山本耕史の“表現者”としての理想像「こういう人だと限定されない自由な存在でいたい」

俳優の山本耕史とバイオリニストの古澤巖が、音楽と演劇をミックスした表現に挑戦している。山本の創造するものを古澤らベテランミュージシャンたちが具現化していくコラボレーション。これを『Dandyism Banquet(ダンディズム・バンケット)』と名付け、昨年末には全国ツアーを展開した。山本は「想像以上にすごい世界観」と手応えを感じ、第2弾のツアーを来年1月から全国で15公演を開催。山本と古澤に表現者としての理想像を聞いた。

音楽と演劇をミックスした舞台に挑戦する山本耕史【写真:舛元清香】
音楽と演劇をミックスした舞台に挑戦する山本耕史【写真:舛元清香】

演劇とミックス…バイオリニスト・古澤巖とのコラボ舞台に挑戦

 俳優の山本耕史とバイオリニストの古澤巖が、音楽と演劇をミックスした表現に挑戦している。山本の創造するものを古澤らベテランミュージシャンたちが具現化していくコラボレーション。これを『Dandyism Banquet(ダンディズム・バンケット)』と名付け、昨年末には全国ツアーを展開した。山本は「想像以上にすごい世界観」と手応えを感じ、第2弾のツアーを来年1月から全国で15公演を開催。山本と古澤に表現者としての理想像を聞いた。(インタビュー・文=福嶋剛)

――おふたりの出会いは。

山本「確か2021年でした。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の関連番組で生番組に出演して、仏像の前で演奏する人を初めて見ました(笑)。でも、間近で聴かせていただいた古澤さんの迫力の演奏に震えました」

古澤「うれしいです。実はその時点でご一緒することだけは決まっていたので、山本さんにお会いできて『これからどんなミラクルが起こるのか』と楽しみだったのを覚えています」

山本「その時点では『Dandyism Banquet』というタイトルだけ決まっていて、『何かすごい方たちとご一緒するんだ』という印象でした」

――率直にどんな世界を作ろうと思いましたか。

古澤「分かりやすく説明すると、僕たちミュージシャンが山本さんの頭の中に入って、『山本耕史旅行』を楽しみながらそこで見たもの感じたものを音にするというイメージです。音楽監督の塩谷哲(ピアノ)をはじめ、大儀見元(パーカッション)、井上陽介(ベース)、小沼ようすけ(ギター)、僕とある程度のことならすぐに対応できるミュージシャンが集まったので、山本さんのイメージを形にできたら『今まで見たことないような面白いものが作れるんじゃないか』と思いました」

山本「どんな要求にも即座に対応できるミュージシャンの方々に支えていただいたので、あとは『どんな世界を創造するか』ということに集中しました。音楽要素、演劇、パフォーマンス、何でもできるし、やりたいことが無限にあるけれど、反対に欲張りすぎないように気を付けました。ただ、前回はスケジュールの都合で準備の時間があまり取れなかったので、塩谷さんと基本的なことだけを作ってあとはステージで作り上げていった感じでした」

『Dandyism Banquet2』を2024年1月から開催する山本耕史(左)と古澤巖【写真:舛元清香】
『Dandyism Banquet2』を2024年1月から開催する山本耕史(左)と古澤巖【写真:舛元清香】

遊び心を持った大人たちがステージで繰り広げる夢のテーマパーク

――前回のステージはいかがでしたか。

山本「ぜひ、古澤さんにお聞きしたいです。どんな感想をお持ちでしたか」

古澤「去年のステージはプロトタイプ(=試作品)だと僕は思っています。『こんなことをやってみたかった』という夢を実現できて、ステージにいる僕たちとお客さんみんなで喜びを分かち合えた。もちろん、時間的な制約で詰め切れなかった部分はあったのかもしれませんが、それ以上にプロトタイプを完成させたことが何よりも大きかったと思います。それを本格的に動かすのは今回ですね」

