙を流すこともできました。ところが、ドラマでは、もともとは持っていない感情をモニターを通して伝えなきゃいけないと考えて、『自分の中にない心情をどう表現したらいいのか』と考え、苦戦していました。それが刺激的でもありました」

「グループのロケでも気が付くとひとりで散歩していたりしますね」とも【写真:矢口亨】
「グループのロケでも気が付くとひとりで散歩していたりしますね」とも【写真:矢口亨】

役に入り込んで、オフにも涙が

 演じるキャラクターが持っている感情をいかに自分ごととして実感できるか。藤吉なりのアプローチの結果、唯になりきって洸を思う気持ちが高まり、オフにも涙がこぼれた。

「唯は本当は明るい子ですが、『どうしても洸ちゃんを手に入れたい』って思うあまり、シリアスに感情を露わにしないといけない場面もあります。でも、嫌な子ではないし、あまり笑わない私が一生分も笑うような経験になりました」

「サムライマック」のCMでは、堺雅人と共演。鋭い眼光で、自分の道を切り開こうと決意する大人の女性を演じた。『Start over!』でのパフォーマンスを見たCMプランナーの澤本嘉光氏から届いたオファーだった。

「お話を聞いたときは信じられなかったです。(グループから離れて)1人でCMに出るのも初めてで、両親もすごく喜んでくれました。澤本さんのラジオにも呼んでいただいて、その時のトークも面白かったのでオファーをくださったと聞きました。長丁場の撮影でしたが、たくさん褒めていただいて勢いのままに演じられました」

「あざと連ドラ」では、櫻坂46でのクールなアイドル像に、新しいイメージが加わった。22年の第5弾で主人公の親友役で登場。同年秋から半年間続いた第6弾では、主人公のテレビディレクター・片寄葵を演じた。友人の恋愛模様に翻弄されながら、自身にも恋の予感が近づく女性になりきって奮闘した。

「『あざと連ドラ』は素の私のままで演じられました。葵がほとんど自分自身のような性格で……。ほぼ初めての外現場だったのですが、思っていたよりも人と話す時間もできました。不器用な私には『櫻坂と外仕事の両立なんてできない』と思っていたのですが、やってみると、どんどん好奇心が出てきました。むしろ、両立が楽しいです。いろんな方とご一緒する機会が増えて、自分のことやグループのことを客観的に見られるようになったのかもしれません」

 着実に表現力を開花させているが、「自分が変わっていくことが怖い」とも言った。

「『すごく変わったな』とは実感しています。例えば昨年(22年)の櫻坂46の2ndライブツアーのときは、まだ生の舞台で臨機応変に、曲ごとに切り替えてのパフォーマンスがうまくできていませんでした。今年のツアーはその切り替えがテキパキとできるようになって、映像を見返しても『自分じゃない人がいる』という感覚になるほどでした。けれども、そうやって昔の自分でなくなることが寂しくもあります」

パフォーマンスとアイドルらしさのギャップも、グループの内外で注目されるゆえんだ【写真:矢口亨】
パフォーマンスとアイドルらしさのギャップも、グループの内外で注目されるゆえんだ【写真:矢口亨】

 今年、櫻坂46はフランス・パリとマレーシア・クアラルンプールで「Japan Expo」のライブに出演した。自身はドラマレギュラーにCM出演と、初めてづくしの1年にもなった。

「意図して『自分を変えよう』と思っていたわけではないです。周りの方はすごく褒めてくださるのですが、『慣れ親しんだ藤吉夏鈴ではなくなってしまうかも』という怖さも感じます。でも、人ってそうして成長していくんでしょうね」

 文字通り、今は焦らず、一歩ずつ表現者としての引き出しを増やしているところだ。

「外のお仕事の現場でよく、『考えすぎかもね』と言われました。だから、最近は理屈で考えすぎないようにして、人も頼るようになりました。特に櫻坂に戻ると、山崎天には甘えっぱなしです。ふらりと行動することが増えて、以前より、グループのみんなが構ってくれるようになったかもです」

 決して多弁ではないが、「今、すごく楽しいです」と言い、どんな仕事もチャンスに変える気概を感じさせる。

「いろんな人との会話を楽しめるようになりました。その中で、櫻坂を支えてくださっている皆さんが作品に込めてきたこだわりや思いも聞くことができて、発見がたくさんあるこの毎日がとにかく楽しくて。2回も海外公演ができたので、次はワールドツアーとか……夢は大きく、何にでも挑戦していけそうに思います」

□藤吉夏鈴(ふじよし・かりん)2001年8月29日、大阪府出身。18年8月、坂道合同オーディションに合格し、欅坂46に2期生として加入。櫻坂46に改名後のファーストシングル『Nobody’s fault』以降、7作連続で表題曲メンバー入り。今年6月の6枚目シングル『Start over!』で表題曲初センターを務める。グループは今年の『NHK紅白歌合戦』に返り咲き。165.1センチ。血液型A。

※山崎天の「崎」の正式表記はたつさき

ヘアメイク:渋谷絵里奈
スタイリスト:市野沢祐大(TEN10)

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