【週末は女子プロレス♯127】府川唯未が語るアルシオン復活への思い

1997年、全日本女子プロレスの大量離脱により、全女は三派に分裂した。98年1月に井上京子を中心とするネオ・レディース、同年2月には全女の企画広報部長だったロッシー小川がアルシオンを旗揚げ。あれから25年のときを経て、アルシオンが一夜限定の復活イベントを2024年1月12日に東京・新宿FACEで開催する。

取材に応じた府川唯未【写真:新井宏】
取材に応じた府川唯未【写真:新井宏】

アルシオンOG・府川唯未に聞く 来年1月12日に復活イベント

 1997年、全日本女子プロレスの大量離脱により、全女は三派に分裂した。98年1月に井上京子を中心とするネオ・レディース、同年2月には全女の企画広報部長だったロッシー小川がアルシオンを旗揚げ。あれから25年のときを経て、アルシオンが一夜限定の復活イベントを2024年1月12日に東京・新宿FACEで開催する。

 イベントの開催は、10月10日に発表された。大会の名称は「ARSION THE FINAL~卒業~」。団体が存続していれば、現在25年目。しかし、2003年6月、AtoZに吸収合併される形で、うやむやのままアルシオンの名称が使われることはなくなった。そして今回、限定復活と同時に卒業式の形で団体の幕をハッキリと閉じようというのである。

 1998年2月18日に東京・後楽園ホールで華々しく船出したアルシオン。“ハイパービジュアルファイティング”を掲げ、女子プロレス界に新風を吹き込んだ。ビジュアルを前面に打ち出したリング上の風景は、現在の女子プロレスの基礎を作ったとも言えるだろう。また、試合スタイルにも従来の女子プロに加え、格闘技のエッセンスやメキシコのルチャリブレといった海外のテイストを積極的に持ち込んだ。

 が、リング内外でなにかとお騒がせの団体であったことも事実だった。後年には毎年のようにエースが退団。やがて観客動員に苦戦し、経営が悪化。マット界における影響力を失ってしまうのである。

 そして今回、OGのひとりである府川唯未が「復活」の声を上げた。ではなぜこの時期に「復活」なのか。府川に話を聞いてみた。

「5年に一回、私個人の同窓会イベントを地元でやっていて、今年は(オッキー)沖田さんに司会をお願いしたんですよ。そのときにアルシオンをまたやりたいんだよねって話をしたら、リングアナの沖田さんも同じ考えだったみたいで、じゃあやろうよということになったんです」

府川唯未は旗揚げメンバーの一人【写真:新井宏】
府川唯未は旗揚げメンバーの一人【写真:新井宏】

2001年3月20日に頭部負傷で引退

 府川はアルシオンの旗揚げメンバーで、2001年3月20日に頭部の負傷が原因で引退した。当時はまだ団体に勢いがある時代。望まぬ形ではあったものの、きれいにリングを下りられることに感謝していたのだが…。

「私のなかではよかったときの印象が強いんですよね。でも引退後、モヤモヤした状況のまま消えていくアルシオンがすごく悲しかったんです。本来ならアルシオンライセンスナンバークラブというOGが入る会があったんです。私の引退のときに立ち上がったんですよね。だけど、団体がなくなってそれもうやむやになってしまった。引退を決めたときは生きるか死ぬかでつらい時期ではあったんですけど、結果的にアルシオンがいいときに気持ちよく引退させてもらえました。でもその後がんばってくれた選手たちがいい思いをしていないんじゃないか。え、これで終わっちゃうのっていう、不完全燃焼のところがあったんですよね」

 自分だけがいい思いをしたのでは? そんな葛藤が常に心の中にあったという。だからこそ、いつかアルシオンの名のもとに集まれる場を用意したいと考えていた。それが具体的になったのが沖田との再会であり、また、イベントに寄せられた創始者ロッシー小川からの動画メッセージだったという。

「『府川さんだからできることがある』と言ってもらえて、その言葉で背中を押してもらえました。その後すぐにみんなに連絡を取って、OGも選手たちもみんな同じ思いを抱えていたんだということがわかりました。『ありがとうございます』とみんなに言ってもらえて、これはやらなきゃなって思いましたね」

 アルシオンに関わった人たちのほとんどが同じ感情を抱いていた。24年1・12新宿は、再会の場であり、ケジメをつけるリングでもある。いまのところ、現役のAKINO、Leon、山縣優の参戦が決定。OGでは府川のほか、吉田万里子、大向美智子、玉田凛映、藤田愛、美幸涼、闘牛・空、北尾由香里、遠田由佳(MICKEY☆ゆか)、チャパリータASARI、矢樹広弓、Baby?M、ライオネス飛鳥、三田英津子の参加が決まっている(発表順。追加選手は後日発表)。当日は試合に加え、OGのトークショー、解散式が予定されており、OGでは府川と藤田がエキシビションで一夜限定の試合復帰をおこなうという。

「試合は現役とOGが混ざったエキシビションになると思います。私が選手として(本格)復帰するとか、そういったレベルの話ではないんですけど、でも出るからには失礼のないように(身体を)作っていこうと思ってます」

心のモヤモヤを語る府川唯未【写真:新井宏】
心のモヤモヤを語る府川唯未【写真:新井宏】

トレーニング開始 現役選手との対戦が濃厚

 発表された10月10日の時点からすでにトレーニングを開始しているという府川。エキシビションとはいえ現役選手との対戦が濃厚で、試合をするのは引退以来、じつに約23年ぶりとなる。頭部の負傷で選手生命を絶たれたとあって定期検診を受けており、直近の結果ではなんの問題もなかったとのこと。来年1月12日には、コスチュームでリングに上がる姿が披露できそうだ。

「引退後もプロレス関係のお仕事をさせていただいて、大会のプロデュースもやってきたりしました。でも自分が復帰するとかあり得なくて、復帰したいと思ったこともなかったんですけど、アルシオンを一日復活させるとなれば私がいないといけない。みんなが集まって復活させるなら私もがんばらなきゃいけないですよね。言い出しっぺは私ですけど、大会をプロデュースするだけじゃなく、私自身がそこにかけてきた思いをぶつけないと、完成に至らないんじゃないか、パズルのピースが埋まらないんじゃないかと思うんです」

 活動期間こそ決して長くはなかったものの、府川はアルシオンに大きな思い入れがある。全女ではアイドルレスラーとして見られることが大半。そこが悩みの種でもあったのだが、アルシオンに移籍し、サブミッションという武器を手に入れ生まれ変わった。府川のみならず、多くのレスラーがアルシオンのリングで新しい自分を発見し、輝いたのである。

「強くなりたくて、全女のときに出稽古に行きたいと言ったんですよ。でもダメだと言われて、かないませんでした。それがアルシオンでは、試合、パフォーマンスに全力を注げる環境だったんです。なので、出稽古にもたくさん行かせてもらえました。アルシオンとは、自分のやりたいスタイルを追求できる場所でもありましたね」

 府川だけではない。多くのファン、選手がアルシオンに思い入れを持っている。「最後は笑顔で解散したい」と府川。01年3・20後楽園での引退試合で見せた充実の笑顔が、24年1・12新宿に波及する。当日はアルシオンに思い入れを持つ人たちが思いを共有、ケジメをつける一日となるだろう。

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