大ヒットアニメ映画『天気の子』の主人公の声などで知られる俳優の醍醐虎汰朗（23）が品川ヒロシ監督の映画『OUT』（公開中）に出演した。累計発行部数650万部を突破するヤンキー漫画が原作で、主人公と共闘する暴走族の総長役。醍醐は「中学の頃はヤンキーに憧れていた」と語る。（取材・文＝平辻哲也）

『OUT』は伝説の超不良・井口達也（倉悠貴）が少年院を出所したその後の人生を、新たな仲間たちや家族との絆を通して描く実録青春ムービー。醍醐が演じたのは暴走族「斬人（きりひと）」総長の丹沢敦司、通称あっちゃん。ベビーフェイスに長髪、大好物は棒付きキャンディというかわいらしい見た目だが、実はけんか最強という魅力的なキャラクター。

「中学の頃から愛読していた漫画の実写映画化で、興奮しました。僕は身長（167センチ）が小さいこともあって、あっちゃんの強さやかっこよさに憧れていたんですよ。これまでの役柄はいじめられっ子や平凡な子の役が多かったので、強くてかっこいいキャラクターを演じるのは初めてで、本当にワクワクしました」

『OUT』でもお気に入りのキャラクターはあっちゃん。長髪のウィッグをつけて役に臨み、けんかのシーンでは俊敏な動きが光っている。

「身長が小さいけど強いという点で、自分の憧れがそのキャラクターに投影された感じがしました。人一倍、仲間意識が近いところも似ているかもしれません。作品に対する情熱を大切にし、監督と話し合って、アクションに説得力を持たせるために努力しました。特にバック転の習得はチャレンジでしたが、運動神経が良かったことが生かされて、楽しみながら取り組みました」

　撮影は1月の寒い時期。しかし、現場は温かく、楽しい雰囲気が常に漂っていたという。品川監督の演出はどうだったのか。

「品川監督は修学旅行のように楽しんでいて、その人柄が現場の雰囲気に良い影響を与えていたと思います。コミカルなシーンにこだわりを持っていて、特にツッコミのシーンでリテイクが多かったですが、コミカルなシーンも楽しく演じることができました」

　劇中では「品川庄司」の庄司智春と共演。庄司の役はけんかをふっかけてくるチンピラ役で、あっちゃんはチンピラをボコボコに殴り、最後は足で顔を踏みつける。

「足をギリギリで止めないといけなかったのですが、監督からは、顔を踏んづけるくらいの勢いでやってほしいと言われたんです。正直、そんな絶妙なタイミングで止めるのは難しく、最初は気遣ってしまって……。最終的にはやっぱりおもいっきりやらないとダメだと思って、ちょっと踏みつけてしまって、NGを出しました。庄司さんは現場の雰囲気を盛り上げ、面白く突っ込んでくれるので、台本以上の面白さを持ち込んでくれました」

　昨年は高校野球を舞台にした『野球部に花束を』で長編映画初主演。NHK『舞いあがれ！』では朝ドラ初出演。今年は舞台『千と千尋の神隠し』のハク役、古谷実のコミックが原作の連続ドラマ初主演の『シガテラ』(TX/23)など舞台、テレビ、映画で幅広く活躍している。

「やりたいことをやらせていただいている感じはあります。すごく運がいいです。ステップアップはしているかもしれません。それでも、まだ悔しい思いもたくさんあったりします。でも、満足した瞬間がないからいいのかもしれないですね」

　主演ドラマ『シガテラ』では、いじめれっ子役を演じたが、「いじめられる役はキツイですね。個人的には『言い返せばいいのに』と思うんですけど、長いこと、いじめられっ子役をやると、やっぱり、怖くて言い返せないものだと分かりました。やりがいはありますが、いじめられ続けたくはないです」と苦笑い。最強総長・あっちゃんはお気に入りのキャラクターになったようだ。

□醍醐虎汰朗（だいご・こたろう）2000年9月1日。東京都出身。2017年に舞台「弱虫ペダル」で、舞台初出演にして初主演を果たす。19年の長編アニメーション映画『天気の子』で第14回声優アワード新人男優賞に輝いた。22年には『野球部に花束を』で映画初主演を果たし、さらに舞台「千と千尋の神隠し」（22～24）、映画『カラダ探し』（22）、NHKの連続テレビ小説「舞いあがれ！」（22～23）、連続ドラマ初主演の『シガテラ』(TX/23)などでも話題に。2023年は映画『女子大小路の名探偵』の公開や『家政婦のミタゾノ』(EX)にゲスト出演。現在、TBSよるおびドラマ「Maybe 恋が聴こえる」が放送中。