【RISE】白鳥大珠が求める「分かりやすい強さ」 判定ではない「拡散される」勝ち方

キックボクサーの白鳥大珠(TEAM TEPPEN)は12月16日に行われる格闘技イベント「RUF presents RISE WORLD SERIES 2023 Final Round」(東京・両国国技館/ABEMAで独占生中継)に参戦、ザカリア・ゾウガリー(モロッコ)と対戦する。半年ぶりの戦いを前に2023年の振り返りと次戦への意気込みを聞いた。

インタビューに応じた白鳥大珠【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた白鳥大珠【写真:ENCOUNT編集部】

KO負けの目に見えぬダメージ明かす「20代前半なら勢いで試合した」

 キックボクサーの白鳥大珠(TEAM TEPPEN)は12月16日に行われる格闘技イベント「RUF presents RISE WORLD SERIES 2023 Final Round」(東京・両国国技館/ABEMAで独占生中継)に参戦、ザカリア・ゾウガリー(モロッコ)と対戦する。半年ぶりの戦いを前に2023年の振り返りと次戦への意気込みを聞いた。(取材・文=島田将斗)

 世界最大の立ち技格闘技団体「GLORY」との対抗戦に出場する。カード発表会見では「日本の代表として倒さないといけない」と語り、同席していたRISEのエース・原口健飛を見て、唇をかんでいた。悔しさ、焦り、期待、さまざまな感情を持って今回の一戦に向かう。

 今年6月に武尊とともにフランスに乗り込み格闘技イベント「MTGP Impact in Paris」に参戦。アレクシス・ソートロン(フランス)と対戦し2Rにロープから体がはみ出すほど強烈なダウンを喫していた。当初は2R・KO負けとなっていたが、3分を過ぎていたなかでのKOだったため、再審議となり結果はノーコンテストに変更されていた。当時をこう振り返る。

「いつもと違う雰囲気にのまれていました。リングに上がってもちょっとフワフワした気持ちで。どっしりと構えられてなかった。ただ相手も普通に強かったですね。計量のときとリングで会ったときとは体の大きさが全然違くて、すごい威圧感を感じましたね」

 昨年10月のYA-MAN戦から今年6月までコンスタントに試合を続けていた白鳥だが、今回は6か月ぶりの試合となる。「もうガンガン試合をしていかないと格闘家はダメ。今年は次が3試合目。もっとやりたかったな」と焦りと後悔を口にするが、休養の選択は自らでしていた。

「フランスでああいう結果になってしまったので……。選手として、長くやっていきたいのでダメージを抜くために間隔が開きました」

 復帰の道は細心の注意を払ってきた。

「極力、脳にダメージを蓄積する練習をしないようにしました。ミット打ちもサンドバッグも試合後2週間はあけましたね。マススパーリングは1か月あけたかな。その間はシャドーだったり、体作りをメインに。スパーリングは2か月やってなかったかもしれないですね」

 頭痛がするなど具体的な不調があったわけではない。格闘技とは常に危険と隣り合わせだが、選手にとって「KOされる」ことは、よりシビアになってくる。

「僕自身は打たれて何か不調があるとかないんですよ。でも脳のダメージって分からない。1年前にも同じように倒れて記憶が飛んでいるので、そういうのが2年連続で続いてしまうと、自分の知らないところでダメージが溜まって倒れやすくなることが絶対にあると思う。現役でやっていくためにも考えて練習をしました。20代前半だったら勢いで試合をしていたかもしれないけど、20代後半なので」

2023年上半期は大忙し…恋愛番組収録終わりにミット打ち

 日本での試合は3月ぶり。6月にも試合はしていたが「深夜だしPPVだし、見れていない人がたくさんいると思う。本当にファンの前で試合をやるのは久々なんですよ。『こんな強かったんだ』『もっと試合見たい』って思われるように見せたいですね」と意気込む。

 今回対戦するゾウガリーは9年前に「SHOOT BOXING」で初来日した28歳。若くしてキックボクシングのキャリアを積んできた。白鳥は「勝ち方」にこだわりたいと気持ちが前のめりになる。

「相手どうこうよりも自分との戦いですね。今後自分がどうなっていきたいか。試合をしないとファンも自分も納得できない。今回の勝ち方で来年の展望が見えてくる」

 昨年末には2023年の目標は「バズりたい」と語っていた。今年は格闘技の他にABEMAやNetflixで配信された恋愛リアリティーショー『オオカミちゃんには騙されない』シリーズに出演するなど認知を広げた。撮影期間と試合がかぶる期間もあったという。

「正直大変だった(苦笑い)。佐々木大蔵戦の10日前から撮影スタート。それが終わって気楽に参加できるなと思っていたら6月の試合が決まって。撮影は6月頭までだったんですけど、泊まり込みもあったので、練習時間をどうやって撮影の合間に作れるかみたいな。現場に後輩も一緒に連れていって、撮影が終わったらミット打ちをしたりしてましたね。それをこなしている充実感はありましたよね。試合前って余計なことをしたくないんですけど、今回のはとても良い経験でした」

 しかし、格闘家として試合をこなしていないことへの焦りはある。第5代RISEライト級王者で「RIZIN」のキックワンナイトトーナメントでは優勝経験もあるが、団体内での自身の現在の立ち位置は「正直トップではないですよね。もうRISEのいち選手くらい」と厳しい。

 話題のオープンフィンガーグローブマッチにもそれほど興味はない。「いまはRISEで上に行かないと」と口にし、複雑な胸中を明かす。

「分かりやすい強さが欲しくてそれが見せたくて。いま格闘技業界難しくてメディアとかの発信もない実力主義の選手っている。正直それが1番だと思う。でも、結局見られないと意味がない。

 だからといってメディアに出ればいいってわけじゃない。勝ち方だと思うんですよね。いまは短い時間の衝撃KOとかが動画で拡散される。『盤石の強さで勝つ』ではなくて分かりやすい強さを見せれば、実力だけでも有名になっていいんじゃないのって思います。(那須川)天心って分かりやすかった。なにか技があったりして……。そういうのは必要だなと。『ただ倒す』じゃないんですよね」

 勝利した直近の3戦は3-0の判定勝ちを収めている白鳥。勝利はしているが、突き抜けた何かを証明したい。約半年の休養期間をへてどう生まれ変わったのか。“切り抜き”されるような衝撃的な勝ち方に期待をしたい。

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