再婚や大人向け特集も、創刊30年のゼクシィが支持され続けるワケ 「結婚するのが当たり前、ではない」

結婚情報サービス『ゼクシィ』が今年で創刊30年を迎え、様変わりする令和の結婚事情への挑戦を続けている。30年前は「出会いを応援」から始まり、ミレニアム婚ブームを経て、プロポーズ・結婚の“象徴的アイテム”として地位を確立した。一方で、結婚式の在り方は、誓いのキスを省略するなど、“こうあるべき”という既成概念にとらわれないスタイルに変容している。社会的価値観も変化。「結婚をしない」選択肢も広まり、多様性がキーワードになる新時代をどう歩んでいくのか。媒体の歴史の約半分となる14年間在籍してきた、編集部門トップの統括編集長を務める森奈織子(なおこ)氏に、“これまでとこれから”を聞いた。

変化する結婚式のスタイル。新郎新婦とゲストが同じ卓で食事をする形式も【写真:リクルート提供】
変化する結婚式のスタイル。新郎新婦とゲストが同じ卓で食事をする形式も【写真:リクルート提供】

「パパパパーンの唄」CM効果で知名度アップ、多様なカップルの広告起用も話題に

 結婚情報サービス『ゼクシィ』が今年で創刊30年を迎え、様変わりする令和の結婚事情への挑戦を続けている。30年前は「出会いを応援」から始まり、ミレニアム婚ブームを経て、プロポーズ・結婚の“象徴的アイテム”として地位を確立した。一方で、結婚式の在り方は、誓いのキスを省略するなど、“こうあるべき”という既成概念にとらわれないスタイルに変容している。社会的価値観も変化。「結婚をしない」選択肢も広まり、多様性がキーワードになる新時代をどう歩んでいくのか。媒体の歴史の約半分となる14年間在籍してきた、編集部門トップの統括編集長を務める森奈織子(なおこ)氏に、“これまでとこれから”を聞いた。(取材・文=吉原知也)

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「ゼクシィの30年間は『誰かと一緒に生きていく』のテーマを貫いてきました。今は正解のない時代で、世の中どんなことにおいても変化の大きい時代です。その中でも、結婚をすることで、家族ができることで、人生が豊かになって、頑張るモチベーションにもなる。人生100年時代で、形はいろいろあれど、家族がいることでより人生が豊かになることもある。結婚を考えているカップルを応援したい。そういった基本的な考えを持っています。お祝いの形も変わってきています。今まで新しいものを生み出してきたように、これからも私たちがどんどん進化していきたいです」。森氏はこう思いを込める。

 1993年に創刊。2001年から始まったCMが媒体としてのステップアップの1つに。「パパパパーンの唄」が流れ、時の人の女性タレントが出演するCM効果は絶大で、知名度をより高めた。05年には“彼向け”付録を通して「彼と2人で一緒に結婚式場を探して準備する」スタイルを提唱。11年から「家族」を打ち出していく。福山雅治の『家族になろうよ』のCMソングは多くの人の印象に残っているだろう。13年からは「プロポーズされたらゼクシィ」のキャッチコピーを押し出し、幅広い情報提供にも力を注いでいる。

 社会の変化に合わせ、17年から1つの転換点を迎える。「結婚するのが当たり前、ではなくなってきました。結婚する、しないの選択肢を編集部でも意識するようになりました」。自由な選択の中での結婚の素晴らしさを伝えるようになった。そして、未曾有の新型コロナウイルス禍を経て、多様性を大事にする時代に合わせてさらにアップデート。「一般的な法律婚だけではなく、事実婚や同性婚、遠距離婚、週末だけ会う週末婚など、その人の環境や属性に合わせたスタイルに向き合うという考えです。私たちは『誰かと一緒に生きていくことを応援する』というモットーを新たに掲げています」と強調する。今月初旬には新たな取り組みの1つである、多様なカップルの広告起用が話題を集めた。

 結婚式場やプランナー、宝飾店など業界全体と手を携えて、ブライダル市場の発展に寄与してきた。新しい時代の結婚式の変化をまざまざと感じているという。

 ドレスコードはカジュアルで私服もOK。上司や主賓のあいさつは割愛。「『新郎が謝辞をする』『花嫁が手紙を読む』など、これまで当たり前とされてきた男女の性別で役割を分けるのではなく、『2人が同じ立場で作る』を意識した事例が出てきています」。乾杯の発声や謝辞を2人でこなし、新婦だけでなく新郎も親に手紙を読むケースが実際にある。高砂席を設けるレイアウトを変更し、新郎新婦とゲストが同じ卓で食事をする形式も。それに、「誓いのキスが恥ずかしいから結婚式をやりたくないという相談を受けて省略したり、おでこに軽くキス、握手の例もあります。1つ1つの儀式が自分たちにとって必要なのかを話し合い、検討、選択していくイメージです」。昔からやっているからやる、ではなく、自分たちが納得したもの、こだわりたい演出をやる。もちろん定番を選ぶカップルもいるが、結婚式の形は変貌を遂げているという。

ゼクシィ統括編集長の森奈織子氏が令和の結婚事情について語った【写真:リクルート提供】
ゼクシィ統括編集長の森奈織子氏が令和の結婚事情について語った【写真:リクルート提供】

親が子どもにプレゼント 世代を超えて受け継がれるブランド力

 一方で、ゼクシィ自体にも「若者向け」という“既成概念”がある。「どうしても『若いカップルが初めて結婚するために買う』というイメージが付いてしまっていますが、40代、50代の読者の方もいるので、今年6月発売号では、『大人向けゼクシィ』としておもてなし重視、料理の質に重きを置くようなプランを提案しました」。それに、もともと再婚カップルを意識した内容も展開しているという。

 実はこの読者とのコミュニケーションが30年の成長を支えている。「再婚や大人向けの特集は、読者のリクエストを反映したものです。ありがたいことに、毎月、400~1000件の読者アンケートをいただいています。編集部はすべてに目を通しています。同性婚についても、読者要望が年々増えていたことや当事者インタビューを通して、情報発信の必要性を感じました」と明かす。歴史があるからこそのうれしい反応も。「親世代の購読も結構あります。昔ゼクシィを読んで結婚した方々が、自分たちの子どもに買ってあげるそうで、『子どもにプレゼントしました』と報告をいただいております」。世代を超えて受け継がれるブランド力には揺るぎないものがある。

 毎年クリスマス直前に世に送り出す12月発売号は、プロポーズだけでなく、結婚が決まってすぐ必要な情報も盛り込んであり、1年で最も部数を売り上げる。コロナ禍の巣ごもりの期間で、出会いや人生設計についてより深く考える人が多くなったのか、昨年2022年は記録的なヒットに。過去最高の実売部数を記録した(部数は非公開)。

 2024年以降の新企画を進行中。森氏は「プロポーズ、式場探し、準備、結婚式、結婚生活。そこにゼクシィが寄り添っていけたらと思っています。実際に、ご自身の結婚に際して購入した雑誌をずっと保管している方が多くいらっしゃると聞きます。記念品のような捉え方で、手前みそですが、“婚約指輪のようなもの”になっていると考えております。ブランドを支持していただいていることに感謝しながら、これからも結婚したいと考えているカップルやどうしたらいいのか悩んでいる方の背中を押して応援していけたら」と、優しい笑顔を見せた。

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