“サビだらけ”ロールス・ロイスを完全復活させた驚異の素人 3年がかり至難の業、62歳の執念

上司から高級外国車を譲り受けたのはいいものの、ちょっと厳しい車両状態をどうしたものか――。世界的ブランドのロールス・ロイスをほぼ自らの手でレストア復活させた“驚異の素人”がいる。1961年式のシルバークラウドIIをどうやって整備したのか。62歳男性オーナーが執念の物語を語ってくれた。

ロールス・ロイスの“執念のレストア”が堂々完了だ【写真:ENCOUNT編集部】
ロールス・ロイスの“執念のレストア”が堂々完了だ【写真:ENCOUNT編集部】

大好きなゴルフはきっぱり辞めた 「いつ出来上がるの?」の声に奮起

 上司から高級外国車を譲り受けたのはいいものの、ちょっと厳しい車両状態をどうしたものか――。世界的ブランドのロールス・ロイスをほぼ自らの手でレストア復活させた“驚異の素人”がいる。1961年式のシルバークラウドIIをどうやって整備したのか。62歳男性オーナーが執念の物語を語ってくれた。(取材・文=吉原知也)

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「僕は素人なんですけどね。3年ちょっとかかったかな。それにしても異次元でした」。男性オーナーはその難易度をこう表現した。

 V8エンジンのオーバーホールこそプロに頼んだが、ボディーの全剥離、サビ取り、板金、ネジやエクステリアのメッキ加工、内装ウッドの貼り替え、塗装をほぼ1人で手掛けたという。

 10月22日に横浜赤レンガ倉庫で行われたロールス・ロイスとベントレーのオーナーズクラブ『Rolls-Royce and Bentley Owners’ Club of Japan』主催のカーイベントで堂々のお披露目となった。

 ピッカピカの車体は圧巻オーラを放つ。ボンネットに取り付けられた自家製テーブルにはワインボトルやグラス、花束が飾られ、優美な雰囲気たっぷり。一躍、来場者の“記念撮影スポット”になった。

 レストアは最初からガチンコで取り組もうとしたわけではないという。「会社の上司から譲渡を受けたのですが、『押し付けられた』といったほうがいいかもしれません(笑)。フロントのAピラーから下の両脇は結構サビてしまって、腐っていました。それに、整備をしていて後から分かったのですが、何度かオーバーヒートした形跡があって」。エンジンを修復したら、次はボディーを、そうしたら塗装を……。どんどん意欲が高まっていった。

 不慣れなレストア作業だったが、とことんやり通した。「鉄板やアルミ素材は分厚いので、溶接はやりやすかったのですが、サビ取りがとにかく大変でした。サビとの戦いでした。それに、部品の数自体も通常の国産車の4~5倍あるんです。部品はほぼすべて外しましたよ。内装のウッドなんかはこてを使って貼って。『妥協しない』がテーマでした」。

 整備のプロの後押しを受けた。名車・希少車のコレクションを所蔵する『ワクイミュージアム』(埼玉・加須)の職人たちの指導を仰いだ。片道80キロを走らせて整備拠点に赴き、つなぎを着て作業に没頭する日々。「職人さんに効果的なアドバイスをもらいました。例えば、フロントタイヤのネジは左右で形状が違うんです。今回のオーナーズクラブのイベントでお披露目したかったので、最後は手伝っていただきました。なんとか間に合いました」。大好きなゴルフを辞めてまで、レストアに心血を注いだ。

 原動力となったのは、「意地」もある。「あちこちで『いつ出来上がるの?』と声をかけられて。その言葉に勇気をもらいましたね」。自分と同い年の愛車を完璧な状態によみがえらせ、喜びと充実感はひとしおだ。

 勤務先の役員を退任。増えた自分時間に費やしたいのが、シルバークラウドIIのさらなる整備だ。「上司のご家族は『いい人に引き取ってもらったね』とお話されているようです。でも、もっともっと深くやらないと。もうちょっとレストアしたいところがあるんです。まあ、いい暇つぶしですね。自己満足なんですよ」と笑う。

 次なる“野望”もふつふつと沸いてきた。別の貴重な旧車を手に入れたばかりだそうで、「ジャガーEタイプのシリーズ2。これをね、やりたいんですよ。まあ1年半ぐらいかかるかな」。少年のように目を輝かせた。

次のページへ (2/2) 【写真】3年がかりのレストアを終えた実際の車体
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