水川あさみ、40歳を迎えた今 仕事もプライベートも充実「いい距離感を見つけられた」

コメディーからシリアスまで幅広い役をカメレオンのように演じる水川あさみ。現在放送中のNHK朝ドラ『ブギウギ』でヒロイン・鈴子の母親を好演し、話題を集めている。そんな水川が映画『唄う六人の女』(石橋義正監督)ではセリフを一切発さない、謎に満ちた女役で出演している。40歳を迎えた今、プライベートが演技に与える影響をより強く意識するようになったという。

映画『唄う六人の女』で“刺す女”を演じた水川あさみ【写真:舛元清香】
映画『唄う六人の女』で“刺す女”を演じた水川あさみ【写真:舛元清香】

『唄う六人の女』でセリフなしの役に挑戦「とてもやりがい」

 コメディーからシリアスまで幅広い役をカメレオンのように演じる水川あさみ。現在放送中のNHK朝ドラ『ブギウギ』でヒロイン・鈴子の母親を好演し、話題を集めている。そんな水川が映画『唄う六人の女』(石橋義正監督、公開中)ではセリフを一切発さない、謎に満ちた女役で出演している。40歳を迎えた今、プライベートが演技に与える影響をより強く意識するようになったという。(取材・文=中村彰洋)

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『唄う六人の女』は竹野内豊と山田孝之が主演を務め、マネキンが主人公の『オー!マイキー』(2000年/テレビ東京系)などでおなじみの石橋監督がメガホンを取ったスペンススリラー。水川は“刺す女”という役どころで今作に臨んだ。

 オファーを受けた段階から台本にはセリフが一切なかったという。「全く話さないという役は初めてでした。台本を見たときに『これはどういう風になるんだろう?』と、あまり想像がつかなかったこともやってみたいと思った決め手の1つでした」。

 朝ドラ『ブギウギ』では人情味あふれる役どころが好評だが、本作では対照的に猟奇的で謎に満ちた役だ。水川の元へのオファーはかなり早い段階で届いていたが、「すごくうれしかったです」と率直な思いを口にした。

「セリフがない役は、役者としてチャレンジしてみたいことの1つでした。私のイメージにはない役柄のオファーをいただけるということは、とてもやりがいのあることです。監督の期待に応えようという気持ちでいっぱいでした」

 今作では「六人の女」がキーワード。水川のほかにも5人の女性それぞれが奇抜な役に挑戦している。撮影時には想像できなかったものが、できあがった映画内で描かれていた。

「自分が出演していないシーンも台本を読んでいるので、知ってはいましたが、どういうふうに描かれるのかは、未知のままに撮影が終わったんです。話も設定も突飛なので、『ファンタジー要素がたくさん盛り込まれた作品になるのかな』と作品を見たら、すごく現実的で、メッセージ性があって、『骨太な作品なんだ!』と、とても驚きましたね。思っていたものとはまったく違いましたが、それがすごく良かったです。『オー!マイキー』を作った監督の作品とは思えなかったです(笑)」

主演の竹野内豊、山田孝之との共演を振り返った【写真:舛元清香】
主演の竹野内豊、山田孝之との共演を振り返った【写真:舛元清香】

“盟友”山田孝之の存在の大きさ「とても刺激をもらいます」

 今回、プライベートでも交流のある山田との共演も実現した。『全裸監督シーズン2』(2021年)にも出演はしていたものの、しっかりと共演シーンが描かれたのは、『ロング・ラブレター~漂流教室~』(02年/フジテレビ)以来、21年ぶり。「同い年で、若いときから知っている役者の1人で、今でも、一緒に仕事ができる環境下にいられることは、すごくうれしいです」と“盟友”との再会を喜んだ。

「孝之もいろんなことにチャレンジしていて、今回はプロデューサー業でも作品に参加するなど、役者とは違った角度から作品とどうやって関わっていくかを今後のテーマにしています。同世代にそういう人がいることで、とても刺激をもらいます。なので、今回、時間を経て、作品の中で関われることがすごくうれしかったです」

 もう1人の主演、竹野内とも映画『大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇』(11年)以来と久々。2度目の共演となった。

「竹野内さんは、おっとりしていて、すごく優しいんです。作品への向き合い方も、とても真摯(しんし)です。それが『大木家』のときと全く変わらないんです。そんな人も珍しいですよね。竹野内さんと接していると、優しい気持ちになります」

 一方で、水川自身は年齢を重ねることで演技との向き合い方などが徐々に変化していったという。

「竹野内さんと最初に出会ったころは20代、孝之と初めて共演したのはお互い10代のときでした。その頃に比べたら環境や心情、感覚的なところも大きく変わったなと思っています。でも、昔よりも今の方が芝居することや演じることを根本から楽しめていると思います。役との向き合い方、いい距離感を見つけられるようになってきた感じがしていますね。何かきっかけがあったわけではないのですが、年齢を重ねるとともに、この仕事に携わる年月も増えていく中で、自分自身をちゃんと見ながら、お芝居をできるようになっていった感じがするんです。今はすごくいい状態だと思います」

不惑に「役も日常もどちらも大切にしていきたい」【写真:舛元清香】
不惑に「役も日常もどちらも大切にしていきたい」【写真:舛元清香】

初監督作を経験で芽生えた思い「作品の立ち上げから関わりたい」

 7月には40歳の節目を迎えた。「大きな変化はない」と笑いながらも、「40代は、50代に向けてどのように生きていくか、どのように日常を過ごすかということが、お芝居にもより濃く反映されていくような年齢になったと感じています」と語る。

「20代は勢いだったり、気持ち的にもフレッシュだったこともあって、とにかくたくさん、役を演じることを重要視していました。30代は、自分がやりたいことが明確になっていきました。40代は、50代に向けての10年間をどのように生きていくかということが、役に投影されると思っているので、役も日常もどちらも大切にしていきたいです。今は、2つがてんびんに乗ってうまくバランスが取れている感覚がしています。もちろん、時と場合によって変わりますし、作品によっては役に飲み込まれるぐらい、役に比重が傾いてしまうこともあると思います。それでも、今は芝居をするために生きるという考え方ではなく、役も日常も大切にしていきたいです」

 2022年には、短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)」で映画監督にも初挑戦した。俳優業以外への興味は「特にない」と明かしながらも、「監督を経験させてもらったことで見えたこともありました」と新たな発見もあったようだ。

「役者は役を与えられるという形でバトンを渡されることが多いですが、そうではなく、0から作品を作りたいという人と関わりながら、仕事をしてみたいと思うようになりました。作品の立ち上げから関わるということをやってみたいですね」

□水川あさみ(みずかわ・あさみ)1983年7月24日、大阪府出身。主な出演作に、映画『喜劇 愛妻物語』(2020年)、『滑走路』(20年)、ドラマ『ミステリと言う勿れ』(22年/フジテレビ)など。22年ショートフィルム『おとこのことを』で監督業に挑戦。23年は『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)、連続テレビ小説『ブギウギ』、映画『沈黙の艦隊』などに出演、11月3日より舞台『リムジン』、24年2月23日からは舞台『骨と軽蔑』の出演を控える。

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