2年連続紅白出場 BE:FIRST『Mainstream』MVが“クール”な理由 専門家「色調統一で特異な存在感」

7人組ボーイズグループ・BE:FIRSTの4枚目のシングル『Mainstream』のYouTubeミュージックビデオ(MV)の再生回数が、間もなく3000万回に達する。9月11日の公開以来、その映像のレベルについて「本当にかっこいい」「ハイレベル」などと驚く声が多数上がっていたが、専門家は「これまでの日本の楽曲では例を見ないアイデアと予算が投じられている」と指摘している。2年連続で『NHK紅白歌合戦』出場を決めた同グループが放ったMVを分析する。

BE:FIRST『Mainstream』MVの魅力を語る映像監督の山守拓人氏【写真:山守拓人氏提供】
BE:FIRST『Mainstream』MVの魅力を語る映像監督の山守拓人氏【写真:山守拓人氏提供】

CGを駆使し非現実的なディストピアな世界を表現 “bottom”から一気に“top”へ上昇

 7人組ボーイズグループ・BE:FIRSTの4枚目のシングル『Mainstream』のYouTubeミュージックビデオ(MV)の再生回数が、間もなく3000万回に達する。9月11日の公開以来、その映像のレベルについて「本当にかっこいい」「ハイレベル」などと驚く声が多数上がっていたが、専門家は「これまでの日本の楽曲では例を見ないアイデアと予算が投じられている」と指摘している。2年連続で『NHK紅白歌合戦』出場を決めた同グループが放ったMVを分析する。(取材・文=鄭孝俊)

誰もがアッと驚く夢のタッグ…キャプテン翼とアノ人気ゲームのコラボが実現

 超高層ビルの上空を飛ぶヘリコプターの爆音と奇妙に青い風景。360度見渡せるようなスケールの大きさで、冒頭から度肝を抜かれる。メンバーのSOTAは同MV固定コメント欄でファンにこう呼びかけている。

「たくさんの想いが詰まった楽曲です。僕達のカッコいい主流を追求し、表現した楽曲です。これが主流として色んな人に認められる事で、今の日本の音楽シーンがアツいとなるところまで行きたいと本気で思っています。ダンスも確実に他にないほど本質にこだわった作品になってると思います!ただただ楽しんでください!これからの色んな場面でのMainstreamも楽しみにしててください!」

 上空から一気に地下深くの暗い空間へと場面が変わり、メンバーがパワフルなダンスを開始。エスカレーターで移動すると屋外の景色が広がり、カメラワークによって高層ビル群と高速道路が右へ左へと揺れる。さらに高速道路の上に移動したメンバーは、道路標識を背景に154人のエキストラダンサーと一緒に「東京直下」から上へ上へと昇り詰めていく。そんな決意を骨太に表現している。特別な許可を得て、地下50メートルの治水施設、地下鉄、高架下、建設中の高速道路、高さ123メートルの高層ビル屋上などでロケを行い、歌詞の一節である「From the bottom to the top」を力強く表現している。

 同MVの監督を務めた安田大地氏は『STUDIO 4°C』を経て2008年に独立。 10年に演出を手がけたアディダス(Adidas)の CMが、『Spikes Asia Advertising Festival 』のCRAFT部門を受賞した。14年に企画・監督した『THE NAIL / LEONARD WONG』がColectivo YOX(グッゲンハイム美術館主催のエキシビション)では「世界のファッションフィルム10本」に選出。さらには17年に演出を手がけた日清食品ホールディングス(NISSIN)『SAMURAI NOODLES “THE ORIGINATOR”』が『ADFEST 2017 FILM』のCRAFT部門シルバーなどを受賞するなど、国内外から高い評価を得ている。

 これまでにゆずの『HAMO』や7ORDERの『Growing up』のMVを手がけ、K-POPのMV作品にも詳しい映像監督の山守拓人氏は、今回のBE:FIRSTのMVについてこう話す。

「K-POPアーティストのMVは映像技術の面でも制作スケジュールなどに関わる予算の面でも、圧倒的なクオリティーのものが多いですが、『Mainstream』はそれらに比肩する素晴らしい出来栄えです。現実の世界を描いているようでCGも駆使し、非現実的なディストピアな世界を作り上げています。演出をした安田監督は、BE:FIRSTのメンバーや彼らをプロデュースしたSKY-HIさんの曲に対する熱い思いを聞いて、演出を凝りに凝った1本を作り上げたのでしょう」。

 山守氏が特に注目するのが「色」だ。

「彩度を落とし鮮やかな色合いは使わず、全体的に暗いブルー・寒色系を中心にまとめています。映像の色調を変える編集作業を『カラーグレーディング』と言いますが、色は映像の印象を決める重要な要素の1つです。感覚的に分かりやすいですし、人が色から受ける印象は青っぽいとクールでかっこいい感じ、落ち着く、暖色系だとあたたかく親しみやすい、カラフルだとかわいい、若そう、といったように変化します。色への印象を統一している点で『Mainstream』は特異な存在感を放ち、色に関してこだわりも感じます。しかも、ロケ地の選定は立体的で練りに練られています。カメラワークに関してもK-POPのMVによく見られるようなダンスに合わせたユニークな動きのものが多く、トランジション(カットごとの場面転換)なども工夫が凝らされていて見ていて飽きません。どのロケーションでも見どころが満載です」

 日本のMVシーンでは予算が限られ、制作スケジュールが圧迫されることも多いという。だが、このMVは違った。山守氏はそれがうれしかった。

「日本の楽曲のMVの中でもアイデアや制作スタッフの方たちの技術と努力、予算が準備されたのは間違いありません。日本からこういった世界にも挑戦するような映像が出てくることはワクワクしますし、自身も1人のクリエイターとして頑張っていきたいです」

 BE:FIRSTは開催中の全国アリーナツアーの追加公演として「BE:FIRST LIVE in DOME 2024 “Mainstream – Masterplan”」を3月2日と3日に東京ドーム、4月20日と21日に京セラドームで開催することを発表した。『Mainstream』のMVで描かれた「From the bottom to the top」の世界観がまさしく現実となったかっこうだ。

□山守拓人 神奈川県生まれ。 デジタルハリウッド東京本校CGコース卒のFilm director / Photographer 。クリエイティブチーム「蒼ao」を主催。3DCGから映像の世界へ入り、音楽活動やデザインを経由しつつ、映像ディレクターとして広告系映像、Music Video、企業VP制作など、さまざまなジャンルの映像を手がける。現在はフリーランスとして活動。シネマティックな演出、都市をモチーフにした表現が特徴。

次のページへ (2/2) 【動画】特異な存在感を放つBE:FIRST『Mainstream』の公式MV
1 2
あなたの“気になる”を教えてください