山本「確かに『ダンディズム・バンケット』という新しいジャンルのプロトタイプが完成した訳です。全体を通して1つのストーリーではなく、まるでテレビのザッピングをしているかのように1曲ごとに別々のシーンが展開していって、それに合わせて表現もパフォーマンスも全く違うものが生まれていく。それは音楽でも芝居でも朗読劇でもコンテンポラリーでもない。本当に僕たちにしかできない例えようのない世界なので、ジャンル名が『ダンディズム・バンケット』なんです」

――そして、2回目の全国ツアーが決定しました。

山本「今回は構想を練る時間を確保してどんなものを作っていくか、ちょうどこの取材の前に塩谷さんと打合せをしました。そしたら、やってみたいアイデアがあふれてきちゃって、かなり高揚した気持ちのまま取材に臨んでいます(笑)。ただ、今回は前回とは違う形を考えていて、具体的にはライブを見てのお楽しみとさせてもらいたいのですが、古澤さんの存在感も含めて前回を超える世界観を作りたいと思います」

――同じステージに立ってみたお互いの印象はいかがでしたか。

古澤「山本さんはとても引き出しの多い方だと思いました。僕たちが知らない演技やパフォーマンスの引き出しはもちろん、ミュージシャンと同じ目線の引き出しも持っていて、その引き出しを開けた時のコミュニケーションやお人柄も素晴らしい。前回ご一緒して分かったのは『ダンディズム・バンケットという夢のテーマパークをステージで再現したいんじゃないのかな』と感じました」

山本「まさにそれです! ついこの前、家族でテーマパークに遊びに行ったんですが、いつの間にか子どもより父親の方が夢中になっていて『これって家族で一番感動しているのは僕なのかもしれない』って(笑)。きっと、子どもの頃の感動をこのステージでも形にしたいんだと分かりました。そういった大人の遊び心を持っている古澤さんやミュージシャンのみなさんとステージ上でテーマパークみたいなものを再現したいんです」

古澤「小さい頃からクラシックをやってきた僕は、毎日決まり切ったコンサートホールでの演奏が堅苦しく感じていました。そして、ある日に『将来どんな音楽家になりたい』と聞かれ、『いつの日かみんながワクワクしてくれるような音楽家になりたい』と答えていましたが、山本さんとステージに立った瞬間、『もしかしたらここかも』と思いましたよ。いつも冷静なギターの小沼くんが山本さんと一緒にやり始めてから、水を得た魚のように生き生きしているんです。ダンディズムというと外見をイメージしますが、僕は山本さんの佇まいや一つひとつの言葉、子どものように夢中になる山本さんご自身にそれを感じました」

――山本さんはダンディーな父親でありたいですか。

山本「僕はそれよりも子どもっぽさと大人っぽさをいつまでも両方持ち続けていたいです。父親ではあるけれど、その前に一人の人間でありたいし、広い心のときもあれば、めちゃくちゃケチなときもあっていいと思います。俳優でもあり、歌手でもあり、演出家でもあり、どこのセクションにも属さない『山本耕史はこういう人だ』と限定されない自由な存在でいたいというのが理想です」

□山本耕史(やまもと・こうじ)1976年10月31日、東京都生まれ。87年、10歳にして『レ・ミゼラブル』で舞台デビュー。その後、数々の舞台、映画、ドラマに出演し、2005年に『NHK紅白歌合戦』の白組司会を担当した。2022年にはNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、三浦義村を演じた。

□古澤巖(ふるさわ・いわお)1959年7月11日、東京都生まれ。3歳でバイオリンを始め、桐朋学園大在学中に日本音楽コンクール第1位。86年、バイオリニスト・葉加瀬太郎とバンド活動を開始。2017年からは、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団のメンバーとラジオのJFN系『JET STREAM』のテーマ曲を演奏。

古澤巖×山本耕史コンサートツアー「DANDYISM BANQUET2」
https://dandyismbanquet.jp/

衣装協力:アバハウス、デザインワークス、ジャスティン デイビス

笠井時夢(スタイリスト)
仁茂田汐音(アシスタント)
西岡和彦(へアメイク)

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