全日本プロレス道場に未来のアクションスターが体験入門。石川修司、安齊勇馬の指導を受けた。

　初のリングに興奮気味の吉田理佳代表率いる関西アクションアクターズのメンバー、細野峻河、古賀龍平、安永翔眞、山元友翔の4名。石川、安齊の体の大きさにまず驚き、ロープの硬さに驚き、受け身の音に驚き……驚きの連続に目を丸くしていた。

　日ごろから、体を鍛えアクションの訓練を重ねているだけに、基礎体力は十分。運動神経も良く、反応も早く俊敏。柔軟、スクワット、ブリッジ、受け身などプロレス流の準備運動も、時にうめき声をあげながらもこなしていく。休憩なしでも息も切らさない“一日入門生”に、石川も「基礎体力、凄いね。鍛えているんだ」と感心しきり。

「では、いきますか」とチョップ体験に突入。上半身、裸になって踏ん張ったメンバーに石川が逆水平チョップ。かなりソフトだったが、ミミズばれの手形がクッキリ。力士の色紙のようだった。だが、なぜか全員嬉しそうだ。

　鋼鉄のワイヤー入りのロープに体を任せながら、リングを走るロープワークも「こんなに難しいものだとは思わなかった。とにかく痛い」と顔がゆがんだ。レスラーは簡単にやっているように見えることでも「本当に大変なのだ」と身を持って実感したという。最初こそバランスを崩してけつまずいたり、転倒したりしていたが、回数を重ねるごとに上達。トップロープに身軽に駆け上り、ダイブも見事にこなしていった。

　なおも安齊とのスパーリングが始まったが、さすがに手も足も出ない。それでも気持ちを切り替え「石川への挑戦権」をかけて、メンバー同士のトーナメントが急きょ開催された。優勝者は勇んで石川に飛びかかったが、あっという間に押しつぶされてしまった。

　プロレス教室へと移行し基礎中の基礎となる「ロックアップからのヘッドロック」特訓がスタート。向かい合う基本の構え、気合の入れ方、スムーズな動き……4人は真摯に取り組んだ。初めての動きも、スポンジのようにぐんぐん吸収して行く。アクションに活かしたいという熱い情熱が伝わって来る。

　その後、メンバーからの希望でラリアート体験、ドロップキックにチャレンジしたり、2時間を超えるプロレス教室は終了した。かなりハードな内容だったが途中、脱落者は出なかった。

　4人は「楽しかった。レスラーの腕の太さ、体の大きさを体感できた。見るのとするのは大違い。技もやらせてもらい、受け身の大切さも身に染みてわかった。今後の参考になる。とても勉強になった」と声を揃えた。何より、実際に体験してみてレスラーの強さに度肝を抜かれたようだ。「マスクマンになりたい」という者もいて、プロレスの凄みを楽しみながら実感できたようだ。

　吉田代表も「大変、貴重な体験をさせていただいた。生徒たちがいつもとは違った表情を見せてくれた。とても楽しかったようです。この経験をアクションにも活かしていきたい」と手応えバッチリだった。忘れ得ぬ人生の思い出の1ページになったことだろう。

　安齊は「皆さんのボディバランスが良くてびっくり。腹筋も割れ、体も鍛え上げている」とニッコリ。自らの発奮材料になったようだ。

　石川も「全日本のジュニア軍団に加わってほしい。12月21日に入門テストがあります。受けてください。これをきっかけに、プロレスの魅力を楽しさを凄みを、周囲にも伝えてほしい」とスカウトの手を伸ばし、プロレス普及の一端となることを願っていた。

　4人の中には、すでにアクション俳優として映画に出演している者もいる。スタントマンとしても期待されているという。

　吉田代表は超人気俳優のスタントを務めたこともあり、映画やアクション界とのつながりもある。石川、安齊のレスラーとアクションスターとの二刀流も決して夢ではない。石川は心優しき巨人の役、安齊は二枚目のヒーロー役が合うだろう。

　今回、実現したアクションスターの卵たちの“一日体験入門”が、思わぬサクセスストーリーの始まりとなるかも知れない。

　この日は満月だった。帰り際、大きくまん丸の月が夜空に浮かんでいた。プロレスラーとアクション俳優。お互い、より良い形で反映できればと月に願った。