【RISE】「うそでしょ?」トーナメント参戦中に知った母の死、「棄権」よぎった田丸辰がそれでもリングに上がったワケ

立ち技格闘技団体「RISE」のトーナメント「RISE WORLD SERIES 2023 -54キロ」(12月16日、ABEMAで全試合完全生中継)がいよいよ決勝戦を迎える。トーナメント始動前の予想を良い意味で裏切る形となった田丸辰(TRY HARD GYM)に意気込みを聞いた。

決勝戦に向けて意気込みを語った田丸辰【写真:ENCOUNT編集部】
決勝戦に向けて意気込みを語った田丸辰【写真:ENCOUNT編集部】

多くの予想を良い意味で裏切っている軽量級最強決定戦

 立ち技格闘技団体「RISE」のトーナメント「RISE WORLD SERIES 2023 -54キロ」(12月16日、ABEMAで全試合完全生中継)がいよいよ決勝戦を迎える。トーナメント始動前の予想を良い意味で裏切る形となった田丸辰(TRY HARD GYM)に意気込みを聞いた。(取材・文=島田将斗)

 日本人は現世界バンタム級王者の志朗や現スーパーフライ級王者の大崎一貴が出場。この2人の決勝進出を予想するものが多いなか、2人は2回戦で敗退した。軽量級最強決定戦の決勝へ駒を進めたのは田丸とクマンドーイ・ペッティンディーアカデミー(タイ)だった。

 2021年の53キロトーナメントを1回戦敗退していた田丸だが、当時との違いは何だったのか。「あげればキリがない」ほど違うと語る。

「メンタルのだったり、練習量もそうですし、試合に臨む心構え。出したらキリがないくらい、いろんなところが違いますね。21年のときはケガもありますし、練習のメリハリだったり、心技体全てが整っていなかったなと思いますね」

 昨年10月の数島大陸との初代RISEフライ級王座決定戦での勝利が転機だった。「これをやれば間違いなくトップ、世界一になれる」。曖昧(あいまい)だったものが確信に変わった。

 その上、自身を「気負わない、プレッシャーを感じづらい」タイプと分析。フライ級ベルト戴冠後もコンディションは変わらずここまで来ていた。

「大きなケガもない。練習量や昨年10月から積み上げてきている結果がさらに自信になっている。その結果、良いメンタルができてきていますね」

 トーナメント1回戦ではペッシラー・ウォー・ウラチャー(タイ)と対戦。相手の右わき腹に膝蹴りを叩き込み1R・KO勝ち。余裕の試合内容で2回戦進出を決めた。次の相手は過去に対戦し敗れている大崎一貴だった。

 しかし、試合後に母の訃報が田丸の元に届く。

「最初に聞いたときはうそでしょ? ドッキリでしょ? みたいな感じでした。時間がたっていろいろなことをしていくうちに実感が湧いてきて、悲しくなる感じでした。逆にいまはあまり信じられないというか、実感がないです」

 広島出身の田丸は現在、東京を拠点に格闘家生活を送っている。離れて暮らしていたが、親の死へのショックは大きい。世界一をつかむために参戦したトーナメントだが一時は「棄権」の2文字も頭をよぎった。

「(気持ちの整理と)格闘技の練習を両立させるのが難しいかなと思って棄権しようと思っていました」

 背中を押してくれたのは母の親戚の言葉だった。

「母の親戚と話したときに『絶対途中でやめたらダメだよ』と言われて。その言葉に押されて亡くなったこととか考えなくなって準決勝を勝つことだけを考えられました」

 大崎との激闘の3R、判定2-0の僅差で勝利した。田丸は試合後、自身のSNSで「激戦だった。紙一重の差で勝った。 大崎選手本当に有難う御座いました!! 念願のクマンドーイ選手との決勝になったし、今回の結果で案の定みんな手のひら返ししてて嬉しいです」と振り返り「決勝は最高の試合をして必ず僕が世界一になります! 期待して下さい」とファンに世界一を約束した。

 母の死を乗り越え、因縁の相手にも勝利した今回のトーナメントはどんなものか。

「本当に格闘技人生の集大成。本当に小さいころから目指していた肩書きまで、あと一歩のところまで来ている。これまで。生きてきた人生のほとんどを格闘技に費やしているので1つの形として必ず獲りにいきたい」

 今回のトーナメントで志朗からダウンを奪って勝利。“那須川天心を苦しめた男”として知られるクマンドーイを倒すことはできるのか。田丸の人生をかけた一戦は12月16日に行われる。

※大崎一貴の「崎」の正式表記はたつさき

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